そんなに儚く見えますか?

紫南

文字の大きさ
52 / 56
本編

044 交換留学? みたいな?

しおりを挟む
双子よりもそっくりな六組の侍女達。その後ろには、同じように同じ顔を並べる従僕達がいる。

片方はカタカタと青い顔で俯きがちになって震え、もう片方は無表情。流石に怖かった。

「ウチには、びっくりするほど変装が得意なのがいてね。王家を守っているんだよ。これは、セイグラルの先代からの施策でね。良いですよね? 母上。話してしまっても」
「構わん」

更に何人か賊らしきものを引っ張って来たのは、リスティアだった。これに、レイノートが声をかける。

「リスティ? その者達は?」
「文官の子にちょっかいをかけようとしているのを見つけてね。いくつかの資料をちょろまかそうとしていたんだ。狙われていた資料もチェックしている」
「見つけてくれて助かるよ」
「レイの為になるならいくらでも」
「ああ」

嬉しそうに微笑むレイノートに、多くの者が息を呑んだ。誰が見てもリスティアに惚れていると分かる。

慣れているのは家族だけ。

「んんっ。説明を続けますね? 国境の守護は問題なく出来ますけど、内に入り込まれたり、裏切り巣食った者まで目が届きません。ですので、国の中心である王宮に、手のものを送り込むことにしました」
「それが……アレらか……本当にそっくりだ……」
「国王にその技術を認められるとは、彼らも鼻が高いでしょう」

震える者ではない化けている方の者達が完璧な所作で頭を下げた。

次にアルセルは王妃を見る。

「第二王子の出生を調べる傍らで、王妃ならばまたしでかすと思って警戒していました。その甲斐あって、不貞の証拠もしっかりと確保できましたよ」

これ、この通りとアルセルが出したのは、いくつもの手紙と指示書らしきもの。

「これは、王妃の方で受け取っていた手紙と、彼の方が受け取っていた手紙。それと、諸々の指示書です。両方とも回収しています」
「っ、うちにはどうやって……っ」

青い顔で座り込む王弟が、アルセルを見上げて問いかける。

「おや。あなたもやっていた手じゃないか」
「わ、私が……?」
「そう。ああ、正確にはあなたの所の王家だね。密偵をこの城に送り込んでいただろう?」
「っ……まさか……」
「そちらに出来ることが出来ないわけないよね?」
「っ……」
「やられたらやり返す。それがうちのモットーの一つだよ? 散々刻みつけてあげたと思ったんだけどね?」
「ひっ……っ」

セイグラル家が国境を護る中で、そうして報復が必ずやって来ることを知っているはずなのだ。

「丁度、ここに入り込んでいたのを見つけたからね。それならと、ほら、交換留学? みたいな?」
「こ、交換……っ」

後半は、ぱくぱくと口を動かすだけになっている王弟。軽い感じで言われたが、こちらに来ている間者の分、自分の国にも入り込んでいるのは確実だと知って驚愕したようだ。

更に、アルセルの笑顔が怖く感じさせているようだ。

「ついでに彼らのように変装が得意なのも何人か送ったよ。それで、現王はまともだと分かった。ちょっかいをかけて来るのは、あなたを担ぎ出そうとする古くからの忠臣? だね。頭の固いやつらばかりだ」
「あそこのジジイどもはねえ。昔っから直接顔も見せない、現場にも来ないクズさ。コソコソ、カサカサと裏工作ばかりで……まあ、前線に出てきていたらとっくに潰しているけどねっ」
「っ……」

リスティアもうんざりだと思っていたのだろう。

「あの老害に仕方なく付き合って、喧嘩を売って来る若い子達が可哀想でねえ」
「ふふふっ。母上。そこまで言ったら、言わなくてはならないではありませんか」
「ん? そうか……それだと、死んだ者として家族に見舞金が支払われているから……ダメかい?」
「っ……まさか……兵士達を……っ」

王弟の呟きを無視して、アルセルが続ける。

「まあ、良いです。そろそろ向こうも結着が付いているでしょうからね。コレを捕らえた時点で作戦は開始」
「ひっ」

コレと王弟を見下ろして指差す。

「現王との連絡も取れました。今頃は忙しくしているでしょうね。邪魔な老害を駆逐するチャンスですから」
「そうだねえ」
「あ……っ、まさか……国がっ……」
「うん。あなたが帰る場所はないよ。処刑するしかないから、要るならそっちで好きにしてくれと言われてるんだ。あ、見る?」
「っ……て、手紙……っ、兄上のっ」

手渡された手紙を読み、王弟はしばらくして力なく肩を落とした。

「さあ、王妃? これで君の後ろ盾は無くなったよ? 隣国がついていると思って強気に出ていたみたいだけど、その繋がりである王弟が切り離された今、どうなるかわかるよね?」

今度震えるのは王妃の番だった。







**********
読んでくださりありがとうございます◎



しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】留学先から戻って来た婚約者に存在を忘れられていました

山葵
恋愛
国王陛下の命により帝国に留学していた王太子に付いて行っていた婚約者のレイモンド様が帰国された。 王家主催で王太子達の帰国パーティーが執り行われる事が決まる。 レイモンド様の婚約者の私も勿論、従兄にエスコートされ出席させて頂きますわ。 3年ぶりに見るレイモンド様は、幼さもすっかり消え、美丈夫になっておりました。 将来の宰相の座も約束されており、婚約者の私も鼻高々ですわ! 「レイモンド様、お帰りなさいませ。留学中は、1度もお戻りにならず、便りも来ずで心配しておりましたのよ。元気そうで何よりで御座います」 ん?誰だっけ?みたいな顔をレイモンド様がされている? 婚約し顔を合わせでしか会っていませんけれど、まさか私を忘れているとかでは無いですよね!?

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

誰でもよいのであれば、私でなくてもよろしいですよね?

miyumeri
恋愛
「まぁ、婚約者なんてそれなりの家格と財産があればだれでもよかったんだよ。」 2か月前に婚約した彼は、そう友人たちと談笑していた。 そうですか、誰でもいいんですね。だったら、私でなくてもよいですよね? 最初、この馬鹿子息を主人公に書いていたのですが なんだか、先にこのお嬢様のお話を書いたほうが 彼の心象を表現しやすいような気がして、急遽こちらを先に 投稿いたしました。来週お馬鹿君のストーリーを投稿させていただきます。 お読みいただければ幸いです。

愛されヒロインの姉と、眼中外の妹のわたし

香月文香
恋愛
わが国の騎士団の精鋭二人が、治癒士の少女マリアンテを中心とする三角関係を作っているというのは、王宮では当然の常識だった。  治癒士、マリアンテ・リリベルは十八歳。容貌可憐な心優しい少女で、いつもにこやかな笑顔で周囲を癒す人気者。  そんな彼女を巡る男はヨシュア・カレンデュラとハル・シオニア。  二人とも騎士団の「双璧」と呼ばれる優秀な騎士で、ヨシュアは堅物、ハルは軽薄と気質は真逆だったが、女の好みは同じだった。  これは見目麗しい男女の三角関係の物語――ではなく。  そのかたわらで、誰の眼中にも入らない妹のわたしの物語だ。 ※他サイトにも投稿しています

父が後妻with義姉を連れてきた

satomi
恋愛
突然に父が後妻を連れてきました。それも義姉付きで。義姉と私は血の繋がりがあるそうです。つまり、父は長年にわたり不貞を…。 最近家を出ていった母の気持がわかります。確かに『気持ち悪い』。 私はトピア=ランスルー子爵家の次女になったようです。 ワガママ放題の義姉、アピアお義姉様を家から出したかったのでしょうか?父は私とお義姉様を王立学園の淑女学科に入学させました。全寮制なので、家からお義姉様はいなくなりました。 ともあれ、家での傍若無人な人間関係とはオサラバ! 私の楽しい学園生活はここからです!

婚約者が妹と婚約したいと言い出しましたが、わたしに妹はいないのですが?

柚木ゆず
恋愛
婚約者であるアスユト子爵家の嫡男マティウス様が、わたしとの関係を解消して妹のルナと婚約をしたいと言い出しました。 わたしには、妹なんていないのに。  

【完】ある日、俺様公爵令息からの婚約破棄を受け入れたら、私にだけ冷たかった皇太子殿下が激甘に!?  今更復縁要請&好きだと言ってももう遅い!

黒塔真実
恋愛
【2月18日(夕方から)〜なろうに転載する間(「なろう版」一部違い有り)5話以降をいったん公開中止にします。転載完了後、また再公開いたします】伯爵令嬢エリスは憂鬱な日々を過ごしていた。いつも「婚約破棄」を盾に自分の言うことを聞かせようとする婚約者の俺様公爵令息。その親友のなぜか彼女にだけ異様に冷たい態度の皇太子殿下。二人の男性の存在に悩まされていたのだ。 そうして帝立学院で最終学年を迎え、卒業&結婚を意識してきた秋のある日。エリスはとうとう我慢の限界を迎え、婚約者に反抗。勢いで婚約破棄を受け入れてしまう。すると、皇太子殿下が言葉だけでは駄目だと正式な手続きを進めだす。そして無事に婚約破棄が成立したあと、急に手の平返ししてエリスに接近してきて……。※完結後に感想欄を解放しました。※

平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?

和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」  腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。  マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。  婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?    

処理中です...