229 / 468
第五章 秘伝と天使と悪魔
229 頼みがあったようです
しおりを挟む
この地の土地神は、穏やかな美しい青年姿の神だった。見た目の年齢は、高耶と同じくらいだろう。
《水神に聞いてね。いつ出会えるかと、楽しみにしていたんだ》
そこで高耶も気付く。あの水神の川は、この土地に続いていたのだ。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません」
《いいよ。気にしないで。私は比較的若い方だしね。君が加護を受けている神々からすれば、ひよっこだ。だから、こちらから挨拶するのも間違ってないよ》
「……ありがとうございます」
《うん》
本当に気にするなということらしい。
確かに、水神をはじめとして、清雅の家に関係のある山神も、瑤迦さえ、この土地神よりも上だろう。神の世界では力よりも年功序列が重んじられているというのもある。
この土地神は、先代と交代して間もないらしく、本当に若い神なのだ。とはいえ、その交代も二百年ほどは前だ。ここを、橘家が管理するようになってからだという。
《聞いてた通り、今時の子にしては、礼儀正しいよね。わざわざ、お邪魔しますって、挨拶しようとしてくれるんだもの》
「そうすべきだと思っていますので……」
《うんうん。そういうところ、大好きだよっ》
なんだか、この土地神。蓮次郎と通じるものがあるような気がしてならない。
《そうそう。君に会いたかったのはねえ、お願いもあったからなんだ》
「お力になれることならば、構いません」
《そう!? なら、あそこの山のところなんだけど、昔、呪具が仕掛けられていてねえ、処分してくれたのは良かったんだけど、影響が残っちゃって》
指を差す先には、滝が見えた。それは、周りに木々がないからだ。丸裸のような感じで、痛々しい。
《ここから滝が見えるのも良いんだけどねえ。やっぱり気持ち悪くて》
そこだけ、どうしても力が行き渡らないらしい。不快さが取れないのだという。
《水神も、あそこだけは嫌みたいでね。もし、用事でここに君が来たら、頼んでみてくれと言われてたんだ》
「……なるほど……」
水神の川にも繋がる滝らしい。わざわざ呼びつけるのは気が引けるから、もしも来たらとして話をしていたようだ。
「分かりました。では、式を喚ばせていただきます」
《うん。君のならいくらでも許すよ。それが何であってもね》
ついでに、天使や悪魔も構わないとの許可をもらった。
「ありがとうございます。【果泉】、【常盤】」
《ここに》
《は~い》
常盤は人化して丁寧に胸に手を当てて頭を下げ、果泉は元気いっぱいに右手を挙げて返事をする。
そんな果泉は、すぐにタタタと高耶に駆け寄ると、抱っこというように両手を上げた。それを自然に抱き上げ、滝の場所を見せる。
「果泉。あそこ、分かるか? 土地神様が、あそこを治して欲しいそうだ。できるか?」
《できるよ! 神さまのお兄ちゃん、気もちわるい?》
《なんて可愛いっ。うん。ちょっと気持ち悪いねえ》
《なら、お手てかして~》
《ん? 手かい?》
差し出された小さな果泉の手に、土地神は片手を近付ける。その手をむぎゅっと掴んだ果泉は、少しだけ力を注いだようだ。
《はい! げんきちゅうにゅ~う♪》
《んん!?》
《これでだいじょうぶ! いまから、あそこもげんきにしてくるね!》
《なにこれ!? 力が強くなったよ!?》
神も驚く。以前聞いた瑤迦の話からすると、植物に栄養剤を与えるような効果があるらしい。『果泉ねえ、ドリンクなの!』と本人も言っていたので、間違いではないだろう。
「常盤、果泉を連れて行ってやってくれ」
《承知しました》
常盤は、大きな光り輝く鳳の姿になり、果泉を乗せるべく体勢を低くする。
《トキワお兄ちゃん、まぶしいねえ》
《……これくらいならどうです》
《うん。これくらいなら、お目めいたくならないっ》
《乗れるか?》
《だいじょうだよ! はやくいこ!》
《しっかり掴まるように》
《キレイなハネがぬけちゃうよ?》
《問題ない》
《う~、わかった。あるじさま、いってきます!》
《行って参ります》
「ああ。頼んだ」
すぐに終わるだろう。任せることにする。
飛び立った常盤と果泉を見送ると、そこでようやくレスター達が目に入った。高耶の目には、土地神しか映っていなかったのだ。気にしていなかったともいう。
「あ……」
そう。案の定というか、神に耐性のないほとんどの人々が、気絶していたのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
仕事の関係で、別作品も含めて分量が少なくなる可能性があります。
よろしくお願いします。
《水神に聞いてね。いつ出会えるかと、楽しみにしていたんだ》
そこで高耶も気付く。あの水神の川は、この土地に続いていたのだ。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません」
《いいよ。気にしないで。私は比較的若い方だしね。君が加護を受けている神々からすれば、ひよっこだ。だから、こちらから挨拶するのも間違ってないよ》
「……ありがとうございます」
《うん》
本当に気にするなということらしい。
確かに、水神をはじめとして、清雅の家に関係のある山神も、瑤迦さえ、この土地神よりも上だろう。神の世界では力よりも年功序列が重んじられているというのもある。
この土地神は、先代と交代して間もないらしく、本当に若い神なのだ。とはいえ、その交代も二百年ほどは前だ。ここを、橘家が管理するようになってからだという。
《聞いてた通り、今時の子にしては、礼儀正しいよね。わざわざ、お邪魔しますって、挨拶しようとしてくれるんだもの》
「そうすべきだと思っていますので……」
《うんうん。そういうところ、大好きだよっ》
なんだか、この土地神。蓮次郎と通じるものがあるような気がしてならない。
《そうそう。君に会いたかったのはねえ、お願いもあったからなんだ》
「お力になれることならば、構いません」
《そう!? なら、あそこの山のところなんだけど、昔、呪具が仕掛けられていてねえ、処分してくれたのは良かったんだけど、影響が残っちゃって》
指を差す先には、滝が見えた。それは、周りに木々がないからだ。丸裸のような感じで、痛々しい。
《ここから滝が見えるのも良いんだけどねえ。やっぱり気持ち悪くて》
そこだけ、どうしても力が行き渡らないらしい。不快さが取れないのだという。
《水神も、あそこだけは嫌みたいでね。もし、用事でここに君が来たら、頼んでみてくれと言われてたんだ》
「……なるほど……」
水神の川にも繋がる滝らしい。わざわざ呼びつけるのは気が引けるから、もしも来たらとして話をしていたようだ。
「分かりました。では、式を喚ばせていただきます」
《うん。君のならいくらでも許すよ。それが何であってもね》
ついでに、天使や悪魔も構わないとの許可をもらった。
「ありがとうございます。【果泉】、【常盤】」
《ここに》
《は~い》
常盤は人化して丁寧に胸に手を当てて頭を下げ、果泉は元気いっぱいに右手を挙げて返事をする。
そんな果泉は、すぐにタタタと高耶に駆け寄ると、抱っこというように両手を上げた。それを自然に抱き上げ、滝の場所を見せる。
「果泉。あそこ、分かるか? 土地神様が、あそこを治して欲しいそうだ。できるか?」
《できるよ! 神さまのお兄ちゃん、気もちわるい?》
《なんて可愛いっ。うん。ちょっと気持ち悪いねえ》
《なら、お手てかして~》
《ん? 手かい?》
差し出された小さな果泉の手に、土地神は片手を近付ける。その手をむぎゅっと掴んだ果泉は、少しだけ力を注いだようだ。
《はい! げんきちゅうにゅ~う♪》
《んん!?》
《これでだいじょうぶ! いまから、あそこもげんきにしてくるね!》
《なにこれ!? 力が強くなったよ!?》
神も驚く。以前聞いた瑤迦の話からすると、植物に栄養剤を与えるような効果があるらしい。『果泉ねえ、ドリンクなの!』と本人も言っていたので、間違いではないだろう。
「常盤、果泉を連れて行ってやってくれ」
《承知しました》
常盤は、大きな光り輝く鳳の姿になり、果泉を乗せるべく体勢を低くする。
《トキワお兄ちゃん、まぶしいねえ》
《……これくらいならどうです》
《うん。これくらいなら、お目めいたくならないっ》
《乗れるか?》
《だいじょうだよ! はやくいこ!》
《しっかり掴まるように》
《キレイなハネがぬけちゃうよ?》
《問題ない》
《う~、わかった。あるじさま、いってきます!》
《行って参ります》
「ああ。頼んだ」
すぐに終わるだろう。任せることにする。
飛び立った常盤と果泉を見送ると、そこでようやくレスター達が目に入った。高耶の目には、土地神しか映っていなかったのだ。気にしていなかったともいう。
「あ……」
そう。案の定というか、神に耐性のないほとんどの人々が、気絶していたのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
仕事の関係で、別作品も含めて分量が少なくなる可能性があります。
よろしくお願いします。
242
あなたにおすすめの小説
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
精霊に愛された錬金術師、チートすぎてもはや無敵!?
あーもんど
ファンタジー
精霊の愛し子で、帝国唯一の錬金術師である公爵令嬢プリシラ。
彼女は今日もマイペースに、精霊達と楽しくモノ作りに励む。
ときどき、悪人を断罪したり人々を救ったりしながら。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆三人称視点で本格的に書くのは初めてなので、温かい目で見守っていただけますと幸いです◆
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~
千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。
敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。
結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。
だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。
「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」
謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。
少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。
これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。
【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる