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ミッション8 王都進出と娯楽品
292 ズブズブな予感
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「う~ん……まあ、これも勉強ってやつになるのか?」
「うん?」
フィルズがそれ以上は何も言わなかったため、ラスタリュートもついて来ることになった。
同行者はあの場に居た測量班全員とリュブランとマグナも経験しておくべきかということで、同行している。ファリマスは今にも一匹で突っ込んで行きそうなフウマを子猫の大きさにさせて、しっかり抱いていた。
「フィル、ここでいいのかい?」
《なう~?》
昔はそれなりの商家か何かがあったのだろう。朽ちかけたように見える大きな屋敷が、建物が密集した中に突然現れる。
「うん。で、ここ、俺が買った土地でもあるんだよ」
「おや。そこに住んでるのが居るってことかい」
「そういうこと。王都の商業ギルド長、立ち退きとかもさせずに売るだけで終わってやがったんだよ。しばらくしたら、ちゃんとするかな~と思って放置してたんだけど、未だにこの状態なんだよな~」
呆れたもんだと両手を広げて見せるフィルズ。
売り物としての体裁を整えるのが当然のはずだが、あのギルド長としては、『売ってやった。後は知らん。好きにしろ』というスタンスらしい。
「それって良いの? これが普通なのかしら?」
「普通じゃねえよ。売る土地は、きっちり管理して人が入り込まないように対策したり、せめて引き渡しの数日前には入り込んでる奴が居ないか確認するはずなんだがな……」
「……え? それ、王都の商業ギルドがヤバいってことかしら?」
「ヤバかったぜ? まあ、どんだけ腐ってるかは、明日にでも監査が入るから、そこでしか分からんけどな」
「……それ、本当に王都の……よね?」
「おう。もうね。腐った貴族ともズブズブな予感」
「……逃げないかしら?」
小悪党は、自分が関係した所が騒ぐことになれば、姿を隠すものだ。
「小モノだからな~。けど大丈夫だろ。こいつらが失敗するとは思ってない。ぐっすり健やかにおやすみ中らしい」
「……きっと、慣れてんのね……最低……」
ラスタリュートもさすがに呆れ疲れたらしく、最後の方は、ものすごく低い声が出ていた。
「そんじゃあ……っ」
《なうっ!》
「あっ、これっ」
フウマが待ってましたとばかりに、ファリマスの腕から飛び降り、姿を成体に変えた。そのまま建物に向かって行こうとする所を、フィルズは慌てて取り縋って留める。
「待て待てっ、このままやったら、ご近所迷惑だろっ」
《ウナァ?》
フィルズはフウマに抱きつきながら、イヤフィスで指示を出す。
「よし、防音の結界を張れ」
すると、フェンリル三兄妹の末っ子、ハナの結界を彷彿とされるものが屋敷を覆った。その結界には色が付いており、薄い黄色の膜だった。
リュブランとマグナには見慣れたものだ。だが、その色は初めて見る。
「防音?」
「いつものとは色は違いますね」
神々が顕現しても良いように、神気を抑えるための屋敷に張られている結界は、ハナの張る結界と同じ薄い桃色。しかし、屋敷の壁の際にきちんと大きさを計算して張られているため、外から見ても分からないようになっている。
「すげえ頑張ったんだぜ? ちょっと鉱山で使いたくてさ」
「ああ。ホルトーロ鉱山?」
元男爵領にある鉱山のことだ。
「そうそう。なんか、ゴーレムがたまに出てくるとか噂あるし、鉱山って結構音響くから、対策したくて」
「へえ~」
「まあ、その話はまた今度な。逃げられないように遮蔽の結界も後で張るから、そろそろ行くぜ」
「「うん!」」
「ああ」
《ナウッ》
「「「「「はい!」」」」」
「証拠品とかは隠密ウサギが回収するから、好きに暴れてくれ。ただし、なるべく人も全員回収できるようにする。殺すなよ」
「「「「「はい!!」」」」」
測量部隊の者達も、そこはしっかりと肝に銘じている。それをした場合、セイスフィア商会から追い出されるかもしれないのだから必死だ。
こうして、周りに騒がれることなく、裏の仕事をする者達の根城に入り込み、排除行動に移った。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「うん?」
フィルズがそれ以上は何も言わなかったため、ラスタリュートもついて来ることになった。
同行者はあの場に居た測量班全員とリュブランとマグナも経験しておくべきかということで、同行している。ファリマスは今にも一匹で突っ込んで行きそうなフウマを子猫の大きさにさせて、しっかり抱いていた。
「フィル、ここでいいのかい?」
《なう~?》
昔はそれなりの商家か何かがあったのだろう。朽ちかけたように見える大きな屋敷が、建物が密集した中に突然現れる。
「うん。で、ここ、俺が買った土地でもあるんだよ」
「おや。そこに住んでるのが居るってことかい」
「そういうこと。王都の商業ギルド長、立ち退きとかもさせずに売るだけで終わってやがったんだよ。しばらくしたら、ちゃんとするかな~と思って放置してたんだけど、未だにこの状態なんだよな~」
呆れたもんだと両手を広げて見せるフィルズ。
売り物としての体裁を整えるのが当然のはずだが、あのギルド長としては、『売ってやった。後は知らん。好きにしろ』というスタンスらしい。
「それって良いの? これが普通なのかしら?」
「普通じゃねえよ。売る土地は、きっちり管理して人が入り込まないように対策したり、せめて引き渡しの数日前には入り込んでる奴が居ないか確認するはずなんだがな……」
「……え? それ、王都の商業ギルドがヤバいってことかしら?」
「ヤバかったぜ? まあ、どんだけ腐ってるかは、明日にでも監査が入るから、そこでしか分からんけどな」
「……それ、本当に王都の……よね?」
「おう。もうね。腐った貴族ともズブズブな予感」
「……逃げないかしら?」
小悪党は、自分が関係した所が騒ぐことになれば、姿を隠すものだ。
「小モノだからな~。けど大丈夫だろ。こいつらが失敗するとは思ってない。ぐっすり健やかにおやすみ中らしい」
「……きっと、慣れてんのね……最低……」
ラスタリュートもさすがに呆れ疲れたらしく、最後の方は、ものすごく低い声が出ていた。
「そんじゃあ……っ」
《なうっ!》
「あっ、これっ」
フウマが待ってましたとばかりに、ファリマスの腕から飛び降り、姿を成体に変えた。そのまま建物に向かって行こうとする所を、フィルズは慌てて取り縋って留める。
「待て待てっ、このままやったら、ご近所迷惑だろっ」
《ウナァ?》
フィルズはフウマに抱きつきながら、イヤフィスで指示を出す。
「よし、防音の結界を張れ」
すると、フェンリル三兄妹の末っ子、ハナの結界を彷彿とされるものが屋敷を覆った。その結界には色が付いており、薄い黄色の膜だった。
リュブランとマグナには見慣れたものだ。だが、その色は初めて見る。
「防音?」
「いつものとは色は違いますね」
神々が顕現しても良いように、神気を抑えるための屋敷に張られている結界は、ハナの張る結界と同じ薄い桃色。しかし、屋敷の壁の際にきちんと大きさを計算して張られているため、外から見ても分からないようになっている。
「すげえ頑張ったんだぜ? ちょっと鉱山で使いたくてさ」
「ああ。ホルトーロ鉱山?」
元男爵領にある鉱山のことだ。
「そうそう。なんか、ゴーレムがたまに出てくるとか噂あるし、鉱山って結構音響くから、対策したくて」
「へえ~」
「まあ、その話はまた今度な。逃げられないように遮蔽の結界も後で張るから、そろそろ行くぜ」
「「うん!」」
「ああ」
《ナウッ》
「「「「「はい!」」」」」
「証拠品とかは隠密ウサギが回収するから、好きに暴れてくれ。ただし、なるべく人も全員回収できるようにする。殺すなよ」
「「「「「はい!!」」」」」
測量部隊の者達も、そこはしっかりと肝に銘じている。それをした場合、セイスフィア商会から追い出されるかもしれないのだから必死だ。
こうして、周りに騒がれることなく、裏の仕事をする者達の根城に入り込み、排除行動に移った。
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