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第六章 新教会のお披露目

201 報告はどうしますか?

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二つの教会の聖堂を聖域にし、受け入れの為の部屋も用意すると、コウヤはサーナによって連れられてきたレナルカを背負ってニールと共に城へ向かっていた。

他の面々はどうしたのかというと。アルキスは先にミラルファを回収して戻って行き、パックンとテンキはベニと共にセイ達の所へ戻り、この後の対策のために動くことになった。

主に教会の方に足りない物資などを揃える必要があるのだ。これはおそらく、パックンが大活躍することだろう。ベニ達も、上手いこと周りの民家から集めたりするので、心配はない。

それらが整い次第、ベニも王城へ来ることになるが、現状の報告などは、先にコウヤが済ませるということになった。

「教会が、あのようなことになっていたとは……驚きました」

ニールは、コウヤのまとめた書類を書き写していたことで、否応なく全てを知れてしまった。

教会は本来、神に祈りを捧げ、様々な誓いを立てることのできる神聖な場所である。神に認められているからこそ、神官達は治癒魔法を使え、命の危機から救うことができる。頼るべき場所であり、それが許される場所のはずだった。

「治癒魔法の効果さえ落ちているとは……頼ってきた者達を騙し、その上に恩を着せて利用するなど、神は御許しになるのでしょうか」
「許されないから、ベニ、大司教が動いたんですよ」

ただし、ベニもこうして王都に教会を建てるということにならなければ、放っておくつもりだっただろう。そうしていても、いずれは治癒魔法を使える者が居なくなったはずだ。

コウヤを通して地上の様子をはっきりと見えるようになったエリスリリアならば、加護を取り上げることはできなくとも、弱めることは出来るし、これ以上誰にも与えないという選択肢が出てくるだろう。

この世界の人には厳しい現実かもしれない。だが、上手くそれらが機能していない以上、今もそう変わらないのだ。それならば、この選択もありだろうと考えを改め始めていた。しかし、ベニ達によって、その選択は回避される。

因みに、テンキが動けるようになった今、その能力により、治癒魔法を使えなくすることもできる。その気になればひと月ほどで大陸中の神教国の教会所属神官達の治癒魔法を封じることも可能だ。

ベニにボコボコにされた司教達には既に使えなくしたようで、効かず、使えずという彼らにとっては最悪の状態になった。先程、別れる時にもテンキはこう呟いていた。


『無能が無能になれば反省くらいするでしょうか』


今頃は、教会内に残されていた神官全員の治癒魔法を封じているだろう。テンキはこういった者へ容赦はしない。

「きっとそのままでも教会が建って一週間もすれば人々が気付いたでしょうね。どちらが教会と呼ぶのに相応しいのかってことに」
「ですが、市井には教会の悪いイメージがあります。それでも?」
「ユースールでそれは証明されましたから」

コウヤの育ての親が司教だということで、多くの者は警戒しなかったかもしれないが、それを知られる前から、ベニ達は住民達と上手くやっていた。今回は屋台部隊や、ドラム組の存在があるのだ。きっと、前よりもずっと早く受け入れられるだろう。

「ますますユースールへ行きたくなりました。屋台というのも見てみたいですし、明日にでもまず、そちらを見せていただきます」
「ふふ。ドラム組の作業音も、是非聞きに来てください」
「作業音を聞く……というのが不思議ですが、是非行かせていただきます」

実に呑気な様子で、コウヤとニールは城に到着した。

出迎えた騎士に案内され、今回は以前とは違い、会議室に通される。そこには、アビリス王、アルキス、ジルファス、宰相のベルナディオ、それにミラルファが待っていた。

「よく来てくれたコウヤ。そちらにかけてくれ」
「失礼します」
「コウヤさん。レナルカちゃんは預かるわっ」
「あ、はい。お願いします」

相変わらず、中々お世話ができない。このためにミラルファが控えていたようだ。部屋の隅にベビーベッドも用意されていた。大変用意が良い。

気を取り直し、コウヤはアビリス王へ確認する。

「報告はどうしますか?」

どちらがするかとニールへ視線を投げれば、アビリス王と宰相頷いた。これを受けて、ニールが立ったまま頭を下げる。彼はコウヤの座る椅子の横に立っていた。

「わたくしからご報告させていただきます」

報告はニールが始めた。

「治癒魔法を受けた者のほとんどが治療代を払えず、冒険者であった者は用心棒として使われておりました。他には、家財を没収された者や自らの体を捧げた者もおります」

地下にあった実験場のようなものの報告もあり、だんだんと王達の表情は険しくなっていく。

「中に、奴隷として他国へ売られた者もありました。それと、先日捕らえられた貴族との取り引き書もあり、そちらに引き取られている者もあるようです。こちらはこの後、それぞれ調べに入るべきかと」
「うむ……手配を頼む」

まだアレらには余罪があるのかと、頭を抱えていた。全てを聞き終えると、溜めていたらしい息を重々しくゆっくりと吐き出したアビリス王は、申し訳なさそうにコウヤの方へ目を向けた。

「このようなことになっているとは……気付かなかったこちらの落ち度だ。手を煩わせたようですまない」
「いえ。ただベニ大司教と、あちらの教会にご挨拶に伺っただけです。それに、こちらこそ助けを求めてきた神官達を無断で城に避難させてしまいましたので、勝手をして申し訳ありません」

こうなってしまったのは、あくまでもついでだし、結果的にであって、やろうと思ったわけではないはずだ。きっと。

ベニには少しはそのつもりがあったかもしれないと思ったのは気付かなかったことにした。

「構わない。守護妖精が認めたならば害はないのだろう。その神官達は……」
「こちらで引き取ります。これから人手はあって困りませんから」

そして、また魔改造されるのだろう。優秀な人が増えて何よりだ。

「その、コウヤ殿……アルキス様から、王都内の孤児達を保護すると聞いたのですが……可能なのですか?」

宰相も、孤児が居ることには気付いてるし、どうにかせねばとは思っていたのだろう。だが、片手間で考えられるほど時間も取れなかった。宰相は、アビリス王が動けなくなっていた時も、何とか国を回そうと必死だったのだから。

「ばばさま達、大司教達がやると言ったのですし、できます。ただ、孤児の中には、今更助けなど必要ないと突っぱねる者もいるでしょう。実際に、ユースールでもそうでしたから」

手を差し伸べた兵達に反発していた子ども達。中には折れた子もいたが、最後までその手を取らない子はいた。

「確かにあるでしょう。ユースールではどうされましたか?」
「兵の見習いにしたり、冒険者になりたい子は、現役を引退した冒険者の方に後見をお願いしました。今では、まだ成人前とはいえ、立派に兵や冒険者の一員となっています」

ニコリと笑って告げるコウヤに、一同は驚愕した。そんなことが起こり得るのかと。

「本当にそのようなことが? あ、失礼。想像もしていませんでしたので」
「もちろん、説得するのに時間はかかっています。毎日のように兵や冒険者が声を掛け、きちんと存在を認めているのだと伝えました。そうすると、ポツポツと話しをするようになって、将来どうしたいのかを聞いて、兵か冒険者を選んでもらいました」
「だが、中にはどちらも嫌だと言う者もあるだろう」

今度はアビリス王だ。前向きに検討しようという意思が窺えた。

「身分証は必要ですから、冒険者にはなってもらって、簡単な仕事を割り振りました。商人になりたいという子にはそちら方面の手伝い。料理人になりたいという子にはそちらへ。そうすると、何が自分に足りないのかが分かります。それで諦めないようなら、全力でサポートしました」
「その子達は……」
「今はきちんと見習いとして認められて、元気に働いていますよ」
「なるほど……」

何度か頷いて考えをまとめる様子の王達。だが、そこでジルファスが気が付いた。

「これは、冒険者ギルドとの連携が必須なのでは?」
「「「……」」」

早速壁にぶち当たったらしい。

地方のやり方をそのまま王都でというのは難しいものだ。そこは頑張ってもらいたい。

「おやおや。楽しそうなことになっとるねえ。邪魔するよ」

ここに、何の気負いもなくやって来たベニの声が響いたのだ。

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三日空きます。
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