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mission 17
187 口にしないことも大事
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寿子が、暗黒竜を煽りながら、こちらへと誘導してくる。
「質の悪い煽り運転にしか見えんな」
フラフラっとスピードを落として目の前に出てみたり、隣を並走してみたりと、しっかりと煽っているのが見てとれた。
「……あの……声が聞こえるんだけど……」
「うん……聞こえるよね……寿子さんの……声……」
「あんな風に笑うんだ……」
「……魔女と同じ……」
「あー、寿子のやつ……ヤベェ奴みたいじゃねえか……」
「「「「うん……」」」」
空から、遠くから響いてくる笑い声。
あはははハハハっ!
宗徳でも、あんな狂ったような笑い声は聞いたことがなかった。
「これは相当、楽しんでるな……」
「ここに来るの……忘れてませんかねえ……」
「……その内思い出すだろ……」
「「「「……ですかね~……」」」」
たまにキャハハという笑い方もしている。完全に我を忘れていそうだ。
「とりあえず、笑い声が聞こえなくなるまで待つか……瑠偉達は、もう少し離れた……あの木の木陰ででも座って休憩しててくれ」
「いや、でも……」
瑠偉達が、木を警戒する様子を感じて、宗徳は笑って続けた。
「あっ、トレントじゃねえから大丈夫だぜ?」
散々、トレントを見た後だ。反射的に警戒するのも分かった。瑠偉達は、自分たちが何を警戒しているかも分からなかったようだ。そうかと納得しながら答えた。
「なら……」
「うん……あの様子だと、まだ少しかかりそうだし……」
「完全に追いかけっこだよな……」
「……楽しそう……」
暗黒竜は、かなり速かった。適度に力を抜いた寿子の速さに迫るほどだ。それが寿子には嬉しかったのだろう。
「まさか、魔女さんらと追いかけっこするわけにもいかんからな」
「….…相手が……欲しかった?」
瑠偉が首を傾げて見せる。
「ああ。そうだろうな。本来の姿になった徨流も結構な速さを出せるが、地球では無理だし、白欐と黒欐達とも飛んでたが、娘や息子みたいなもんだから、競争するっていう考えにはならんらしい」
「大人気ないものねえ」
「だろ? だから嬉しいんだろ。倒して、心を折っても良い相手。それも、そこそこの速度が出せる相手みたいだしな」
「ん~、ならまあ、満足するまで飛んでもらえれば」
「うん。あの笑い声はちょっと怖いけど……」
そうして、瑠偉達は休憩に入った。
それから三十分後。
「あなた~ぁっ。そろそろ行きますよ~っ」
そんな呑気で元気な寿子の声が響き、宗徳の真上まで来ると、寿子は急上昇して、高さを充分に取ってから、暗黒竜に上から急降下しながらぶつかる。
どうやら、ある程度弾力を作った風の大きな楯をぶつけたようだ。暗黒竜は背骨を逆にしならせながら、地面に叩きつけられた。
ドォォォォン!!
土煙りが上がる。
「「「「すごい……」」」」
「いやいや、寿子! 危ねえだろうが!」
「怪我なんてしませんよ。それより、目を回している間に刻んで、ちゃっちゃと解体してしまってください。お夕飯の時間に間に合わなくなるわっ」
「……お前が遊んで……っ、なんでもないっ!」
例えそれが正しい指摘でも、すべきではない時がある事を、宗徳は知っている。
絡まれる前に解体に移った。もちろん、しっかり仕留めておいた。地面にめり込んだ暗黒竜は、完全に目を回していたのだ。
散々煽り運転に合って、思いっきりぶつかられた先がこれだ。少しばかり気の毒ではあった。
こうして見事、宗徳達は、仕事を完遂したのだった。夕食時のこの日の土産話を聞いた律紀や廉哉も、賢く口を噤んだのは正解だった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「質の悪い煽り運転にしか見えんな」
フラフラっとスピードを落として目の前に出てみたり、隣を並走してみたりと、しっかりと煽っているのが見てとれた。
「……あの……声が聞こえるんだけど……」
「うん……聞こえるよね……寿子さんの……声……」
「あんな風に笑うんだ……」
「……魔女と同じ……」
「あー、寿子のやつ……ヤベェ奴みたいじゃねえか……」
「「「「うん……」」」」
空から、遠くから響いてくる笑い声。
あはははハハハっ!
宗徳でも、あんな狂ったような笑い声は聞いたことがなかった。
「これは相当、楽しんでるな……」
「ここに来るの……忘れてませんかねえ……」
「……その内思い出すだろ……」
「「「「……ですかね~……」」」」
たまにキャハハという笑い方もしている。完全に我を忘れていそうだ。
「とりあえず、笑い声が聞こえなくなるまで待つか……瑠偉達は、もう少し離れた……あの木の木陰ででも座って休憩しててくれ」
「いや、でも……」
瑠偉達が、木を警戒する様子を感じて、宗徳は笑って続けた。
「あっ、トレントじゃねえから大丈夫だぜ?」
散々、トレントを見た後だ。反射的に警戒するのも分かった。瑠偉達は、自分たちが何を警戒しているかも分からなかったようだ。そうかと納得しながら答えた。
「なら……」
「うん……あの様子だと、まだ少しかかりそうだし……」
「完全に追いかけっこだよな……」
「……楽しそう……」
暗黒竜は、かなり速かった。適度に力を抜いた寿子の速さに迫るほどだ。それが寿子には嬉しかったのだろう。
「まさか、魔女さんらと追いかけっこするわけにもいかんからな」
「….…相手が……欲しかった?」
瑠偉が首を傾げて見せる。
「ああ。そうだろうな。本来の姿になった徨流も結構な速さを出せるが、地球では無理だし、白欐と黒欐達とも飛んでたが、娘や息子みたいなもんだから、競争するっていう考えにはならんらしい」
「大人気ないものねえ」
「だろ? だから嬉しいんだろ。倒して、心を折っても良い相手。それも、そこそこの速度が出せる相手みたいだしな」
「ん~、ならまあ、満足するまで飛んでもらえれば」
「うん。あの笑い声はちょっと怖いけど……」
そうして、瑠偉達は休憩に入った。
それから三十分後。
「あなた~ぁっ。そろそろ行きますよ~っ」
そんな呑気で元気な寿子の声が響き、宗徳の真上まで来ると、寿子は急上昇して、高さを充分に取ってから、暗黒竜に上から急降下しながらぶつかる。
どうやら、ある程度弾力を作った風の大きな楯をぶつけたようだ。暗黒竜は背骨を逆にしならせながら、地面に叩きつけられた。
ドォォォォン!!
土煙りが上がる。
「「「「すごい……」」」」
「いやいや、寿子! 危ねえだろうが!」
「怪我なんてしませんよ。それより、目を回している間に刻んで、ちゃっちゃと解体してしまってください。お夕飯の時間に間に合わなくなるわっ」
「……お前が遊んで……っ、なんでもないっ!」
例えそれが正しい指摘でも、すべきではない時がある事を、宗徳は知っている。
絡まれる前に解体に移った。もちろん、しっかり仕留めておいた。地面にめり込んだ暗黒竜は、完全に目を回していたのだ。
散々煽り運転に合って、思いっきりぶつかられた先がこれだ。少しばかり気の毒ではあった。
こうして見事、宗徳達は、仕事を完遂したのだった。夕食時のこの日の土産話を聞いた律紀や廉哉も、賢く口を噤んだのは正解だった。
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