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1章
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精霊とこの世界は強い結びつきを持っている。
魔法がこの国に存在しているのは、精霊がそのマナと呼ばれるものを介して人間に力を貸しているためと言われている。
マナは空気中に漂っているいわゆる魔法のもととなるもの。魔法を使うときは空気中のマナを自分の体内にある魔力を複合させて魔法を生み出すことができる。
この世界の生物は大半は魔力をその身に宿しているとは言われているものの、魔力の量は千差万別である。
そしてそれを行使して魔法を使うことができる者も様々。風を起こして髪を乾かしたり、水を沸騰させてお湯にしたりするいわゆる生活魔法だけ使えるものもいれば、魔力量が多ければ火炎放射や強力な水鉄砲を使う攻撃魔法を使えることができたりする者もいる。
反対に魔力を使って魔法を生み出す程魔力量がない者もいる。我が家でいうシリルはそうだし、ハンナは生活魔法が少し使えるくらい。
攻撃魔法を使うことができるのは主に貴族が多い。それは昔貴族が魔力保有量が多い者同士で結婚をしたからと言われている。
貴族は民を守る義務がある。
もし領内に高位の魔物が現れたら率先して兵を出して戦わなければならないため、攻撃魔法を使うことが出来る。そしてその攻撃魔法を使うためには精霊と契約をしなければならない。生活魔法などの魔法は精霊と契約する必要はないのだけれど、攻撃魔法などの多大な魔力を使う魔法は精霊と契約する必要がある。
精霊と契約してその精霊は契約者の「守護精霊」となる。
守護精霊は契約者の魔力と引き換えにマナを効率よく与えて攻撃魔法を使うことができるのだ。
精霊と契約する精霊召喚の儀は十二歳の年に行う。それは十三歳になる年に学園に入学するため。
一番上のティアお姉様は二年前に精霊召喚の儀を行ったのだけれど、その守護精霊に私は……
「なぜか嫌われてるんだよね……」
思わず心の声がため息と共に出てくる。
「お嬢様……」
ハンナが気遣わしげにお茶をそっと目の前に出してくれる。ハンナの繊細な生活魔法は紅茶を美味しく淹れるのに一役買っている。
ハンナの入れてくれた紅茶を飲むと少しだけ心が軽くなった気がした。
「低位の精霊が見えるということは魔力の保有量は多い方ということだし、ひょっとしたら人間と同じように精霊にも相性があるのではないかな?」
隣に座っていたエヴァンお兄様が肩を抱いて慰めてくれる。
「相性……」
「そう、だからアリアが精霊召喚を行う時はきっとアリアのことが大好きな精霊がきてくれるよ」
うう、お兄様が優しすぎて涙が出そう。
あれは二年前のことだった。ティアお姉様の精霊召喚の儀に家族総出で立ち会っているときだった。
ティアお姉様は見事精霊召喚を成功させて、緑魔法が得意な精霊と契約して守護精霊を私達の前に紹介した。
順番に自己紹介をして最後は私の番になったときだった。
『ひゃあああ、この子嫌い!』
そう言って目の前から姿を消してしまったのだ。慌ててティアお姉様が呼び出すも姿を表すことを拒否され、その場は混乱に陥った。
しばらくして私のいないところだったら姿を見せてくれたのだが、私がいるところには出てきてくれなくなってしまったのだ。
私はというとショックでその場を茫然自失で佇んでいたらしく、その後の記憶が曖昧だ。必死に家族やハンナが慰めてくれたのは記憶にある。
特にティアお姉様の慌てようはすごいものだった。
何度も私のいないところで守護精霊のミルと対話を試みたらしいが、精霊というものは気分屋なもので、家族で大切な妹であるから仲良くしてほしいと説いてもそのような人間側の事情はお構いなしで「嫌なものは嫌!」と言われたとか……。
もともとなぜか自分は精霊には好かれないと薄々は感じていた。
両親の守護精霊は時折姿を見かけるも、私の顔を見てそれはすごく嫌そうな顔をする。
契約者以外には上級精霊以外は意思の疎通はあまりできない。それは本来精霊は人見知りで警戒心が強いから。
だけど契約者の家族がいても素知らぬ顔をするのが普通なのだが、私の姿を見ると毎回すごく嫌そうな顔をして姿を消す。
直接危害を加えられたわけではないからなんとも言えないのだが、幼い頃からそのような感じなので気にしないようにしていても、はっきりと目の前で嫌いと言われるのは結構応えた。
私はやっぱり精霊に嫌われているんだ……。
そう自覚してからしばらく塞ぎ込んでいたのだけど、そうこうしているうちにティアお姉様が学園に入学して寮暮らしのため、家を出たのだ。
それをきっかけにお姉様の守護精霊と顔を合わさなくなってだんだん持ち直してきたのだけれど……。
ホッとしたのも束の間、お姉様はもともと私が大好きなので頻繁に帰ってくるようになったのだ。
その度にお姉様はお姉様の契約精霊と私の仲を持とうとしたのだが結果は残敗。毎回そっぽを向かれるのが辛いとお姉様に直談判して最近は無理に仲良くさせようとはせず、大人しくなった。
ティアお姉様のことは好きだし、会えるのは嬉しいのだけど精霊のことがあってからは特にスキンシップが激しくなった。
お姉様の気遣いだってことは私もわかってはいるんだけど毎回一緒に寝ようとするのはどうかと思う。
ほんの少しだけ憂鬱な気持ちをクッキーを食べて誤魔化しているとエヴァンお兄様が私の頭をそっと撫でた。
「僕の精霊にはあんな態度は取らせないからね」
と黒い笑みを浮かべていて、「う、うん……」と思わず苦笑いで返したのだった。
魔法がこの国に存在しているのは、精霊がそのマナと呼ばれるものを介して人間に力を貸しているためと言われている。
マナは空気中に漂っているいわゆる魔法のもととなるもの。魔法を使うときは空気中のマナを自分の体内にある魔力を複合させて魔法を生み出すことができる。
この世界の生物は大半は魔力をその身に宿しているとは言われているものの、魔力の量は千差万別である。
そしてそれを行使して魔法を使うことができる者も様々。風を起こして髪を乾かしたり、水を沸騰させてお湯にしたりするいわゆる生活魔法だけ使えるものもいれば、魔力量が多ければ火炎放射や強力な水鉄砲を使う攻撃魔法を使えることができたりする者もいる。
反対に魔力を使って魔法を生み出す程魔力量がない者もいる。我が家でいうシリルはそうだし、ハンナは生活魔法が少し使えるくらい。
攻撃魔法を使うことができるのは主に貴族が多い。それは昔貴族が魔力保有量が多い者同士で結婚をしたからと言われている。
貴族は民を守る義務がある。
もし領内に高位の魔物が現れたら率先して兵を出して戦わなければならないため、攻撃魔法を使うことが出来る。そしてその攻撃魔法を使うためには精霊と契約をしなければならない。生活魔法などの魔法は精霊と契約する必要はないのだけれど、攻撃魔法などの多大な魔力を使う魔法は精霊と契約する必要がある。
精霊と契約してその精霊は契約者の「守護精霊」となる。
守護精霊は契約者の魔力と引き換えにマナを効率よく与えて攻撃魔法を使うことができるのだ。
精霊と契約する精霊召喚の儀は十二歳の年に行う。それは十三歳になる年に学園に入学するため。
一番上のティアお姉様は二年前に精霊召喚の儀を行ったのだけれど、その守護精霊に私は……
「なぜか嫌われてるんだよね……」
思わず心の声がため息と共に出てくる。
「お嬢様……」
ハンナが気遣わしげにお茶をそっと目の前に出してくれる。ハンナの繊細な生活魔法は紅茶を美味しく淹れるのに一役買っている。
ハンナの入れてくれた紅茶を飲むと少しだけ心が軽くなった気がした。
「低位の精霊が見えるということは魔力の保有量は多い方ということだし、ひょっとしたら人間と同じように精霊にも相性があるのではないかな?」
隣に座っていたエヴァンお兄様が肩を抱いて慰めてくれる。
「相性……」
「そう、だからアリアが精霊召喚を行う時はきっとアリアのことが大好きな精霊がきてくれるよ」
うう、お兄様が優しすぎて涙が出そう。
あれは二年前のことだった。ティアお姉様の精霊召喚の儀に家族総出で立ち会っているときだった。
ティアお姉様は見事精霊召喚を成功させて、緑魔法が得意な精霊と契約して守護精霊を私達の前に紹介した。
順番に自己紹介をして最後は私の番になったときだった。
『ひゃあああ、この子嫌い!』
そう言って目の前から姿を消してしまったのだ。慌ててティアお姉様が呼び出すも姿を表すことを拒否され、その場は混乱に陥った。
しばらくして私のいないところだったら姿を見せてくれたのだが、私がいるところには出てきてくれなくなってしまったのだ。
私はというとショックでその場を茫然自失で佇んでいたらしく、その後の記憶が曖昧だ。必死に家族やハンナが慰めてくれたのは記憶にある。
特にティアお姉様の慌てようはすごいものだった。
何度も私のいないところで守護精霊のミルと対話を試みたらしいが、精霊というものは気分屋なもので、家族で大切な妹であるから仲良くしてほしいと説いてもそのような人間側の事情はお構いなしで「嫌なものは嫌!」と言われたとか……。
もともとなぜか自分は精霊には好かれないと薄々は感じていた。
両親の守護精霊は時折姿を見かけるも、私の顔を見てそれはすごく嫌そうな顔をする。
契約者以外には上級精霊以外は意思の疎通はあまりできない。それは本来精霊は人見知りで警戒心が強いから。
だけど契約者の家族がいても素知らぬ顔をするのが普通なのだが、私の姿を見ると毎回すごく嫌そうな顔をして姿を消す。
直接危害を加えられたわけではないからなんとも言えないのだが、幼い頃からそのような感じなので気にしないようにしていても、はっきりと目の前で嫌いと言われるのは結構応えた。
私はやっぱり精霊に嫌われているんだ……。
そう自覚してからしばらく塞ぎ込んでいたのだけど、そうこうしているうちにティアお姉様が学園に入学して寮暮らしのため、家を出たのだ。
それをきっかけにお姉様の守護精霊と顔を合わさなくなってだんだん持ち直してきたのだけれど……。
ホッとしたのも束の間、お姉様はもともと私が大好きなので頻繁に帰ってくるようになったのだ。
その度にお姉様はお姉様の契約精霊と私の仲を持とうとしたのだが結果は残敗。毎回そっぽを向かれるのが辛いとお姉様に直談判して最近は無理に仲良くさせようとはせず、大人しくなった。
ティアお姉様のことは好きだし、会えるのは嬉しいのだけど精霊のことがあってからは特にスキンシップが激しくなった。
お姉様の気遣いだってことは私もわかってはいるんだけど毎回一緒に寝ようとするのはどうかと思う。
ほんの少しだけ憂鬱な気持ちをクッキーを食べて誤魔化しているとエヴァンお兄様が私の頭をそっと撫でた。
「僕の精霊にはあんな態度は取らせないからね」
と黒い笑みを浮かべていて、「う、うん……」と思わず苦笑いで返したのだった。
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