精霊に嫌われている転生令嬢の奮闘記

あまみ

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1章

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 「しかし、護衛はいかがいたしましょう? 腕ききの護衛となると冒険者ギルドに依頼という形になりますが、黒精霊を相手に依頼を出すとなるとまず受けてはもらえないでしょう」

 セバスがお父様に尋ねる。お父様はそれを聞いて「ううむ、護衛は必須だしな……戦力でリクとハンナがいても道中女と少女二人組と精霊だけとなるとトラブルに巻き込まれかねんし」と唸り出す。

 「それならば私に考えがあります」

 それまで発言のなかったメリダが前に出た。

 「私の末の息子レイに依頼しましょう」

 メリダの末の息子さん? セバスとマーサの下に歳の離れた息子がいるって言ってたけど……。

 「レイか、久しくその名を聞いていなかったな」
 
 お父様が意外な名前が出たと驚いているとセバスは「なりません!」と慌てたように言った。いつも落ち着いたダンディーなセバスの初めて見る姿に驚いているとセバスはお父様に続けて話す。

 「彼奴は冒険者といえど、護衛には最も不向きです! 自分の仕事よりも興味を優先するようなやつです!」
 「です。黒精霊を相手にした依頼などあの子だったら受けるでしょう」
 「母上!」

 セバスが珍しく「母上」って呼んでる……というか一体どんな人物なんだろう……。

 お兄様の方を見るとお兄様も私の顔見て首を傾げていた。するとシリルがはっきりと言った。

 「でも、腕は確かです。魔物に遭遇したとしても、人間相手でも強い」
 「なんと! 冒険者になったとは聞いていたがそんなにか!」

 お父様がシリルの言葉を聞いて驚いたように言った。

 「はい、今はA級の冒険者です」

 メリダが告げるとお父様が「A級だと! 素晴らしいではないか」と感嘆の声をあげると、メリダは少し嬉しそうに微笑んだ。

 「夫は騎士団に入団しても親の贔屓目なしに団長クラスに上がることができるだろうと申しておりました。本人は冒険者の方が性に合っていると申しておりますが」

 すごい人なんだ……と思わず呑気に感心しているもセバスは以前納得していないようだった。

 「しかし……まずあいつが受けるか……」
 「あの子は私に借りがありますので断ることはないでしょう」
 「では正式に依頼しよう。詳細は後ほど打ち合わせしよう」

 お父様のその言葉を最後に解散となった。とりあえずお父様から許可を得られたことにホッとする。

 ハンナと部屋に戻ってからふうとソファに腰掛けた。
 緊張感から解放されてそばにあったクッションを抱えて背もたれにより掛かった。それを見たハンナがクスリと笑う。私は先程から思っていたことをハンナに言った。

 「ハンナ、ごめんなさい。いくら私のメイドだからってお父様がまさかハンナを護衛の数に入れていると思わなかったわ」
 「そんな! 私は旦那様が命じなくてもお嬢様に着いていくつもりでしたよ」
 「でも……」
 「気になさらないでください。それに、お嬢様は知らないと思いますが私はそこそこ戦えます」
 「そうなの?」
 「祖父に稽古をつけてもらっていましたし、母にも仕込まれているのでそこいらのごろつきは締め上げられるくらいの腕は持っています」
 
 意外な事実に驚いた。マーサに仕込まれている?ごろつきを締め上げられる腕を持っている?初めて聞くことばかりで驚いているとハンナは私に「それに」と笑った。
 
 「お嬢様のお付きのメイドであるからにはハンナはずっとおそばにおります」
 「ハンナ……」
  
 思わず目頭が熱くなり、涙を堪えながら「ありがとう」と言うのが私には精一杯だった。二人で笑い合っていると部屋にノックの音が響き渡った。
 
 「ごめん、ちょっといいかな」

 エヴァンお兄様がシリルと一緒に部屋を訪れた。二人を部屋に招き入れて一緒にお茶を飲みながら談笑することになった。
 話の途中で先程あったメリダの話になった。

 「エヴァンお兄様はメリダの末の息子さんとは会ったことはある?」
 「うーん……会ったことはあるかもしれないけど、正直覚えていないなあ……会ったことあったかな?」

 そう言って後ろのシリルに尋ねるとシリルは「あー」と何かを思い出しながら言いづらそうに

 「だいぶ前に会ったと思いますよ、多分」
 
 と言葉を濁した。ハンナを見るとハンナは不思議そうな表情だった。

 「ハンナはどんな人か知っている?」
 「実は、会ったことがないのです。幼いときに会ったかもしれませんが私はすぐにこのお屋敷に入って母の下で働いていたので」
 「シリルは?」
 「俺は、まあ……祖父に剣術の稽古をつけてもらっているときに何度か」

 そんなことを話しながら歩いていると先ほどから思っていたことを言った。
 
 「そういえば、そのレイって方はどんな方なの?」

 シリルに尋ねると「あー……、そうですね剣術の腕は一流だし、魔力もそこそこあるんで精霊と契約しても問題ないくらいなんですけど精霊と契約することに興味がないので剣一本で戦ってる人、ですかね」

 そんな人もいるんだ……この世界、精霊と契約できるほどの魔力の持ち主なら当たり前に精霊と契約を結ぶと勝手に思い込んでいた。自分の視野の狭さに気づいて少し恥ずかしくなっていると「あと……」と続けた。

 「そーとーな変わり者ですかね」

 その言葉にエヴァンお兄様とハンナが同時に眉を顰めた。

 


 
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