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2章
2−26
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次の日森へ行くレイ様を見送った私達は、教会孤児院の方へ向かった。少し町への探索も兼ねて昨日とは違う道を通っていたときだった。
このあいだ見かけた探し物をしていた男の子が何やら急いだ様子で狭い路地裏から出てきたのだ。
目が合ったように思えたが、男の子は帽子を深く被り直して足早に去って行った。そのとき落としていったのか、何やらほのかに光る石が地面に転がっていた。不思議に思って拾い上げてよく観察する。
「魔石ですね」
横からハンナが私の手元の石を覗き込んで言った。黒っぽい石にわずかだがほんのりと魔力を感じられる。
魔石とは魔道具の核に一般的に活用される魔物を倒したときにでる石だ。
「魔道具の核に使うものよね?」
そうたずねるとハンナは石を見つめながら首を傾げた。
「そうですが、この石は魔道具には使えないクズ石となっている物です」
「クズ石?」
ハンナの話によると、クズ石とは魔道具の核にはもう使うことのできない、いわゆる魔力切れの状態の魔石のことを指すという。
前世でいう電池切れの乾電池のような物かと理解した。
「もうこの魔石は使うことができないの?」
手に取った魔石からほのかに魔力が感じられるあたり全くの空ではなさそうだ。
ハンナは首を横に振った。
「昔にクズ石となった魔石に魔力を注入してみて再利用できないか考えた人がいたようですけど、元々魔物が落とすものなので人間の魔力と反発し合ってどうやってもできなかったそうです。今ではその状態になった魔石は完全に破棄するか、武器屋で微々たる値段ですが買い取ってもらえるそうです」
「武器屋?」
「私も昔シリルから聞いた話なのですが、クズ石を潰して武器の材料に活用できるようです。まあ、ほとんどがこうして捨てられているのでしょうけど」
そう言ってハンナが少年が出てきた路地裏を指差した。路地裏を覗き込むと、ちょうど飲食店の真裏らしく生ゴミなどのゴミ箱の横にクズ石が同じような形の一回りほど小さなゴミ箱の辺りに散乱している状態だった。
どうやら魔道具のコンロやオーブンなどの調理器具などに使ったクズ石となった魔石が破棄されている場所のようだった。
知らないことだらけで思わず「へえ」と手に取ったクズ石に視線を戻してまじまじと眺めた。
「先程の少年、おそらくポケットにクズ石をたくさん詰め込んでいたようでした。ポケットからクズ石が見えていましたから」
リクが少年が駆け出していった方向を見つめながら呟いた。
「リクはこの石についてどう思う? 何かに活用できると思う?」
「クズ石自体は中に入っている魔力を空にできれば、先程ハンナが言ったように魔力を注入することができれば活用できるのではないかと思います。ただ、空にするのは難しいです」
「完全に魔石を空っぽにすることはできないの?」
「魔道具で使うにしてもどうしてもわずかに魔力は残ってしまいますので難しいですね」
少し考えてからリクに聞いてみた。
「じゃあ、石に残っている魔力を吸い取って空にするのは?」
そうたずねた途端、リクからわずかに風が吹いてきた。
「いけません、そんなことをしたら体内の自分の魔力が汚染されてしまいます」
静かにいつもより低い声で話すリクに思わず私とハンナはたじろいだ。それを見てリクはハッとしていつもの様子に戻って、静かに話し出した。
「昔に魔石から魔力を得ようとした人間がいて、魔石から魔力を吸い取ることはできたのです。ですが一時的なもので……。元々魔石は魔物の落としたものなので人間の魔力とは相反するものです。知らぬ間に体内でだんだん魔力が汚染されてしまって……」
そのままリクは黙りこくってしまった。その続きは言わなくても想像通りだろう。なんとなく重たい空気になってしまったのを振り払うかのようにハンナが声を上げた。
「では、あの少年はなんに使うのでしょうね」
確かに疑問に思ったが、捨ててあるとはいえ勝手に持ち去るのはよくないことだ。このまま立ち去るのもと思い、お節介とは思ったが捨ててある飲食店の店員に持ち去る人物がいたことを報告すると驚いた様子ででお礼を言われた。なんでも捨ててしまうものだから別に問題はないけどまさかクズ石を持っていく人物がいたとは思わなかったらしい。防犯のため一応今度から鍵をかけるそうだ。ちなみになんとなくだが、先程の男の子については言わなかった。
なににあのクズ石を使うのだろうか………今度あったらあの子に話しかけてみよう。
そう思いながら私は教会孤児院へ歩き出した。
このあいだ見かけた探し物をしていた男の子が何やら急いだ様子で狭い路地裏から出てきたのだ。
目が合ったように思えたが、男の子は帽子を深く被り直して足早に去って行った。そのとき落としていったのか、何やらほのかに光る石が地面に転がっていた。不思議に思って拾い上げてよく観察する。
「魔石ですね」
横からハンナが私の手元の石を覗き込んで言った。黒っぽい石にわずかだがほんのりと魔力を感じられる。
魔石とは魔道具の核に一般的に活用される魔物を倒したときにでる石だ。
「魔道具の核に使うものよね?」
そうたずねるとハンナは石を見つめながら首を傾げた。
「そうですが、この石は魔道具には使えないクズ石となっている物です」
「クズ石?」
ハンナの話によると、クズ石とは魔道具の核にはもう使うことのできない、いわゆる魔力切れの状態の魔石のことを指すという。
前世でいう電池切れの乾電池のような物かと理解した。
「もうこの魔石は使うことができないの?」
手に取った魔石からほのかに魔力が感じられるあたり全くの空ではなさそうだ。
ハンナは首を横に振った。
「昔にクズ石となった魔石に魔力を注入してみて再利用できないか考えた人がいたようですけど、元々魔物が落とすものなので人間の魔力と反発し合ってどうやってもできなかったそうです。今ではその状態になった魔石は完全に破棄するか、武器屋で微々たる値段ですが買い取ってもらえるそうです」
「武器屋?」
「私も昔シリルから聞いた話なのですが、クズ石を潰して武器の材料に活用できるようです。まあ、ほとんどがこうして捨てられているのでしょうけど」
そう言ってハンナが少年が出てきた路地裏を指差した。路地裏を覗き込むと、ちょうど飲食店の真裏らしく生ゴミなどのゴミ箱の横にクズ石が同じような形の一回りほど小さなゴミ箱の辺りに散乱している状態だった。
どうやら魔道具のコンロやオーブンなどの調理器具などに使ったクズ石となった魔石が破棄されている場所のようだった。
知らないことだらけで思わず「へえ」と手に取ったクズ石に視線を戻してまじまじと眺めた。
「先程の少年、おそらくポケットにクズ石をたくさん詰め込んでいたようでした。ポケットからクズ石が見えていましたから」
リクが少年が駆け出していった方向を見つめながら呟いた。
「リクはこの石についてどう思う? 何かに活用できると思う?」
「クズ石自体は中に入っている魔力を空にできれば、先程ハンナが言ったように魔力を注入することができれば活用できるのではないかと思います。ただ、空にするのは難しいです」
「完全に魔石を空っぽにすることはできないの?」
「魔道具で使うにしてもどうしてもわずかに魔力は残ってしまいますので難しいですね」
少し考えてからリクに聞いてみた。
「じゃあ、石に残っている魔力を吸い取って空にするのは?」
そうたずねた途端、リクからわずかに風が吹いてきた。
「いけません、そんなことをしたら体内の自分の魔力が汚染されてしまいます」
静かにいつもより低い声で話すリクに思わず私とハンナはたじろいだ。それを見てリクはハッとしていつもの様子に戻って、静かに話し出した。
「昔に魔石から魔力を得ようとした人間がいて、魔石から魔力を吸い取ることはできたのです。ですが一時的なもので……。元々魔石は魔物の落としたものなので人間の魔力とは相反するものです。知らぬ間に体内でだんだん魔力が汚染されてしまって……」
そのままリクは黙りこくってしまった。その続きは言わなくても想像通りだろう。なんとなく重たい空気になってしまったのを振り払うかのようにハンナが声を上げた。
「では、あの少年はなんに使うのでしょうね」
確かに疑問に思ったが、捨ててあるとはいえ勝手に持ち去るのはよくないことだ。このまま立ち去るのもと思い、お節介とは思ったが捨ててある飲食店の店員に持ち去る人物がいたことを報告すると驚いた様子ででお礼を言われた。なんでも捨ててしまうものだから別に問題はないけどまさかクズ石を持っていく人物がいたとは思わなかったらしい。防犯のため一応今度から鍵をかけるそうだ。ちなみになんとなくだが、先程の男の子については言わなかった。
なににあのクズ石を使うのだろうか………今度あったらあの子に話しかけてみよう。
そう思いながら私は教会孤児院へ歩き出した。
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