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2章
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レイ様に先程あったことを話せざるを得なくなり私は訳あって二人が身を隠していることを話した。
「ふーん、やっぱりいなくなった子たちは精霊の力を借りて森に潜伏していたんだね」
「やっぱりって……レイ様は森にいるとわかっていたのですか?」
そうたずねるとレイ様はこちらを見てにっこりと笑った。
「まあね、前にも言ったようにところどころ不自然な人の形跡はあったし。じゃあ、団長さんに言っておく?」
「そのことなんですが……」
先程のカイとの会話を思い起こしながらレイ様に「もう少し待ってほしい」と告げる。
この事件を起こした二人に対してまだ聞きたいことがあるし町長やマリウス神父にも注意しておきたいので、慎重に進めたい事を伝える。
確証がないのに報告したとして、ローランドさんが焦ってマリウス神父の元へ行きかねない。
「確かに団長さんは今も少し余裕はなさそうだしね~それにその神父について気になることがあるんだよね?」
「はい、森へ隠れている二人の状態から早めには調べたいと思っています」
「いきなり俺が教会孤児院に現れても不審に思われるかもしれないから行くことはできないけど、こっちでも教会孤児院について調べてみるよ」
森への捜索も、いつ二人が助けを求めるかわからないので今日あったことはローランドさん達には伏せてレイ様は続行することとなった。
その後、ローランドさん達と合流した私たちは姿を消したことに対してリクが危なくないように私を守って身を隠していたということにした。三人とも精霊の力ならと納得したようだった。
唯一キリクさんが怪訝そうに「レイ殿の精霊と聞いていたが、探し回らずともレイ殿が呼べば契約者の元へ来るのではないのか」と言われ、思わず心臓が跳ねた。すかさずレイ様がいつものようにのんびりとした口調で「忘れてた~それにいつも一人で戦うからさ~」と言うとキリクさんは渋々納得した様子だった。
午前中捜索を終えた私たちはそのまま町に戻ってローランドさん達と別れ、ハンナと合流した。今日も屋台で昼食を摂ることになり、リクと屋台を物色する。屋台を物色しながら歩いていると先程のカイの様子が浮かぶ。
「ねえ、リク。早く二人をどうにかしないと身体の状態が心配だわ」
カイが空腹で顔色が悪かった事を思い出す。栄養状態も良くないし、いつまでも森で寝泊まりをするわけにもいかない。何より体調を崩しかねない。
「それにいつまでも精霊の作ったあの狭間にいることは人間にはよくありません。本来、あそこは精霊が一時的に身を隠す場所であって人間がいるような場所ではありません。長期的に過ごすには身体に影響がでかねません。それをあのリリュという精霊はわかってはいるとは思いますが……」
リクがため息をついた。カイにサンドイッチをヨシュアの分も渡したが、男の子二人では足りないだろう。どうにか食べるものを届けてあげられたらと考えるが大人を信用していないであろう二人にレイ様に届けてもらうのは無理そうだ。
今日少しの間私とリクがいなくなって捜索が中断されたことで、ローランドさんからは同行はこれきりにしてくれと先程言われてしまったのだ。とりあえず、早くこの事件を解決させるにはカイに頼まれた祭壇に隠されたものを取り出してキヨラの領主に届けるしかなさそうだ。
「そういえば、あの精霊はなんの魔法が使えるの?」
「幻覚魔法が少々使えるようでした」
幻覚魔法で噂を広めたのだろうか……。疑問に思うことはあるもののリクは少し不機嫌そうだ。話を変えるようにリクに先程話したマリウス神父のことをどう思うか聞いてみる。リクは少し考えた後口を開いた。
「マリウス神父は、精霊召喚を行うほど魔力量がなかったと以前言っていましたがそれは違うのではないかと思います」
「どうして?」
「精霊召喚の儀を行えるほどの十分な魔力量があるように見受けられました」
聞けばリクもグレース様と同じく魔力量がどれくらいあるのかわかるらしい。精霊全員が魔力量がわかるわけではないらしいがその辺はリクに濁されてしまった。
「じゃあ、マリウス神父は嘘をついたってこと? なんのために?」
首を傾げるとリクは髭をピクピクと動かした。
「考えられるのは、本当に精霊召喚を行わなかった、それか精霊召喚の儀に失敗したのを隠しているかですかね」
──精霊召喚の儀の失敗。
その言葉を聞いて胸がズシンと重くなる。精霊召喚の儀に失敗することは昔の一部の貴族は不名誉なことと言われることもあり、家を追い出されるというのが多かったらしい。今は儀式に失敗しても騎士団や文官になる貴族が増えたため昔ほどはなくなったらしいが、今でも完全にはなくなってはいない。
お父様もお母様も私を家から出すということはしないとは思うが精霊召喚の儀のことを考えると正直気が重い。
魔力の訓練の際に見せたマリウス神父の表情を思い出す。笑っているようで笑っていない、まるで人形のような笑みだった──。
「ふーん、やっぱりいなくなった子たちは精霊の力を借りて森に潜伏していたんだね」
「やっぱりって……レイ様は森にいるとわかっていたのですか?」
そうたずねるとレイ様はこちらを見てにっこりと笑った。
「まあね、前にも言ったようにところどころ不自然な人の形跡はあったし。じゃあ、団長さんに言っておく?」
「そのことなんですが……」
先程のカイとの会話を思い起こしながらレイ様に「もう少し待ってほしい」と告げる。
この事件を起こした二人に対してまだ聞きたいことがあるし町長やマリウス神父にも注意しておきたいので、慎重に進めたい事を伝える。
確証がないのに報告したとして、ローランドさんが焦ってマリウス神父の元へ行きかねない。
「確かに団長さんは今も少し余裕はなさそうだしね~それにその神父について気になることがあるんだよね?」
「はい、森へ隠れている二人の状態から早めには調べたいと思っています」
「いきなり俺が教会孤児院に現れても不審に思われるかもしれないから行くことはできないけど、こっちでも教会孤児院について調べてみるよ」
森への捜索も、いつ二人が助けを求めるかわからないので今日あったことはローランドさん達には伏せてレイ様は続行することとなった。
その後、ローランドさん達と合流した私たちは姿を消したことに対してリクが危なくないように私を守って身を隠していたということにした。三人とも精霊の力ならと納得したようだった。
唯一キリクさんが怪訝そうに「レイ殿の精霊と聞いていたが、探し回らずともレイ殿が呼べば契約者の元へ来るのではないのか」と言われ、思わず心臓が跳ねた。すかさずレイ様がいつものようにのんびりとした口調で「忘れてた~それにいつも一人で戦うからさ~」と言うとキリクさんは渋々納得した様子だった。
午前中捜索を終えた私たちはそのまま町に戻ってローランドさん達と別れ、ハンナと合流した。今日も屋台で昼食を摂ることになり、リクと屋台を物色する。屋台を物色しながら歩いていると先程のカイの様子が浮かぶ。
「ねえ、リク。早く二人をどうにかしないと身体の状態が心配だわ」
カイが空腹で顔色が悪かった事を思い出す。栄養状態も良くないし、いつまでも森で寝泊まりをするわけにもいかない。何より体調を崩しかねない。
「それにいつまでも精霊の作ったあの狭間にいることは人間にはよくありません。本来、あそこは精霊が一時的に身を隠す場所であって人間がいるような場所ではありません。長期的に過ごすには身体に影響がでかねません。それをあのリリュという精霊はわかってはいるとは思いますが……」
リクがため息をついた。カイにサンドイッチをヨシュアの分も渡したが、男の子二人では足りないだろう。どうにか食べるものを届けてあげられたらと考えるが大人を信用していないであろう二人にレイ様に届けてもらうのは無理そうだ。
今日少しの間私とリクがいなくなって捜索が中断されたことで、ローランドさんからは同行はこれきりにしてくれと先程言われてしまったのだ。とりあえず、早くこの事件を解決させるにはカイに頼まれた祭壇に隠されたものを取り出してキヨラの領主に届けるしかなさそうだ。
「そういえば、あの精霊はなんの魔法が使えるの?」
「幻覚魔法が少々使えるようでした」
幻覚魔法で噂を広めたのだろうか……。疑問に思うことはあるもののリクは少し不機嫌そうだ。話を変えるようにリクに先程話したマリウス神父のことをどう思うか聞いてみる。リクは少し考えた後口を開いた。
「マリウス神父は、精霊召喚を行うほど魔力量がなかったと以前言っていましたがそれは違うのではないかと思います」
「どうして?」
「精霊召喚の儀を行えるほどの十分な魔力量があるように見受けられました」
聞けばリクもグレース様と同じく魔力量がどれくらいあるのかわかるらしい。精霊全員が魔力量がわかるわけではないらしいがその辺はリクに濁されてしまった。
「じゃあ、マリウス神父は嘘をついたってこと? なんのために?」
首を傾げるとリクは髭をピクピクと動かした。
「考えられるのは、本当に精霊召喚を行わなかった、それか精霊召喚の儀に失敗したのを隠しているかですかね」
──精霊召喚の儀の失敗。
その言葉を聞いて胸がズシンと重くなる。精霊召喚の儀に失敗することは昔の一部の貴族は不名誉なことと言われることもあり、家を追い出されるというのが多かったらしい。今は儀式に失敗しても騎士団や文官になる貴族が増えたため昔ほどはなくなったらしいが、今でも完全にはなくなってはいない。
お父様もお母様も私を家から出すということはしないとは思うが精霊召喚の儀のことを考えると正直気が重い。
魔力の訓練の際に見せたマリウス神父の表情を思い出す。笑っているようで笑っていない、まるで人形のような笑みだった──。
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