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2章
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昼食を食べ終えてレイ様は森への捜索に戻り、残った私たちは宿に戻ろうかと町を歩いているときだった。
「おい」
不意に後ろから声を掛けられて振り向くと、帽子を深く被った一人の少年がこちらを真っ直ぐ見て立っている。その少年は町で見かけたクズ石を持ち去った少年だった。
「お前、カイに会ったやつか」
ぶっきらぼうにこちらを探るような目つきで聞かれ、ハンナが思わず前に出ようとするのを手で制す。一瞬ハンナに怯んだ様子を見せたものの、グッと堪えた様子で私を見つめた。
「そうだけど。あなたがヨシュア?」
そうたずねると「知ってんのかよ」とボソッと呟き、苦い表情をする。リクが前に言っていた、精霊の色を纏わせていたところからやっぱりこの少年がヨシュアだと納得した。あのリリュという精霊の作り出した空間に長いこといた影響で、精霊の色を纏わせていたのだろうとリクがさっき教えてくれたのだ。
先程森でリリュに会ってからリクは町で会った少年がヨシュアだと確信したそうだ。
「カイが余計なこと言ったみたいだけど、お前らは関わるな」
ヨシュアの表情は顔を顰めているがよくみると顔色が良くない。サンドイッチは食べたのだろうか。私はヨシュアに言われた事を無視してたずねた。
「ねえ、サンドイッチは食べた?」
突然そんなことを言われてヨシュアは一瞬驚いたように面食らった様子を見せると「あ、ああ。うまかった。ありがとう」と素直にお礼を言った。
「でもなんだか顔色が良くないわ。具合が悪いの?」
「いや、そんなことは……でもだいぶよくなったんだ」
素直に返答するあたりやはりヨシュアはいい子に思える。するとリクが一歩前に踏み出してヨシュアに向かって言った。
「お前、クズ石から魔力を吸っているだろう」
リクが冷たい声音でヨシュアに問うと、ヨシュアは「なんで、それを……」と目を見開いた。
「しかもクズ石から魔力を吸っているせいで、身体がクズ石の魔力で汚染されている。身体の不調はそのせいだろう、身体が疼くように痛むことがあるはずだ」
「それは、時々痛いだけで……ずっと痛むわけじゃないし」
「あのリリュとかいう精霊のためか。なんでそこまでして……」
そうリクが言うとヨシュアはカッとなったように声を荒げた。
「仕方がないだろ! 最初は俺たちからリリュに魔力を渡すために契約をしようとしたけど、リリュはできないって言うしマナを取り入れることも難しくなって……ルリの花で凌いでいたけど、だんだん足りなくなって……魔物じゃない、俺たちの魔力だったら魔石からでもリリュが魔力を回復できるかもって思って……」
「それでお前がクズ石から魔力を吸い取ってカイが魔力を入れているわけか」
冷めた視線でリクがみるとヨシュアが下を向いて「カイの方が魔力が多いから俺が吸い取る方がいいと思って……」と消え入りそうな声で言った。
リクが言っていた通り、「精霊の狭間」を維持し続けるためにリリュは相当無理をしていたようだ。先程はそんな様子微塵も見せなかったけど。
そして名付けまでしているのに契約していないのかと不思議に思った。いや、それよりもクズ石の方が気になる。ハンナが怪訝な様子でスッと手を挙げた。
「あのう、精霊は魔石からは魔力を吸えないのでは?」
「吸えないこともないが俺達精霊とは相性が良くない、それは魔石が魔物の魔力が含まれているからだ。純粋な魔力だけが入っているのならばこの場合は入れ物はさして問題はない。魔力のある人間が作ったものならばそこから取り入れば良いのだが作るのにも道具やら時間がかかるからクズ石を使ったんだろう。わずかに石に残った魔物の魔力をコイツが吸い取る、そして完全に空にした石にカイの純粋な魔力を入れたことによってあのリリュという精霊は純粋な魔力を取り入れることができて一時的に回復したのだろう」
そうリクが言うとますますヨシュアが縮こまった。「契約していないのなら人間にこんなことをさせるなんて」とリクが悪態をついた。するとそのリクの言葉を聞いてハッとした表情で「違うんだ!」と叫んだ。
「この事件を本当に終わらせるために俺たちがリリュに無理を言って力を貸してもらっているんだ!」
必死な様子で告げるヨシュアに私は思わず早歩きで近づいた。そして拒否される前にヨシュアの手を強引に握った。ヨシュアの手は草むらなどをかき分けたからか指先が黒ずんでいて硬い。必死にルリの花を探し回ったのだろう。最初ヨシュアを見かけたとき、何かを探していたのはもしかしてルリの花だったのだろうか。冷たくて硬い手だった。全然違うのに大きさが近いからかエヴァンお兄様をなぜか一瞬思い出した。ヨシュアの方を見上げると、ヨシュアは驚いた表情のまま固まっている。ヨシュアの顔を確認するとやはり顔色が良くない。目の下には色濃くクマができて、唇も血色がなくてひび割れている。
「あなたはずっと頑張っているのね」
思わずそう言葉が漏れた。ヨシュアはハッと目を見開いてから少し泣きそうな表情を見せた。
「私、あなた達の力になりたいの。関わるなってあなたは言うけど、関わりたいの」
そう、はっきりとヨシュアの目を見て言った。
「おい」
不意に後ろから声を掛けられて振り向くと、帽子を深く被った一人の少年がこちらを真っ直ぐ見て立っている。その少年は町で見かけたクズ石を持ち去った少年だった。
「お前、カイに会ったやつか」
ぶっきらぼうにこちらを探るような目つきで聞かれ、ハンナが思わず前に出ようとするのを手で制す。一瞬ハンナに怯んだ様子を見せたものの、グッと堪えた様子で私を見つめた。
「そうだけど。あなたがヨシュア?」
そうたずねると「知ってんのかよ」とボソッと呟き、苦い表情をする。リクが前に言っていた、精霊の色を纏わせていたところからやっぱりこの少年がヨシュアだと納得した。あのリリュという精霊の作り出した空間に長いこといた影響で、精霊の色を纏わせていたのだろうとリクがさっき教えてくれたのだ。
先程森でリリュに会ってからリクは町で会った少年がヨシュアだと確信したそうだ。
「カイが余計なこと言ったみたいだけど、お前らは関わるな」
ヨシュアの表情は顔を顰めているがよくみると顔色が良くない。サンドイッチは食べたのだろうか。私はヨシュアに言われた事を無視してたずねた。
「ねえ、サンドイッチは食べた?」
突然そんなことを言われてヨシュアは一瞬驚いたように面食らった様子を見せると「あ、ああ。うまかった。ありがとう」と素直にお礼を言った。
「でもなんだか顔色が良くないわ。具合が悪いの?」
「いや、そんなことは……でもだいぶよくなったんだ」
素直に返答するあたりやはりヨシュアはいい子に思える。するとリクが一歩前に踏み出してヨシュアに向かって言った。
「お前、クズ石から魔力を吸っているだろう」
リクが冷たい声音でヨシュアに問うと、ヨシュアは「なんで、それを……」と目を見開いた。
「しかもクズ石から魔力を吸っているせいで、身体がクズ石の魔力で汚染されている。身体の不調はそのせいだろう、身体が疼くように痛むことがあるはずだ」
「それは、時々痛いだけで……ずっと痛むわけじゃないし」
「あのリリュとかいう精霊のためか。なんでそこまでして……」
そうリクが言うとヨシュアはカッとなったように声を荒げた。
「仕方がないだろ! 最初は俺たちからリリュに魔力を渡すために契約をしようとしたけど、リリュはできないって言うしマナを取り入れることも難しくなって……ルリの花で凌いでいたけど、だんだん足りなくなって……魔物じゃない、俺たちの魔力だったら魔石からでもリリュが魔力を回復できるかもって思って……」
「それでお前がクズ石から魔力を吸い取ってカイが魔力を入れているわけか」
冷めた視線でリクがみるとヨシュアが下を向いて「カイの方が魔力が多いから俺が吸い取る方がいいと思って……」と消え入りそうな声で言った。
リクが言っていた通り、「精霊の狭間」を維持し続けるためにリリュは相当無理をしていたようだ。先程はそんな様子微塵も見せなかったけど。
そして名付けまでしているのに契約していないのかと不思議に思った。いや、それよりもクズ石の方が気になる。ハンナが怪訝な様子でスッと手を挙げた。
「あのう、精霊は魔石からは魔力を吸えないのでは?」
「吸えないこともないが俺達精霊とは相性が良くない、それは魔石が魔物の魔力が含まれているからだ。純粋な魔力だけが入っているのならばこの場合は入れ物はさして問題はない。魔力のある人間が作ったものならばそこから取り入れば良いのだが作るのにも道具やら時間がかかるからクズ石を使ったんだろう。わずかに石に残った魔物の魔力をコイツが吸い取る、そして完全に空にした石にカイの純粋な魔力を入れたことによってあのリリュという精霊は純粋な魔力を取り入れることができて一時的に回復したのだろう」
そうリクが言うとますますヨシュアが縮こまった。「契約していないのなら人間にこんなことをさせるなんて」とリクが悪態をついた。するとそのリクの言葉を聞いてハッとした表情で「違うんだ!」と叫んだ。
「この事件を本当に終わらせるために俺たちがリリュに無理を言って力を貸してもらっているんだ!」
必死な様子で告げるヨシュアに私は思わず早歩きで近づいた。そして拒否される前にヨシュアの手を強引に握った。ヨシュアの手は草むらなどをかき分けたからか指先が黒ずんでいて硬い。必死にルリの花を探し回ったのだろう。最初ヨシュアを見かけたとき、何かを探していたのはもしかしてルリの花だったのだろうか。冷たくて硬い手だった。全然違うのに大きさが近いからかエヴァンお兄様をなぜか一瞬思い出した。ヨシュアの方を見上げると、ヨシュアは驚いた表情のまま固まっている。ヨシュアの顔を確認するとやはり顔色が良くない。目の下には色濃くクマができて、唇も血色がなくてひび割れている。
「あなたはずっと頑張っているのね」
思わずそう言葉が漏れた。ヨシュアはハッと目を見開いてから少し泣きそうな表情を見せた。
「私、あなた達の力になりたいの。関わるなってあなたは言うけど、関わりたいの」
そう、はっきりとヨシュアの目を見て言った。
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