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2章
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私たちはまず、ヨシュアにこの町に滞在することになった経緯を説明した。それから、フローラとマリウス神父に出会い教会孤児院へ通っていること、森への捜索隊に加わりカイとリリュに出会ったことも話した。
「そうか……父さんのお客さんだったんだな。ごめんな、だいぶ迷惑掛けちまってるな」
ヨシュアは私たちがダンテさんの客だと知ると申し訳なさそうに頭を下げた。ダンテさんの様子がやはり気になるようで「父さんは……」と私たちに何か聞きかけたが、グッと堪えた。
「あなたのお父さんはあなたのことをすごく心配している」
一言だけヨシュアを見てそう告げるとヨシュアは途端に泣きそうな表情を見せた。
「今は、まだ帰るわけにはいかないんだ……。きっと、この町の領主様か外の人間が気づいてくれるはずなんだ」
「それは、『精霊が子供をさらう』という噂のことが関係しているの?」
そうたずねるとハッとした表情でヨシュアが私の方へ視線を向けた。
「それをどこで聞いたんだ!?」
先程とは違った必死の剣幕で詰め寄られる。その様子に戸惑いながらも、自分に同行している冒険者がこの町にくる前に教えてくれたのだと言うとヨシュアが「その冒険者はどこの所属なんだ!」といっそう声をあげてたずねてくる。所属という言葉に首を傾げていると、ハンナが「確かミルランタ支部だったと思いますが……」と答えるとヨシュアが「そうか……ミルランタまで届いていたのか」とほうっと息を吐いた。
ミルランタはハーベストよりさらに東に行った街だったはずた。頭の中に地図を思い浮かべる。レイ様がどこの所属とは聞いていなかった。
「何のために貴方たちはそんな噂を流したの?」
「それは……この町、いや、この町の教会孤児院で起きていることを他の町に知らせるためだ」
そう言ったヨシュアは強い瞳で私を見ると、意を決したように今までのこと話してくれた。
ヨシュアから聞いた内容は私たちの想像を超えるものだった──。
それから私たちは、ヨシュアと別れて教会孤児院へ向かった。
カイから頼まれたことを実行するためだ。ヨシュアは心配して「無理しなくていい」と言ってくれたが、捜索されている二人が動くわけにはいかない。
この時間は魔法訓練の時間なので教会の方に人はいないはずだ。ハンナにはレイ様にヨシュアが話したことを知らせに行ってもらい、今は私とリクの二人だけだ。念のために人気がないかリクに外で見張っていてもらう。
「お嬢様、念のためグレース様から頂いた精霊石を身につけていてください」
「これ?」
収納ポーチからグレース様からもらった精霊石を取り出す。蒼く輝く精霊石は仄かに魔力を感じられる。リクはお腹のポケットから何やらゴソゴソと探り、小さな袋と紐を取り出した。小さな指で袋に紐を器用に通すと、私から精霊石を受け取って石を袋の中に入れた。
「急ごしらえで申し訳無いですが、収納にしまってあるよりかは肌に触れていた方が何かといいでしょう」
そう言ってしゃがんでリクの様子を眺めていた私に近づいて、私の首に石の入った袋をかけた。
「ありがとう」
お礼を言って、立ち上がった私は袋を服の下に隠した。
「じゃあ、行ってくるわ」
「見張ってはいますが、どうか気をつけて」
リクの言葉に頷くと、辺りを見渡して人気がいないのを確認してから教会の扉の前に立った。
ゆっくりと教会の扉を開けると、わずかに軋む音が響く。心臓の鼓動が早くなっている気がするのを感じながらも教会に足を踏み入れた。
ひんやりとした空気が肌を撫でる。以前よりどことなく少し寒さを感じた。思わず自分の腕をさすりながらゆっくりと足を踏み出すと、履いているブーツの音が思ったよりも教会内に響き渡る。できるだけ靴音を響かせないように祭壇へ向かって歩いた。
だんだんと祭壇の上に飾られたあの絵画に近づく。祭壇の前に立つと、私はあの絵画を見上げた。
「嘆きの魔女と光の聖女の戦い」を描いていると言われているこの絵はフローラの言うとおりどことなく不気味さを感じる。それと同時にどこか物悲しい雰囲気もあるのは嘆きの魔女が泣いているように私が見えるからだろうか……。思わずそんなことを思った私はハッと我に帰る。
今は絵に見入っている場合じゃないわ。
自分のやるべきことを思い出し、ふるふると頭を振った。祭壇の裏に周り、祭壇をくまなく調べる。木でできた作りの祭壇は彫刻はしてあるが、これといって何かが隠されているようなスペースは見当たらない。もう少しカイに聞いておくべきだったと思いながらも、手で祭壇をなぞりながら変わったところはないか調べていく。すると一箇所だけ祭壇の淵にわずかに縦に切れ目のようなものが二箇所入っている。そこを指でなぞり恐る恐る押してみる。
やはりスイッチのようなものだったらしく、わずかな音を立ててその場所だけへこんだかと思うと祭壇の一部分から引き出しのようなものが出てきた。
ゆっくりと引き出しを引くと、中から書類が出てきた。心臓の鼓動が早くなる。唇が乾くのを舌でなめずり、深呼吸をしながら引き出しから書類を取り出す。
書類に目を通すと、それは子供のプロフィールのようだった。名前に年齢、性別に加えて魔力の量、魔法訓練の成績だった。そして次のページには納品書のようなものだった。ざわざわと胸が騒ぐ。呼吸が早くなるのを落ち着かせながら目で文字を追っていく。
取引相手と思われる相手の名前、この町の町長、そしてマリウス神父のサインがあった。そして、書かれているのは子供の名前とその横に値段が表記されているものだった──。厚みのある書類はめくると全て似たようなものだった。
脳裏にフローラや、イアン、ここの子供達の笑顔が浮かんで泣きそうになる。
「おや、今日はお見えにならないものと思っていましたが」
ハッとして声のした方を見るとそこにはいつのまにか背後にマリウス神父がいつものように朗らかな笑みで立っていた。
「そうか……父さんのお客さんだったんだな。ごめんな、だいぶ迷惑掛けちまってるな」
ヨシュアは私たちがダンテさんの客だと知ると申し訳なさそうに頭を下げた。ダンテさんの様子がやはり気になるようで「父さんは……」と私たちに何か聞きかけたが、グッと堪えた。
「あなたのお父さんはあなたのことをすごく心配している」
一言だけヨシュアを見てそう告げるとヨシュアは途端に泣きそうな表情を見せた。
「今は、まだ帰るわけにはいかないんだ……。きっと、この町の領主様か外の人間が気づいてくれるはずなんだ」
「それは、『精霊が子供をさらう』という噂のことが関係しているの?」
そうたずねるとハッとした表情でヨシュアが私の方へ視線を向けた。
「それをどこで聞いたんだ!?」
先程とは違った必死の剣幕で詰め寄られる。その様子に戸惑いながらも、自分に同行している冒険者がこの町にくる前に教えてくれたのだと言うとヨシュアが「その冒険者はどこの所属なんだ!」といっそう声をあげてたずねてくる。所属という言葉に首を傾げていると、ハンナが「確かミルランタ支部だったと思いますが……」と答えるとヨシュアが「そうか……ミルランタまで届いていたのか」とほうっと息を吐いた。
ミルランタはハーベストよりさらに東に行った街だったはずた。頭の中に地図を思い浮かべる。レイ様がどこの所属とは聞いていなかった。
「何のために貴方たちはそんな噂を流したの?」
「それは……この町、いや、この町の教会孤児院で起きていることを他の町に知らせるためだ」
そう言ったヨシュアは強い瞳で私を見ると、意を決したように今までのこと話してくれた。
ヨシュアから聞いた内容は私たちの想像を超えるものだった──。
それから私たちは、ヨシュアと別れて教会孤児院へ向かった。
カイから頼まれたことを実行するためだ。ヨシュアは心配して「無理しなくていい」と言ってくれたが、捜索されている二人が動くわけにはいかない。
この時間は魔法訓練の時間なので教会の方に人はいないはずだ。ハンナにはレイ様にヨシュアが話したことを知らせに行ってもらい、今は私とリクの二人だけだ。念のために人気がないかリクに外で見張っていてもらう。
「お嬢様、念のためグレース様から頂いた精霊石を身につけていてください」
「これ?」
収納ポーチからグレース様からもらった精霊石を取り出す。蒼く輝く精霊石は仄かに魔力を感じられる。リクはお腹のポケットから何やらゴソゴソと探り、小さな袋と紐を取り出した。小さな指で袋に紐を器用に通すと、私から精霊石を受け取って石を袋の中に入れた。
「急ごしらえで申し訳無いですが、収納にしまってあるよりかは肌に触れていた方が何かといいでしょう」
そう言ってしゃがんでリクの様子を眺めていた私に近づいて、私の首に石の入った袋をかけた。
「ありがとう」
お礼を言って、立ち上がった私は袋を服の下に隠した。
「じゃあ、行ってくるわ」
「見張ってはいますが、どうか気をつけて」
リクの言葉に頷くと、辺りを見渡して人気がいないのを確認してから教会の扉の前に立った。
ゆっくりと教会の扉を開けると、わずかに軋む音が響く。心臓の鼓動が早くなっている気がするのを感じながらも教会に足を踏み入れた。
ひんやりとした空気が肌を撫でる。以前よりどことなく少し寒さを感じた。思わず自分の腕をさすりながらゆっくりと足を踏み出すと、履いているブーツの音が思ったよりも教会内に響き渡る。できるだけ靴音を響かせないように祭壇へ向かって歩いた。
だんだんと祭壇の上に飾られたあの絵画に近づく。祭壇の前に立つと、私はあの絵画を見上げた。
「嘆きの魔女と光の聖女の戦い」を描いていると言われているこの絵はフローラの言うとおりどことなく不気味さを感じる。それと同時にどこか物悲しい雰囲気もあるのは嘆きの魔女が泣いているように私が見えるからだろうか……。思わずそんなことを思った私はハッと我に帰る。
今は絵に見入っている場合じゃないわ。
自分のやるべきことを思い出し、ふるふると頭を振った。祭壇の裏に周り、祭壇をくまなく調べる。木でできた作りの祭壇は彫刻はしてあるが、これといって何かが隠されているようなスペースは見当たらない。もう少しカイに聞いておくべきだったと思いながらも、手で祭壇をなぞりながら変わったところはないか調べていく。すると一箇所だけ祭壇の淵にわずかに縦に切れ目のようなものが二箇所入っている。そこを指でなぞり恐る恐る押してみる。
やはりスイッチのようなものだったらしく、わずかな音を立ててその場所だけへこんだかと思うと祭壇の一部分から引き出しのようなものが出てきた。
ゆっくりと引き出しを引くと、中から書類が出てきた。心臓の鼓動が早くなる。唇が乾くのを舌でなめずり、深呼吸をしながら引き出しから書類を取り出す。
書類に目を通すと、それは子供のプロフィールのようだった。名前に年齢、性別に加えて魔力の量、魔法訓練の成績だった。そして次のページには納品書のようなものだった。ざわざわと胸が騒ぐ。呼吸が早くなるのを落ち着かせながら目で文字を追っていく。
取引相手と思われる相手の名前、この町の町長、そしてマリウス神父のサインがあった。そして、書かれているのは子供の名前とその横に値段が表記されているものだった──。厚みのある書類はめくると全て似たようなものだった。
脳裏にフローラや、イアン、ここの子供達の笑顔が浮かんで泣きそうになる。
「おや、今日はお見えにならないものと思っていましたが」
ハッとして声のした方を見るとそこにはいつのまにか背後にマリウス神父がいつものように朗らかな笑みで立っていた。
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