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2章
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「はー、痛かった」
治療を終えたレイ様が大の字に寝転がった。
「ポーションのおかげで大したことにならずに済んだな」
リクがポーションの空き瓶を振りながら言った。レイ様はあのあと自分のポーチからポーションを取り出して傷口にかけて事なきを得た。
「それにしても不思議ですね」
空になったポーションの空き瓶をリクから受け取り、瓶の底にわずかに残っている青い色の水滴を眺める。先程トロリとした青い液体のポーションをレイ様の傷口にかけた途端煙が出て、みるみるうちに傷口が塞がれていくのには驚いた。
「お嬢はポーション見るの初めてなんだ~貴族だとなかなか使わないもんね。それにしても、俺がああなる前にどうにかできなかったの~?」
そう言って寝転んだままレイ様はリクの方を見やった。
「無茶を言うな。魔法をぶつけるのにも隙が必要だったし、第一俺も魔導具の影響で最初は動けなかった」
ツーンとリクはそっぽを向く。そこで私は気になったことをリクにたずねてみた。
「マリウス神父の魔導具のせいで手足は動かなかったし、魔法を放つのに魔力が霧散してしまっていたのにどうやって拘束を解いたの?」
「それはですね……格の違いってやつです」
「格の違い?」
こともなげに告げるリクの言葉を反芻して首を傾げる。
「あの者は魔導具の力を過信していたようですが、第一に魔導具は精霊に効きづらいという点があります」
「でも、リクは教会で私が攫われたときに気づかなかったのは……」
不思議に思って思わず口に出すと、リクは途端にどんよりとした空気を纏い出す。慌てて「違うの!攻めてるわけじゃなくて!不思議に思って」と弁明するとリクは髭をしょんぼりとさせたまま説明してくれた。
なんでもリクが言うには一般的には魔導具は精霊に対して効きづらいという。効きづらいというのは攻撃系の魔導具や、身を隠す魔導具など精霊に干渉する物に限るという。ただ、それにも例外がある。それが「対精霊用に作られた」魔導具であること。教会で用いられた魔導具はリクが考えるに元々は「精霊と戦う際」に用いるための魔導具ではないかとのこと。
「精霊と戦うことなんて……」
「ありますよ、一昔前までは契約者が戦いの際、自分の精霊と相手の精霊を戦わせながら隙を見て魔導具を使って攻撃してくるなんてこともありましたし。まあ、今はその攻撃魔導具自体、国の禁止魔導具に指定されて回収対象になっていますが。全部は回収仕切れていないので」
戦い方が物騒というか、殺伐としているというか……いや、戦いに手段を選んでいられないのが普通なのか。自分の中でなんとなく精霊と共に戦う対象は魔物だけという勝手な認識があった。同じ人間や精霊の場合もあるんだとこのとき初めて気付かされた。
なんとも言えない気持ちになっているとレイ様が「じゃあ、さっきの拘束する魔導具は?」と問いかける。
「それはマリウス神父が使用していた魔導具が精霊「も」対象にした魔導具だったからでしょう。精霊「のみ」に対象にした攻撃系の魔導具は禁止魔導具対象ですが、人間相手だと禁止魔導具には指定されていません。ですが、たまに精霊も人間も対象にした特殊な魔導具があります。人間用とうたって法の目をくぐり抜けた物ですね。まあ、魔導具にもランクがあるのでたいしたことのない魔導具だったということです。もっともあの拘束の魔導具は下位精霊だったら効果は抜群でしたでしょうね」
あくまでも効きづらいのであって全く効かない訳ではないらしい。現に拘束にかかったとき動けず、解くための魔力を練っていたらしい。
「さっきの蛇の魔導具は、初めて見たよ~、まるきり本物だったし。あんなのもあるんだねえ~」
「あれも禁止魔導具の類だろうな、嫌な思念が纒わりついていて、とんでもなく禍々しかったし下位精霊ぐらいだったら倒せるだろう」
そう言ってマリウス神父の遺体から回収された魔導具の山を見た。拘束や目眩し、使役できる蛇を出す魔導具、そして魔力を吸い取る魔導具。
精霊と契約していないマリウス神父は戦う術を魔導具で補おうと思い、集めていたのだろうか……。もし私が精霊と契約できなかったら……。
ふとそんなことを思うも今考えてもしょうがないと頭を振る。
「おい! イアン!」
「う……ここは? あれ、ヨシュア兄ちゃん」
少し離れたところでイアンの様子を見ていたヨシュアがイアンに呼びかけている。イアンがどうやら目を覚ましたようだ。
マリウス神父との戦いのあと、辺りを捜索しリクが倒れているイアンを発見した。外傷はなかったが、ぐったりしているイアンにまず魔力回復ポーションを飲ませて、魔力を吸い取る魔導具の悪影響があるとも限らないので、私が作ったアイスクリームを食べさせた。徐々に顔色を取り戻したので、とりあえずレイ様がマリウス神父の遺体を確認する必要もあったため、イアンを寝かせていたのだ。
マリウス神父の遺体はあとでギルド側が確認するため今は私達の見えないところに安置してある。
「ばか! お前、心配したんだぞ!」
ヨシュアが起きたばかりのイアンに拳骨を頭に落とした。痛みにうめきながらも魔導具の山を見た。イアンは目を伏せ、自分のしたことを自覚しているのか「ごめんなさい」と小さく言った。私が「無事でよかった」と声を掛けるとイアンは泣きそうな表情を見せた。
「本当にごめんなさい。僕、神父様とどうしても話を聞きたくて……」
私達にイアンが頭を下げる。
レイ様はそれ以上はもういいといったようにイアンの肩をぽんと叩いた。
「じゃ、帰ろっか~」
そうして私達はキヨラの町へ帰ったのだった。
治療を終えたレイ様が大の字に寝転がった。
「ポーションのおかげで大したことにならずに済んだな」
リクがポーションの空き瓶を振りながら言った。レイ様はあのあと自分のポーチからポーションを取り出して傷口にかけて事なきを得た。
「それにしても不思議ですね」
空になったポーションの空き瓶をリクから受け取り、瓶の底にわずかに残っている青い色の水滴を眺める。先程トロリとした青い液体のポーションをレイ様の傷口にかけた途端煙が出て、みるみるうちに傷口が塞がれていくのには驚いた。
「お嬢はポーション見るの初めてなんだ~貴族だとなかなか使わないもんね。それにしても、俺がああなる前にどうにかできなかったの~?」
そう言って寝転んだままレイ様はリクの方を見やった。
「無茶を言うな。魔法をぶつけるのにも隙が必要だったし、第一俺も魔導具の影響で最初は動けなかった」
ツーンとリクはそっぽを向く。そこで私は気になったことをリクにたずねてみた。
「マリウス神父の魔導具のせいで手足は動かなかったし、魔法を放つのに魔力が霧散してしまっていたのにどうやって拘束を解いたの?」
「それはですね……格の違いってやつです」
「格の違い?」
こともなげに告げるリクの言葉を反芻して首を傾げる。
「あの者は魔導具の力を過信していたようですが、第一に魔導具は精霊に効きづらいという点があります」
「でも、リクは教会で私が攫われたときに気づかなかったのは……」
不思議に思って思わず口に出すと、リクは途端にどんよりとした空気を纏い出す。慌てて「違うの!攻めてるわけじゃなくて!不思議に思って」と弁明するとリクは髭をしょんぼりとさせたまま説明してくれた。
なんでもリクが言うには一般的には魔導具は精霊に対して効きづらいという。効きづらいというのは攻撃系の魔導具や、身を隠す魔導具など精霊に干渉する物に限るという。ただ、それにも例外がある。それが「対精霊用に作られた」魔導具であること。教会で用いられた魔導具はリクが考えるに元々は「精霊と戦う際」に用いるための魔導具ではないかとのこと。
「精霊と戦うことなんて……」
「ありますよ、一昔前までは契約者が戦いの際、自分の精霊と相手の精霊を戦わせながら隙を見て魔導具を使って攻撃してくるなんてこともありましたし。まあ、今はその攻撃魔導具自体、国の禁止魔導具に指定されて回収対象になっていますが。全部は回収仕切れていないので」
戦い方が物騒というか、殺伐としているというか……いや、戦いに手段を選んでいられないのが普通なのか。自分の中でなんとなく精霊と共に戦う対象は魔物だけという勝手な認識があった。同じ人間や精霊の場合もあるんだとこのとき初めて気付かされた。
なんとも言えない気持ちになっているとレイ様が「じゃあ、さっきの拘束する魔導具は?」と問いかける。
「それはマリウス神父が使用していた魔導具が精霊「も」対象にした魔導具だったからでしょう。精霊「のみ」に対象にした攻撃系の魔導具は禁止魔導具対象ですが、人間相手だと禁止魔導具には指定されていません。ですが、たまに精霊も人間も対象にした特殊な魔導具があります。人間用とうたって法の目をくぐり抜けた物ですね。まあ、魔導具にもランクがあるのでたいしたことのない魔導具だったということです。もっともあの拘束の魔導具は下位精霊だったら効果は抜群でしたでしょうね」
あくまでも効きづらいのであって全く効かない訳ではないらしい。現に拘束にかかったとき動けず、解くための魔力を練っていたらしい。
「さっきの蛇の魔導具は、初めて見たよ~、まるきり本物だったし。あんなのもあるんだねえ~」
「あれも禁止魔導具の類だろうな、嫌な思念が纒わりついていて、とんでもなく禍々しかったし下位精霊ぐらいだったら倒せるだろう」
そう言ってマリウス神父の遺体から回収された魔導具の山を見た。拘束や目眩し、使役できる蛇を出す魔導具、そして魔力を吸い取る魔導具。
精霊と契約していないマリウス神父は戦う術を魔導具で補おうと思い、集めていたのだろうか……。もし私が精霊と契約できなかったら……。
ふとそんなことを思うも今考えてもしょうがないと頭を振る。
「おい! イアン!」
「う……ここは? あれ、ヨシュア兄ちゃん」
少し離れたところでイアンの様子を見ていたヨシュアがイアンに呼びかけている。イアンがどうやら目を覚ましたようだ。
マリウス神父との戦いのあと、辺りを捜索しリクが倒れているイアンを発見した。外傷はなかったが、ぐったりしているイアンにまず魔力回復ポーションを飲ませて、魔力を吸い取る魔導具の悪影響があるとも限らないので、私が作ったアイスクリームを食べさせた。徐々に顔色を取り戻したので、とりあえずレイ様がマリウス神父の遺体を確認する必要もあったため、イアンを寝かせていたのだ。
マリウス神父の遺体はあとでギルド側が確認するため今は私達の見えないところに安置してある。
「ばか! お前、心配したんだぞ!」
ヨシュアが起きたばかりのイアンに拳骨を頭に落とした。痛みにうめきながらも魔導具の山を見た。イアンは目を伏せ、自分のしたことを自覚しているのか「ごめんなさい」と小さく言った。私が「無事でよかった」と声を掛けるとイアンは泣きそうな表情を見せた。
「本当にごめんなさい。僕、神父様とどうしても話を聞きたくて……」
私達にイアンが頭を下げる。
レイ様はそれ以上はもういいといったようにイアンの肩をぽんと叩いた。
「じゃ、帰ろっか~」
そうして私達はキヨラの町へ帰ったのだった。
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