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2章
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教会孤児院に戻ると、門の前にダンテさんが立っており、こちらを見て目を見開いた。会ったときより髭は伸びて目の下にはクマがひどい。
イアンを背負っていたヨシュアの足が止まる。ヨシュアは察して「もう大丈夫だから」と言ってヨシュアの背中から降りた。
ヨシュアはゆっくりとダンテさんのもとへ駆け寄った。ダンテさんもヨシュアに駆け寄り、お互い向かい合った途端ヨシュアの頭に拳骨を落とした。
「ゴツ!」っとこちらまで聞こえてくる音に思わず私もたじろぐ。
「いってええ!!」
ヨシュアが痛みにうめき声を上げた。
「この、馬鹿野郎! 人様に迷惑かけて!」
憔悴しきった男から出たものとは思えないほどの声量が響き渡る。
「なっ…にすんだよ!」
ヨシュアがダンテさんに文句を言いかけたときだった。ダンテさんがヨシュアを抱きしめた。
「よかった……無事で、本当によかった……」
ヨシュアはされるがまま、そのままダンテさんの肩に顔を埋める。
「じゃ、いこっか」
その様子を眺めていた私達はレイ様に促されて二人を尻目に教会孤児院の門をくぐった。
それから私達は森であったことの聴取を受けることになり、やむをえず長時間教会孤児院に滞在する羽目になった。
聴取が終わる頃には陽もどっぷりと暮れていて、くたくたの状態でやっと解放されたのだった。
「つ、疲れた……」
教会孤児院からの帰り道、思わずそう零すとハンナは申し訳なさそうに
「申し訳ございません。せめて聴取は明日とお願いしたのですが、ミルランタのギルマスの方がどうしてもとおっしゃられて……」
「しょうがないわよ。むしろ子供の私が着いていったのを見逃してくださったのよ。聴取くらい甘んじて受けないとね」
「伯爵令嬢を咎めることはできませんよ」
リクが隣を歩きながら突っ込む。
「リークー? あなた私が聴取を受ける際逃げたわね? どこにいたのよ。ヒューズさんはあなたからも話を聞きたかったみたいよ?」
うらめしげにリクを見るとリクは「いやー、私は怪しい魔導具がないかレイ殿に頼まれてまして」と視線を泳がせた。
「ふーん?」と言ってリクを見つめているとハンナが「それにしても」と口を開いた。
「まさかローランドさんがハインツ子爵家の当主でキヨラの領主だったとは驚きました」
「本当ね、私も驚いたわ」
ヒューズさんの部下の方から聴取を受けたあと、ヒューズさんがキヨラの領主が挨拶をしたがっていると聞いて、連れてきたのがローランドさんだったのだ。
驚いている私に罰が悪そうな表情で現れたローランドさんは「すまなかった」と開口一番に謝罪の言葉を述べた後、事のあらましを説明してくれた。
ローランドさんはずっとキヨラに住んでいた訳ではなく、元々王都の騎士団にいたそうだ。
先代の領主であるお父様が亡くなった後、代替わりのため久しぶりにキヨラに足を踏み入れた際、町の老朽化による修繕が長い間手付かずの状態でいたるところに見受けられたそうだ。不思議に思ったローランドさんは子爵家に帰った際にキヨラから提出される帳簿を確認したところ、修繕費用は記載されている。正しく町の修繕がされていないのではないかと先代の部下に指摘したところ、「そんなはずはない、修繕などの公共事業はあなたが思っているよりも時間がかかるし他にもたくさんあるのだ」と突っぱねられたそうだ。
その要領を得ない説明に納得いかず不審に思い調べると先代が生前、病床に伏している間はその部下が領主の仕事を受け持っていたという。
「亡くなったときは急病と思っていたのだが、どうやら先代の領主である父は私を心配させまいと亡くなるまで知らせないようにと命じていたらしい」
しかも部下であるその男はローランドさんのことを周りに「父親がなくなるまで見舞いにも帰ってこなかった男」と吹聴していたらしい。
先代領主が信頼している部下が子爵家でそのようなことを吹聴すれば信じ込んでしまう者が多くなるのは自然だろう。
そうすれば自ずとローランドさんの子爵家での立ち位置は良くないものとなる。
後を継いだはいいが、領主の仕事はその男経由で帳簿が上がってくるため表立って調査したくともできない状況だったという。
どうしたものかと思いながら身分を伏せてキヨラに行った際、たまたま自警団の模擬演習に参加したことがきっかけでそのときの団長に自警団の団員にスカウトされた。ローランドさんはそこで考えついたらしい。
──自分が身分を隠して町長直轄の自警団に入れば何かわかるかもしれない……と。
前団長は、聞けば先代領主とも仲が良かったらしくよくお酒を一緒に飲む仲だった。
それを知ったローランドさんは前団長に思い切って自分の身分とこの町に来てからのことを打ち明けたところ、キヨラの町のここ数年のことを教えてくれた。前団長も町長のやり方に不審を抱いてはいたものの、どうすることもできず歯痒い思いをしていたらしく、力を貸してくれることになったという。
そしてローランドさんは自警団に入団してから王都の騎士団に所属していた実力を遺憾なく発揮し、異例のスピードで団長まで上り詰めた。
「それから私は少しずつ情報を集め、仲間を増やして町長と先代領主である父の部下が不正をしていることを突き止めた」
イアンを背負っていたヨシュアの足が止まる。ヨシュアは察して「もう大丈夫だから」と言ってヨシュアの背中から降りた。
ヨシュアはゆっくりとダンテさんのもとへ駆け寄った。ダンテさんもヨシュアに駆け寄り、お互い向かい合った途端ヨシュアの頭に拳骨を落とした。
「ゴツ!」っとこちらまで聞こえてくる音に思わず私もたじろぐ。
「いってええ!!」
ヨシュアが痛みにうめき声を上げた。
「この、馬鹿野郎! 人様に迷惑かけて!」
憔悴しきった男から出たものとは思えないほどの声量が響き渡る。
「なっ…にすんだよ!」
ヨシュアがダンテさんに文句を言いかけたときだった。ダンテさんがヨシュアを抱きしめた。
「よかった……無事で、本当によかった……」
ヨシュアはされるがまま、そのままダンテさんの肩に顔を埋める。
「じゃ、いこっか」
その様子を眺めていた私達はレイ様に促されて二人を尻目に教会孤児院の門をくぐった。
それから私達は森であったことの聴取を受けることになり、やむをえず長時間教会孤児院に滞在する羽目になった。
聴取が終わる頃には陽もどっぷりと暮れていて、くたくたの状態でやっと解放されたのだった。
「つ、疲れた……」
教会孤児院からの帰り道、思わずそう零すとハンナは申し訳なさそうに
「申し訳ございません。せめて聴取は明日とお願いしたのですが、ミルランタのギルマスの方がどうしてもとおっしゃられて……」
「しょうがないわよ。むしろ子供の私が着いていったのを見逃してくださったのよ。聴取くらい甘んじて受けないとね」
「伯爵令嬢を咎めることはできませんよ」
リクが隣を歩きながら突っ込む。
「リークー? あなた私が聴取を受ける際逃げたわね? どこにいたのよ。ヒューズさんはあなたからも話を聞きたかったみたいよ?」
うらめしげにリクを見るとリクは「いやー、私は怪しい魔導具がないかレイ殿に頼まれてまして」と視線を泳がせた。
「ふーん?」と言ってリクを見つめているとハンナが「それにしても」と口を開いた。
「まさかローランドさんがハインツ子爵家の当主でキヨラの領主だったとは驚きました」
「本当ね、私も驚いたわ」
ヒューズさんの部下の方から聴取を受けたあと、ヒューズさんがキヨラの領主が挨拶をしたがっていると聞いて、連れてきたのがローランドさんだったのだ。
驚いている私に罰が悪そうな表情で現れたローランドさんは「すまなかった」と開口一番に謝罪の言葉を述べた後、事のあらましを説明してくれた。
ローランドさんはずっとキヨラに住んでいた訳ではなく、元々王都の騎士団にいたそうだ。
先代の領主であるお父様が亡くなった後、代替わりのため久しぶりにキヨラに足を踏み入れた際、町の老朽化による修繕が長い間手付かずの状態でいたるところに見受けられたそうだ。不思議に思ったローランドさんは子爵家に帰った際にキヨラから提出される帳簿を確認したところ、修繕費用は記載されている。正しく町の修繕がされていないのではないかと先代の部下に指摘したところ、「そんなはずはない、修繕などの公共事業はあなたが思っているよりも時間がかかるし他にもたくさんあるのだ」と突っぱねられたそうだ。
その要領を得ない説明に納得いかず不審に思い調べると先代が生前、病床に伏している間はその部下が領主の仕事を受け持っていたという。
「亡くなったときは急病と思っていたのだが、どうやら先代の領主である父は私を心配させまいと亡くなるまで知らせないようにと命じていたらしい」
しかも部下であるその男はローランドさんのことを周りに「父親がなくなるまで見舞いにも帰ってこなかった男」と吹聴していたらしい。
先代領主が信頼している部下が子爵家でそのようなことを吹聴すれば信じ込んでしまう者が多くなるのは自然だろう。
そうすれば自ずとローランドさんの子爵家での立ち位置は良くないものとなる。
後を継いだはいいが、領主の仕事はその男経由で帳簿が上がってくるため表立って調査したくともできない状況だったという。
どうしたものかと思いながら身分を伏せてキヨラに行った際、たまたま自警団の模擬演習に参加したことがきっかけでそのときの団長に自警団の団員にスカウトされた。ローランドさんはそこで考えついたらしい。
──自分が身分を隠して町長直轄の自警団に入れば何かわかるかもしれない……と。
前団長は、聞けば先代領主とも仲が良かったらしくよくお酒を一緒に飲む仲だった。
それを知ったローランドさんは前団長に思い切って自分の身分とこの町に来てからのことを打ち明けたところ、キヨラの町のここ数年のことを教えてくれた。前団長も町長のやり方に不審を抱いてはいたものの、どうすることもできず歯痒い思いをしていたらしく、力を貸してくれることになったという。
そしてローランドさんは自警団に入団してから王都の騎士団に所属していた実力を遺憾なく発揮し、異例のスピードで団長まで上り詰めた。
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