猫になった俺、王子様の飼い猫になる

あまみ

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触れられた気持ち

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 (ああああ!なんでよりによって殿下の前で泣いたんだ俺)

 泣かないと思っていたのにエリオットの言葉で溜まっていたものが決壊してしまった。
 
 ──故郷が恋しくないか

 恋しくないといえば嘘になる。現状の自分を受け入れることはできているつもりだった。ただ、あのときふと考えてしまった。
 残してきた家族を、友人を。あの日までいつも通りに過ごせると思っていた日常を少しでも恋しいと思わないなんてことない。
 けれど、テオドールは猫の呪いはまだしも違う世界から転移してきた話なんて聞いたことがないし戻れる術すら思いつかないと言った。
 だからなんとなく覚悟はしていた。
 あのときエリオットに聞かれて心の底にしまったはずの、整理していた自分の気持ちに触れられてなぜだか忘れていたはずの気持ちを思いだしてしまったのだ。
 泣いてスッキリしたのかカケラほどのその気持ちは溶けて無くなっていた。

 (やっと受け止められたのかも)

 自分が泣き止むまで胸を貸してくれたエリオットを思い出す。
 イオ(猫)のときに嗅ぎ慣れた香りに安心して子供のように泣いてしまった。優しく頭を撫でてくれ、泣き顔が見えないように抱きしめてくれた。

 (~~~~!!)

 羞恥に顔が熱くなり、ベッドでジタバタとしているとふと窓の景色が目に入る。窓の外の景色は青々としていて暖かい日差しが差し込んでいる。

 (こんな時間に猫になって外で日向ぼっこできたら最高だろうなー)

 猫の姿での自分にも慣れてきた天音は天気のいい日はそんなことを思う。今は夜の間だけ自然に猫の姿になってしまうので特に不便を感じたことはないが以前猫の姿で王城で過ごしていた際にぽかぽか陽気に微睡むのが最高に気持ちが良かったのだ。

 (キス……したら人間の姿だと猫になるのかな)

 ふと、そんな考えがよぎりそっと自分の指で唇をなぞる。でも誰と?と考えると以前テオドールにキスをされたことを思い出す。

 (あれは違う!断じてキスなんかじゃない!だいたいキスで変身するってなんなんだよ……キスって普通好きな人とするもんじゃないのか)

 そう考えたところでなぜかエリオットの姿が浮かぶ。


 (なんて殿下の顔が浮かぶんだよー!)

 悶々と思考の波に溺れそうになったところでベッドから天音は飛び起きた。

 「よし!気分転換に街に行こう!」

 そういってテキパキと準備をしだした天音はエリオットの顔を考えないように頭の隅に追いやったのだった。

 

 
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