猫になった俺、王子様の飼い猫になる

あまみ

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助け

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 声が遠くから聞こえてきたと同時に天音の衣服を尚も剥ぎ取ろうとした男の一人が突然何かに吹き飛ばれた。
 男は転がってうめき声をあげる。突然のことに他の男達が唖然としていると今度はもう一人の男がまた吹き飛ばされて今度は引きずるように路地裏の遠くまで音を立てて壁に激突した。

 「な、なんだ!」

 天音を羽交締めにしていた男は辺りを見渡して声の主を探しながら、天音を盾にするようにしてその場所から移動しようとする。
 
 そのときだった。

 激しい衝撃とともに天音の身体が男から引き離される。男の「ぐあっ」といううめき声に何が起こったのかわからず身体をこわばらせるとふわりと何かに包まれた。嗅ぎなれた香りに驚いて顔をあげるとそこにはエリオットが凍てつくような形相で男達を見下ろしていた。
 起き上がった男達はエリオットを見て「魔法か!」とあとずさる。エリオットは短く何かを呟くと天音を抱えている方とは逆の腕をあげて人差し指をクンッと男達に指すと衝撃波のようなものが放たれた。男達は同時に衝撃波を受けて地面に再び転がるとぐったりとして動かなくなった。

 「これで当分動けないだろう」
 (で、んか……?)

 目の前にいる人物は帽子とメガネで変装はしているが間違いなくエリオットだった。突然現れたエリオットに驚きを隠せないでいると、エリオットは天音にかけられた猿轡をとってやり、眉を顰めたかと思うと自分が羽織っていた上着を脱ぐと天音に上から着せた。
 今の天音は先程男達に衣服を裂かれて肌が剥き出しになっている状態だ。その姿に気づいた天音はあわててエリオットの上着で肌を隠した。

 「部屋にいたんじゃなかったのか」

 仕事を休んで部屋にいなかったことを咎められていると思い、天音は咄嗟に頭を下げた。

 「す、すみません」
 「なぜ謝る? お前が休みをどう過ごそうか勝手だろう」
 「そう、ですね……殿下はなぜここに?」

 実はあの後エリオットはユエルからのチクチクとした視線に居心地が悪くなり、急遽こっそり町へと出てきたのだった。
 いつものように街をぶらぶらしていたところで、天音がどう見ても知り合いではなさそうな輩に絡まれているところを見かけて路地裏に入っていくところを思わずつけてきたというわけだった。
 
 「いや、まあ……見回りのようなものだ」

 苦し紛れの説明をしながらエリオットはふと天音の姿をみると手が小さく震えているのに気がついた。
 
 「おい、大丈夫か」

 声を掛けられてハッと天音は自分が震えていることに気づく。

 「あれ、すみません……」

 震えを抑えようと両手をグッと握り締めるも震えは治らない。それどころか天音の瞳から涙がポロッとこぼれ落ちた。

 「すみません、なんかホッとしちゃって……」

 ゴシゴシと涙を拭う天音を見たエリオットは無言で天音を抱き抱えた。
 突然のお姫様抱っこに天音は驚いて思わず「わわ」っと声を上げた。

 「え、殿下!?」
 「あまり大きな声で殿下と言うな」
 「あ、はい……ってどこにいくんですか」
 「その姿では出歩けないだろう、それに傷の手当も必要だ」

 天音の姿はよくみるとあちこちに細かな擦り傷ができていた。頬には猿轡を噛ませたときにできたのが少し擦り切れて血が出ている。
 エリオットは壊れ物を扱うかのように優しく抱え直すと、そのまま路地裏を慣れた様子で歩き出したのだった。
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