積もるのは嘘と気持ちと

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ーαの転校生が来たらしい

そのニュースは瞬く間に校内を駆け巡り、普段あまりクラスメイトとも話さない僕の耳まで入ってきた。

基本αやΩはこんな田舎の学校に通うことはない。
都会に大きく設備の整った国立学校があり、そちらに第2の性が判明次第通えることになるからだ。
強制ではないのだが、国からの補助金で無償で通える上、人脈も作れるため、ほとんどのαとΩがそこへ通うと聞く。

だからαが転校してくるなんて転校せざるを得ない程の問題児が来たのかと学校全体がざわめいているのだ。

もったいない事をするαもいるものだと思う。国立学校に入ってさえいればαは将来を約束されたようなものだと言うのに。
僕も通ってみたかったと行ったことも見たこともないその場所に思いを馳せる。
そこはとてもΩを大事にしてくれるとニュースか何かで見たことがある。

一昔前はΩといえば差別を受け、隠れるように生きるものが多かったが、Ωの著しい人口減少に伴いαの出生率の低下するなど国にとってマイナスなことが明らかになり、Ωを取り巻く環境が急激に変化した。
国はαと共にΩも保護するように動き、抑制剤の開発も進みΩは他の性に引けを取ることなく生活できるようになってきた。

ーー表向きは。

僕もΩだが、世間がどういう事情になろうとも僕を取り巻く環境は変わらない。
まだ自分は高校生で何の力も持たない。
お金もなく、保護者の許可なしにアルバイトすることだって部屋を借りることだってできない。
親の与える世界だけが自分の世界だと受け入れるより他ないことはとっくの昔に覚悟をしているが、ついついもしものことを現実逃避のように考えてしまう。
もしも今の家に生まれていなかったら、
もしもΩでなかったら、
もしも誰かがこの状況を変えてくれるとしたら、