積もるのは嘘と気持ちと

どんころ

文字の大きさ
3 / 51

3

しおりを挟む
αの転校生が来てから約1週間。
彼は最初みんなが懸念していたような問題児ではなかった。
賢く、穏やかで優しい。
αはあまり人格的に優れることはないが、彼は普通のαとは違った。
彼を中心に学校全体が優しい空気に包まれているような、そんな感覚すら覚えてしまうほど。

「今日ゴミ捨て当番だったんだけど、途中で相宮くんに会って変わってもらっちゃったー!」
「さすが相宮くん!いつだって優しいよね。
この間私もーーーー」

出来るだけ見ないようにしていても、耳が勝手に彼の情報を拾ってしまう。
少しでも気を抜くと目だって彼の方に向いてしまう。

こっちを見て。
早く迎えに来て。
あなたは僕の運命だから…

思わず見つめすぎて目が合ってしまって我に返ったのは一度や二度ではない。

その度にダメだと自分に言い聞かせる。
彼は将来有望な人で僕なんか眼中にない。
そもそもβとして認識されている。
男同士の恋愛が普通なのはどちらかがΩの場合だ。

胸がぎゅっと苦しくなり、首の後ろあたりに手が伸びる。
そこには項を守る首輪はないけれど、数え切れないほどの引っかき傷があった。
彼と出会ってから無意識にかいてしまっているのだ。
項からフェロモンを出したい本能が薬と戦っているのだろうか。
そう思うとこの傷すら何か愛おしいもののように感じられるのは末期だろうか。

Ωは項をαに噛まれると番関係になってしまうため、そこを護る防護具として首輪をつけるのが一般的だ。
項から出るフェロモンは噛まれるとそのαにしか作用しなくなり、誰彼構わず誘惑することはなくなる。
但し、そのαから愛情をもらえなかった場合の行く末は厳しい。確実に命を蝕み、短命で人生を終えるという。
僕も彼に愛されないのに、どうしようもなく求めてしまっているのが体に負担になっているのだと思うが、気持ちを抑えきれない。

彼は僕のことを何も知らないのに。



気づいて

ー気づかないで、僕は彼の邪魔にしかならない

僕はここだよ

ー気づいたところであと3ヶ月もないでしょ

わかっているから早く、

ーダメだよ 彼はきっと優秀なα 巻き込んではいけない



自分の中で気持ちがどちらに傾いていいのかわからず絡まっていく。

ただどうしようもなく彼に惹かれてしまっている。


せめて貴方がクズなαだったら良かったのに。
こんなに身も心も惹かれてしまっているなんて…本能には抗えない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

起きたらオメガバースの世界になっていました

さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。 しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...