積もるのは嘘と気持ちと

どんころ

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あっという間に蓮くんの帰る時間が来て、名残惜しそうにしながらも帰っていった。

帰って行ってしまったせいか、夜のせいか分からないが、寒くなって上着を一枚羽織った。

夜ご飯を食べてお風呂に入り、寝ようとしたところでそういえば連絡先を交換したなと思い出して携帯を探す。

小さなローテーブルの上に置きっぱなしになっているのを見つけて携帯を手に取ると、蓮くんに入れてもらったアプリの通知が来ていた。

アプリを開くと、
今日は冷えるみたいだからあたたくして寝てね。
というメッセージと、可愛い猫がおやすみと言っているスタンプが送られてきていた。

今までこういうメッセージアプリでやり取りする友人もいなかったし、家族とはメールか電話でしかやりとりがなかったため、嬉しくて携帯をぎゅっと握りしめた。
 
なんども消したり打ったりして結局、

連絡ありがとう。
おやすみなさい。

の2行だけを送った。

携帯で蓮くんといつでも連絡が取れると思うと頬が勝手に緩んでしまう。

いつもは置きっ放しの携帯だけど、今日は離しがたくてベッドまで持ってきてしまった。



ピピピッ ピピピッ

いつも通り目覚まし時計で目が覚めた僕はベッドの上に置いてある携帯を見つけた。

昨日は携帯を持ったまま寝てしまったんだなぁと思いながら、見ると通知が一件入っていた。

明日朝迎えに行くから一緒に行こうと書いてあるのを見て、慌てて支度を始めた。

髪の毛ハネたりしてないかなと珍しく鏡を見たりしているとあっという間に時間が過ぎて、インターフォンが鳴った。

慌てて荷物を持ち玄関の方へ急いでドアを開けると、やっぱりそこには蓮くんがいた。

「おはようっ」
「おはよ。ちゃんと確認してからドア開けた?気をつけないと危ないよ?」
急いででてきたのがばれて、そう諭された。

2人で歩き始めると、蓮くんがすっと手をつないでくれる。
嬉しいけどドキドキして地面ばかり見て歩いてしまう。

「澪、今週の土曜日は何か予定ある?」
「?ないよ?」
「じゃあ、デートしよっか。」
「ぇ…!」
驚いて俯いていた顔を上げて蓮くんの顔を見たら、ふわりと微笑んでくれた。
「どこか行きたいところある?」
デートなんて初めてで、どこに行くのが普通かわからない…どうしようと頭の中でぐるぐる考えていると、
「ないなら俺が澪を連れて行きたいところがあるから一緒に来てくれる?」
と助け舟を出してくれた。
「うん!」

デートなんてそんなことを体験できる日が来るなんて思ってなかった…嬉しい。
嬉しい気持ちが伝わるといいなと思いながらぎゅっと繋いでいた手を握った。

学校へ着くといつもより視線を感じる。
学校の人気者が1人の人とずっと一緒にいたらそりゃ気になるよね…
教室についてもずっと繋いだままの僕達に、クラスメイトの誰かがしびれを切らして話しかけてきた。
「えっと、2人はその、」
「付き合ってるよ。」
そう蓮くんが答えた瞬間、クラス中がざわざわした。

人気者が付き合ってるのが同性のβなんて確かに腑に落ちないか。
どこか他人事のようにも思えるのは、タイムリミットがあってこの状況が永遠と続くわけではないことがわかっているからかな。

どうやって交渉したのかこの後蓮くんは昨日まで座っていた席ではなく僕の隣で授業を受け、一緒にお昼ご飯を食べた。
蓮くんのことだから誰か友達が話しかけに来るかと思っていたけど、意外と誰も僕たちに近寄って来ず、蓮くんは僕にべったりのまま1日を終えた。
蓮くんのフェロモンがずっと隣にあることは僕にすごく安心感を与えてくれて、今まで空いていた隙間が満たされていく様だった。
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