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蓮side2
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もうここにいる意味はないと思いながらも、もしかしたら澪が学校に忘れた荷物を取りに来るんじゃないかとか、何か連絡が入るかもしれないと思うと国立高校に戻ることはできなかった。
澪が居なくなって1週間ほどだった時、父さんから珍しく電話がかかってきた。
「もしもし。」
「蓮、澪音くんのことだけど、調べるのがちょっと難しい。」
「え。」
「できるとこまではやったけど、今あの子は日本の元居た家にいることしか分からない。それ以上の調査はできない。」
「…そんな…もうすぐ海外に行っちゃうのに!」
「………蓮に覚悟があるならもう一個だけ方法があって、父さんの実家にお前が入る形なら多分じいさんが手を貸してくれると思う。但し、おそらく家に入ったら、子孫は望まれる。それだけは条件だ。」
「え、ちょっと待って?父さんの方におじいさん居たの?」
「当たり前だ。親がいなけりゃ子は産まれん。」
「そうじゃなくて…」
「で、どうする?その子がちゃんと幸せかどうか確かめたところで、他のΩか女の子と結婚しなければいけないよ?」
「行く…俺、養子になる。」
悩む間も無く答えていた。
澪と一緒にいられないのはどっちを取っても変わらないなら、あの子が幸せかどうかだけ確かめたい。
それが俺がしてあげられるただ一つのことだと思った。
あのお粥を作って食べさせた時の幸せそうな笑顔で過ごしているならなんだっていい。
ただ、あの物言いたげな目が脳裏に焼き付いて離れない。
どうか助けて、見捨てないでと言っている気がしてならない。
「蓮、そんな簡単に決めることじゃない。父さんだって、色々もめてこじれて無理やり飛び出してきたようなもんだ。そんな所で1人でやっていけるか?」
「うん。俺、澪のためならなんだってするって約束したから。幸せになるまで見届けたい。そうじゃないといつまでたっても、この気持ちが成仏できないんだ。万が一困ってたら手を貸すくらいは許されるよね?」
「あぁ。わかった。今週の土日空いてるか?早く済ませた方が良いだろう?」
「空いてるよ。」
「土曜日の朝できるだけ早くこっちに来てくれ。家から一緒に向かおう。」
ソワソワしながら平日を送り、やっと土曜の朝を迎えた。
父さんの指示通りちょっといつもよりかっちり目の私服を着て始発の電車に乗り込んだ。
実家についてからは父さんの運転でおじいさんの家に向かった。
ーー俺は平凡な家庭に生まれた突然変異的αだと思っていたらどうやら違うらしい。
父さんの実家は古くから残るα名家の1つで、秋雨製薬という俺でも聞いたことのある薬品メーカーも経営する秋雨家だった。
去年αだった父さんの弟が亡くなってからどこから調べたのか、ずっと俺を養子に欲しい、もしくは家族ごとでもいいから来てくれないかと連絡が入っていたそう。
父さんは実家にいい思い出がないから断り続けていたが、俺の事情を聞いて、実家の力を使えばどうにかなりそうだと思ってこの話を提案したみたいだ。
「父さんはどうして家を出ることになったの?」
「まぁ元々βだからという扱いは受けてきたけど、実力さえつければ認められるとその時は信じてた。でもどれだけ努力して成績を上げても認められなかった。どこかでいつかは認めてくれるとずっと信じていたけど、就職先を考える頃、母さんと付き合っているのを知っているのに他の見合いの話が既に出ててね。もうここにはいられないと思ったよ。就職先が決まって働く頃に家を出て、それからずっと帰っていないよ。」
「弟さんは結婚は?」
「してないよ。最後までじいさんのいいなりにはならないと突っぱねていたよ。」
「亡くなったのは…?」
「αは頑丈だと言われているけど、あの子はもともと心臓が強くなくてね。無理が祟ったんじゃないかな。頼る先になれなくて少し後悔しているところもあるんだ。」
「そうなんだ…今日手を合わせられるといいね。」
「そうだな。」
そんな話をしながら着いたのは大きな門の前だった。
澪が居なくなって1週間ほどだった時、父さんから珍しく電話がかかってきた。
「もしもし。」
「蓮、澪音くんのことだけど、調べるのがちょっと難しい。」
「え。」
「できるとこまではやったけど、今あの子は日本の元居た家にいることしか分からない。それ以上の調査はできない。」
「…そんな…もうすぐ海外に行っちゃうのに!」
「………蓮に覚悟があるならもう一個だけ方法があって、父さんの実家にお前が入る形なら多分じいさんが手を貸してくれると思う。但し、おそらく家に入ったら、子孫は望まれる。それだけは条件だ。」
「え、ちょっと待って?父さんの方におじいさん居たの?」
「当たり前だ。親がいなけりゃ子は産まれん。」
「そうじゃなくて…」
「で、どうする?その子がちゃんと幸せかどうか確かめたところで、他のΩか女の子と結婚しなければいけないよ?」
「行く…俺、養子になる。」
悩む間も無く答えていた。
澪と一緒にいられないのはどっちを取っても変わらないなら、あの子が幸せかどうかだけ確かめたい。
それが俺がしてあげられるただ一つのことだと思った。
あのお粥を作って食べさせた時の幸せそうな笑顔で過ごしているならなんだっていい。
ただ、あの物言いたげな目が脳裏に焼き付いて離れない。
どうか助けて、見捨てないでと言っている気がしてならない。
「蓮、そんな簡単に決めることじゃない。父さんだって、色々もめてこじれて無理やり飛び出してきたようなもんだ。そんな所で1人でやっていけるか?」
「うん。俺、澪のためならなんだってするって約束したから。幸せになるまで見届けたい。そうじゃないといつまでたっても、この気持ちが成仏できないんだ。万が一困ってたら手を貸すくらいは許されるよね?」
「あぁ。わかった。今週の土日空いてるか?早く済ませた方が良いだろう?」
「空いてるよ。」
「土曜日の朝できるだけ早くこっちに来てくれ。家から一緒に向かおう。」
ソワソワしながら平日を送り、やっと土曜の朝を迎えた。
父さんの指示通りちょっといつもよりかっちり目の私服を着て始発の電車に乗り込んだ。
実家についてからは父さんの運転でおじいさんの家に向かった。
ーー俺は平凡な家庭に生まれた突然変異的αだと思っていたらどうやら違うらしい。
父さんの実家は古くから残るα名家の1つで、秋雨製薬という俺でも聞いたことのある薬品メーカーも経営する秋雨家だった。
去年αだった父さんの弟が亡くなってからどこから調べたのか、ずっと俺を養子に欲しい、もしくは家族ごとでもいいから来てくれないかと連絡が入っていたそう。
父さんは実家にいい思い出がないから断り続けていたが、俺の事情を聞いて、実家の力を使えばどうにかなりそうだと思ってこの話を提案したみたいだ。
「父さんはどうして家を出ることになったの?」
「まぁ元々βだからという扱いは受けてきたけど、実力さえつければ認められるとその時は信じてた。でもどれだけ努力して成績を上げても認められなかった。どこかでいつかは認めてくれるとずっと信じていたけど、就職先を考える頃、母さんと付き合っているのを知っているのに他の見合いの話が既に出ててね。もうここにはいられないと思ったよ。就職先が決まって働く頃に家を出て、それからずっと帰っていないよ。」
「弟さんは結婚は?」
「してないよ。最後までじいさんのいいなりにはならないと突っぱねていたよ。」
「亡くなったのは…?」
「αは頑丈だと言われているけど、あの子はもともと心臓が強くなくてね。無理が祟ったんじゃないかな。頼る先になれなくて少し後悔しているところもあるんだ。」
「そうなんだ…今日手を合わせられるといいね。」
「そうだな。」
そんな話をしながら着いたのは大きな門の前だった。
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