積もるのは嘘と気持ちと

どんころ

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蓮side5

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広い門から車が入っていくと、玄関前に何人かの人影が見えた。

澪の体を抱きあげて車から降りると、
「「蓮!」」
と両親の声がした。
近づいていくと、両親とおじいさんともう1人30代くらいの男の人がもう1人いるのが分かった。
澪を早く診てもらいたくて口を開こうとしたら、
「お前の部屋にベッドもう一台運んでもらったからそこに寝かせてあげなさい。」
とおじいさんに言われたので澪をそこへ運んだ。

もう1人いた男の人は医師だったようで、澪を診てくれている間、俺は部屋の外で3人に事情を説明しようとした。
「蓮、とりあえず落ち着きなさい。威圧フェロモンが四方八方に飛び散っておる。智徳はまだしも瞳さんは気分の良いものではないから、まずはそれを収めなさい。」
「澪音くんはあのお医者さんに任せておけば大丈夫だから、落ち着いて。大丈夫。」
おじいさんと父さんに言われて大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせる。



「…少し収まってきたな。蓮の部屋にお茶を運ばせよう。その子が視界に入っていた方が蓮も安心するだろう。」
とおじいさんが言ってくれ、みんなで部屋の中に入ると、もう診察と処置は終わったようだった。
「何か非合法の薬を使われていたような感じがありますが、採血してみないとどういう物を使われていたか分かりません。今はとりあえず疲労で眠っている様子ですが、フェロモン異常を起こしているので、一度専門医に診てもらった方がいいと思います。」
Ωは繊細な性故に今はΩ専門の医者に診てもらうのが一般的だ。フェロモンが精神まで影響を及ぼすため、内科の医師では診察が難しいからだ。

「…つまり澪はΩということですか?」
「恐らく。採血をしていないので、確定診断はできませんが、首に防護具も付けていますし、お腹が痩せていたので触診で子宮らしきものの確認ができました。宜しければ同じ病院のΩ専門医を明日派遣させましょうか?」
「お願いしよう。」
「わかりました。ひとまず点滴入れておきましたが、起きてご飯が食べれるようでしたら、この安定剤だけ飲ませてあげてください。では私はこれで失礼させていただきます。」
専門医をおじいさんが頼んでくれて、医師は帰って行った。


「それでどうしてこんなことに?」
「…連れて帰って来ちゃったのは、こんな顔をみたらもう無意識だったんたけど、澪のお兄さんにも助けてあげてと言われたんだ。」
「どういうこと?」
母さんが眉間にシワを寄せて聞いてくる。

「なぜ、助けてと言ったかはわからないけど、異様な感じのパーティだった。男のαばかりで、年配の男に支えられながら澪が会場に来て、顔色も悪くて体が震えてた。おかしいって思ったら気がついたら澪を奪って外に出てたんだ。…俺、誘拐で捕まる?」
「澪音くんが意思表示できれば大丈夫だと思うけど…向こうも澪音くんに対して、やましいことしてたような感じだから堂々と警察には行けないだろう。」
父さんにそう言われて少しホッとした。

「わしからも手を回そう。お兄さんに連絡を取った方が丸く収まりそうだな?」
「あ、そういえば、」
澪に駆け寄る時、お兄さんに何かポケットに入れられた気がすると思い、上着の右ポケットを漁る。
取り出すと、携帯番号の書いてある紙の切れ端だった。
「多分お兄さんの連絡先、これだ。自分で一度かけてみるよ。」
急におじいさんが電話をしても、誰?ってなるかもしれないし、澪のことも聞きたい。

緊張しながら携帯で、電話をかける。
「はい。」
数コールで電話がつながった。
「秋雨ですけど、すみません急に。」
「!よかった、電話番号わかってくれて!無事ですか?」
「こちらは。澪も今眠っています。」
「あぁ本当に良かった。本当に申し訳ないのですが、少しご協力頂けませんか?」
「できることなら。そちらは今…」
「父たちも分が悪いから警察にも行けないし、さらわれたことを公表しない方が傷口が浅くていいという話になった様です。裏側から手を回そうとするかもしれませんが…秋雨家に敵うような立場ではないので恐らく大丈夫かと思います。念の為用心してください。明日そちらに出向いてもよろしいですか?相談したいことがあります。」
「わかりました。」
「ではまた連絡します。」

電話を切って、内容を伝えると、3人とも明日の話し合いに同席すると言う。
待ち合わせの場所まで運転手さんが迎えに行って、客間で打ち合わせすればいいという話になり、それぞれ部屋に帰って行った。
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