24 / 51
蓮side5
しおりを挟む
広い門から車が入っていくと、玄関前に何人かの人影が見えた。
澪の体を抱きあげて車から降りると、
「「蓮!」」
と両親の声がした。
近づいていくと、両親とおじいさんともう1人30代くらいの男の人がもう1人いるのが分かった。
澪を早く診てもらいたくて口を開こうとしたら、
「お前の部屋にベッドもう一台運んでもらったからそこに寝かせてあげなさい。」
とおじいさんに言われたので澪をそこへ運んだ。
もう1人いた男の人は医師だったようで、澪を診てくれている間、俺は部屋の外で3人に事情を説明しようとした。
「蓮、とりあえず落ち着きなさい。威圧フェロモンが四方八方に飛び散っておる。智徳はまだしも瞳さんは気分の良いものではないから、まずはそれを収めなさい。」
「澪音くんはあのお医者さんに任せておけば大丈夫だから、落ち着いて。大丈夫。」
おじいさんと父さんに言われて大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせる。
「…少し収まってきたな。蓮の部屋にお茶を運ばせよう。その子が視界に入っていた方が蓮も安心するだろう。」
とおじいさんが言ってくれ、みんなで部屋の中に入ると、もう診察と処置は終わったようだった。
「何か非合法の薬を使われていたような感じがありますが、採血してみないとどういう物を使われていたか分かりません。今はとりあえず疲労で眠っている様子ですが、フェロモン異常を起こしているので、一度専門医に診てもらった方がいいと思います。」
Ωは繊細な性故に今はΩ専門の医者に診てもらうのが一般的だ。フェロモンが精神まで影響を及ぼすため、内科の医師では診察が難しいからだ。
「…つまり澪はΩということですか?」
「恐らく。採血をしていないので、確定診断はできませんが、首に防護具も付けていますし、お腹が痩せていたので触診で子宮らしきものの確認ができました。宜しければ同じ病院のΩ専門医を明日派遣させましょうか?」
「お願いしよう。」
「わかりました。ひとまず点滴入れておきましたが、起きてご飯が食べれるようでしたら、この安定剤だけ飲ませてあげてください。では私はこれで失礼させていただきます。」
専門医をおじいさんが頼んでくれて、医師は帰って行った。
「それでどうしてこんなことに?」
「…連れて帰って来ちゃったのは、こんな顔をみたらもう無意識だったんたけど、澪のお兄さんにも助けてあげてと言われたんだ。」
「どういうこと?」
母さんが眉間にシワを寄せて聞いてくる。
「なぜ、助けてと言ったかはわからないけど、異様な感じのパーティだった。男のαばかりで、年配の男に支えられながら澪が会場に来て、顔色も悪くて体が震えてた。おかしいって思ったら気がついたら澪を奪って外に出てたんだ。…俺、誘拐で捕まる?」
「澪音くんが意思表示できれば大丈夫だと思うけど…向こうも澪音くんに対して、やましいことしてたような感じだから堂々と警察には行けないだろう。」
父さんにそう言われて少しホッとした。
「わしからも手を回そう。お兄さんに連絡を取った方が丸く収まりそうだな?」
「あ、そういえば、」
澪に駆け寄る時、お兄さんに何かポケットに入れられた気がすると思い、上着の右ポケットを漁る。
取り出すと、携帯番号の書いてある紙の切れ端だった。
「多分お兄さんの連絡先、これだ。自分で一度かけてみるよ。」
急におじいさんが電話をしても、誰?ってなるかもしれないし、澪のことも聞きたい。
緊張しながら携帯で、電話をかける。
「はい。」
数コールで電話がつながった。
「秋雨ですけど、すみません急に。」
「!よかった、電話番号わかってくれて!無事ですか?」
「こちらは。澪も今眠っています。」
「あぁ本当に良かった。本当に申し訳ないのですが、少しご協力頂けませんか?」
「できることなら。そちらは今…」
「父たちも分が悪いから警察にも行けないし、さらわれたことを公表しない方が傷口が浅くていいという話になった様です。裏側から手を回そうとするかもしれませんが…秋雨家に敵うような立場ではないので恐らく大丈夫かと思います。念の為用心してください。明日そちらに出向いてもよろしいですか?相談したいことがあります。」
「わかりました。」
「ではまた連絡します。」
電話を切って、内容を伝えると、3人とも明日の話し合いに同席すると言う。
待ち合わせの場所まで運転手さんが迎えに行って、客間で打ち合わせすればいいという話になり、それぞれ部屋に帰って行った。
澪の体を抱きあげて車から降りると、
「「蓮!」」
と両親の声がした。
近づいていくと、両親とおじいさんともう1人30代くらいの男の人がもう1人いるのが分かった。
澪を早く診てもらいたくて口を開こうとしたら、
「お前の部屋にベッドもう一台運んでもらったからそこに寝かせてあげなさい。」
とおじいさんに言われたので澪をそこへ運んだ。
もう1人いた男の人は医師だったようで、澪を診てくれている間、俺は部屋の外で3人に事情を説明しようとした。
「蓮、とりあえず落ち着きなさい。威圧フェロモンが四方八方に飛び散っておる。智徳はまだしも瞳さんは気分の良いものではないから、まずはそれを収めなさい。」
「澪音くんはあのお医者さんに任せておけば大丈夫だから、落ち着いて。大丈夫。」
おじいさんと父さんに言われて大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせる。
「…少し収まってきたな。蓮の部屋にお茶を運ばせよう。その子が視界に入っていた方が蓮も安心するだろう。」
とおじいさんが言ってくれ、みんなで部屋の中に入ると、もう診察と処置は終わったようだった。
「何か非合法の薬を使われていたような感じがありますが、採血してみないとどういう物を使われていたか分かりません。今はとりあえず疲労で眠っている様子ですが、フェロモン異常を起こしているので、一度専門医に診てもらった方がいいと思います。」
Ωは繊細な性故に今はΩ専門の医者に診てもらうのが一般的だ。フェロモンが精神まで影響を及ぼすため、内科の医師では診察が難しいからだ。
「…つまり澪はΩということですか?」
「恐らく。採血をしていないので、確定診断はできませんが、首に防護具も付けていますし、お腹が痩せていたので触診で子宮らしきものの確認ができました。宜しければ同じ病院のΩ専門医を明日派遣させましょうか?」
「お願いしよう。」
「わかりました。ひとまず点滴入れておきましたが、起きてご飯が食べれるようでしたら、この安定剤だけ飲ませてあげてください。では私はこれで失礼させていただきます。」
専門医をおじいさんが頼んでくれて、医師は帰って行った。
「それでどうしてこんなことに?」
「…連れて帰って来ちゃったのは、こんな顔をみたらもう無意識だったんたけど、澪のお兄さんにも助けてあげてと言われたんだ。」
「どういうこと?」
母さんが眉間にシワを寄せて聞いてくる。
「なぜ、助けてと言ったかはわからないけど、異様な感じのパーティだった。男のαばかりで、年配の男に支えられながら澪が会場に来て、顔色も悪くて体が震えてた。おかしいって思ったら気がついたら澪を奪って外に出てたんだ。…俺、誘拐で捕まる?」
「澪音くんが意思表示できれば大丈夫だと思うけど…向こうも澪音くんに対して、やましいことしてたような感じだから堂々と警察には行けないだろう。」
父さんにそう言われて少しホッとした。
「わしからも手を回そう。お兄さんに連絡を取った方が丸く収まりそうだな?」
「あ、そういえば、」
澪に駆け寄る時、お兄さんに何かポケットに入れられた気がすると思い、上着の右ポケットを漁る。
取り出すと、携帯番号の書いてある紙の切れ端だった。
「多分お兄さんの連絡先、これだ。自分で一度かけてみるよ。」
急におじいさんが電話をしても、誰?ってなるかもしれないし、澪のことも聞きたい。
緊張しながら携帯で、電話をかける。
「はい。」
数コールで電話がつながった。
「秋雨ですけど、すみません急に。」
「!よかった、電話番号わかってくれて!無事ですか?」
「こちらは。澪も今眠っています。」
「あぁ本当に良かった。本当に申し訳ないのですが、少しご協力頂けませんか?」
「できることなら。そちらは今…」
「父たちも分が悪いから警察にも行けないし、さらわれたことを公表しない方が傷口が浅くていいという話になった様です。裏側から手を回そうとするかもしれませんが…秋雨家に敵うような立場ではないので恐らく大丈夫かと思います。念の為用心してください。明日そちらに出向いてもよろしいですか?相談したいことがあります。」
「わかりました。」
「ではまた連絡します。」
電話を切って、内容を伝えると、3人とも明日の話し合いに同席すると言う。
待ち合わせの場所まで運転手さんが迎えに行って、客間で打ち合わせすればいいという話になり、それぞれ部屋に帰って行った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
起きたらオメガバースの世界になっていました
さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。
しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる