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蓮side7
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迎えの車が来て、母さんと杏が付き添って行ってくれた。
父さんとおじいさんが話があるみたいでリビングのソファにみんなで腰掛けた。
父さんから口を開いた。
「診断書は今日中にできるみたいだから、このままΩ保護センターに連絡して持っていけば、家族から引き離す方向で進められると思う。もう18になっている様だから、施設には入れないけど、家族と離れて暮らすためのサポートは保護センターがしてくれると思うよ。…じいさんはもう結婚相手とかどうでもいいらしいから、あの子と一緒になっても良いそうだ。蓮はどうしたい?もちろん彼の意見も聞かないといけないけどね。」
本当に自分の希望を言ってもいいのかとついおじいさんの顔を伺う。
「……実は昔、一度だけ運命に会ったことがあってな。もう随分と昔のことなのに、未だに鮮明にその顔が思い浮かぶくらい衝撃的で。出会い頭にヒートを起こした相手に、駆け寄ろうとしたところ家の警備に数人人がかりで捕まえられて、気がついたら家で点滴をされた寝ておったわ。多分2度と会わないように対策を取ったんだろう、その後はもう話出んかった。若くて力もなくて何もできなかった後悔をお前達を見ていると思い出して…。言われるがままの方法で家と会社を守らなければいけないと思っておったが、みんなが去っていって間違いに気づいたよ。利益とか伝統だとかそういうものは本当はわしにとってはどうでもいいことだったんだ。だから、お前はしたいようにしなさい。できる限りのことをしてあげたいと思っておる。」
ここに来る時に、澪の隣にいれなくてもいいからあの子のためにと思っていたけど、じいさんまでそんなことを言ってくれると、今まで覚悟していたものが全て吹っ飛んで、
「俺、澪と一緒にいたい。」
と答えていた。
「今すぐとはいかないのは分かってるけど、いずれは結婚したい。」
「わかった。あとはお兄さんの動向次第だけど、年齢的には結婚はできるから、そのままこちらが引き取る方向で籍を入れてしまった方がいいかもしれないな。」
父さんの思わぬ言葉に思わず驚く。
「まだ俺学生だけど、籍なんて入れて大丈夫なの?」
「澪音くんの籍をそのままにしておくと後々厄介だから、けりをつけておいた方がいいとじいさんと昨日相談してそういう結論になったんだ。蓮、これからも澪音くんのために生きる覚悟はあるな?」
「もちろん!澪のためなら、なんだってする。」
「その覚悟があるならいい。…少し休んできなさい。澪音くんは何かあれば母さんが連絡くれるだろうし、お兄さんが来るまで部屋で寝てきなさい。お兄さんから連絡があったら出ておくから。」
父さんにそう諭されて携帯を渡して部屋に戻り、ベッドに転がった。
目を閉じると疲れていたのかすーっと眠りに入った。
ノック音に目を覚ますと、父さんが部屋に入ってくるところだった。
「今運転手が迎えに行ってくれたから、もうあと少しで着くと思うよ。準備して降りておいで。」
そういうと部屋から出て行った。
乱れた髪の毛を整え、客間へ向かう。
入ると父さんとおじいさんが並んでソファに座っていたのでその隣へと腰掛けた。
2人も気を張っているのか会話はなく何処か張り詰めた空気の中、ノック音が響いた。
「どうぞ。」
おじいさんが答えるとお兄さんが入ってきた。
「失礼します。はじめまして、鈴原澪音の兄の壮一です。この度はご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
「君が悪いわけではなかろうに。どうぞお掛けになって。」
おじいさんが声をかけるとお兄さんも腰を下ろした。
「あの、澪音は今…?」
「病院です。あれから目を覚まさなくて。…う澪は家で何か薬を飲んでいたんでしょうか。先生が採血して調べてくれていますが、なかなか目を覚まさないので心配なんです。」
「…何からお話ししたら良いのか…。」
お兄さんは時折目を潤ませながら澪音のことを話してくれた。
12歳の時採血結果で既にΩと出ていたが父親がそれを伏せてβとして高校に通わせていたこと、
18歳まではひと月に一回ヒートを起こさせないようにする注射を打っていて、今はヒートの誘発する薬を飲んだりしていたが詳しい内容まではわからないこと、
ずっと助けてあげたかったけれど、自分に力がなく、何もすることができなかったこと…
一度澪が俺のフェロモンの纏っているのを嗅いだことがあったから、昨日会った時にすぐ、澪の助けになるかもしれないと俺に声をかけたそうだ。
「見ず知らずの家に助けを求めて申し訳ないです。できる範囲の証拠を集めてはきてはいるのですが、訴えたり警察に持って行ったりする事で詳細が世間に知れるとなるとあの子の気持ちや今後が心配で…相談先もなく途方に暮れておりました。」
「我々は澪音くんを引き取りたいと考えています。」
突然の父さんの意見にお兄さんはがばっと顔を上げると驚いた様子だった。
それから少し悲しそうに眉をハの字にした。
「大変ありがたい申し出で、伝えにくいのですが、澪音は、、、父に男の相手をさせられていました。…それでも…」
「分かっています。それでもあの子は俺の運命なんです。必ず幸せにしたい。できれば自分の手で。」
言いにくそうに澱むお兄さんの言葉を遮って答える。
「本当ですか?」
俺たちの顔を潤んだ目で見たお兄さんは、本気とわかってくれたようで、
「、ありがとうございます!本当に何とお礼を言ったら良いのか分かりません。」
と頭を下げた。
「顔を上げてください。私たちは大したことはしていません。それで、証拠というのは?」
「はい。まず、こちらが分かりにくいですが、注射を打たれている時の澪とその医者です。こちらが顔写真です。名前がちょっとわからなかったのですが、父とは古くからの付き合いだと思います。あとは………この証拠は抑えたのですが、出さない方がいいのか迷っているものです。」
お兄さんの出し渋る様子で大体どんなものか想像がついたのか、父さんが、俺に席を外すよう伝えてきた。
見たら冷静ではいられないだろうと言う判断だった。
運転手さんに送ってもらって澪の顔でも見て行きなさいと言われ、鋭い眼光に逆らえずそのまま従った。
父さんとお兄さんで証拠の整理と、そのまま警察に提出したり手続きを取ると言っていた。
おじいさんは澪をこちらに迎える手続きを進めてくれるらしい。
そんな中何もせずに澪の顔を見に行くなんて情けなかったが、逆らえなかった。
父さんとおじいさんが話があるみたいでリビングのソファにみんなで腰掛けた。
父さんから口を開いた。
「診断書は今日中にできるみたいだから、このままΩ保護センターに連絡して持っていけば、家族から引き離す方向で進められると思う。もう18になっている様だから、施設には入れないけど、家族と離れて暮らすためのサポートは保護センターがしてくれると思うよ。…じいさんはもう結婚相手とかどうでもいいらしいから、あの子と一緒になっても良いそうだ。蓮はどうしたい?もちろん彼の意見も聞かないといけないけどね。」
本当に自分の希望を言ってもいいのかとついおじいさんの顔を伺う。
「……実は昔、一度だけ運命に会ったことがあってな。もう随分と昔のことなのに、未だに鮮明にその顔が思い浮かぶくらい衝撃的で。出会い頭にヒートを起こした相手に、駆け寄ろうとしたところ家の警備に数人人がかりで捕まえられて、気がついたら家で点滴をされた寝ておったわ。多分2度と会わないように対策を取ったんだろう、その後はもう話出んかった。若くて力もなくて何もできなかった後悔をお前達を見ていると思い出して…。言われるがままの方法で家と会社を守らなければいけないと思っておったが、みんなが去っていって間違いに気づいたよ。利益とか伝統だとかそういうものは本当はわしにとってはどうでもいいことだったんだ。だから、お前はしたいようにしなさい。できる限りのことをしてあげたいと思っておる。」
ここに来る時に、澪の隣にいれなくてもいいからあの子のためにと思っていたけど、じいさんまでそんなことを言ってくれると、今まで覚悟していたものが全て吹っ飛んで、
「俺、澪と一緒にいたい。」
と答えていた。
「今すぐとはいかないのは分かってるけど、いずれは結婚したい。」
「わかった。あとはお兄さんの動向次第だけど、年齢的には結婚はできるから、そのままこちらが引き取る方向で籍を入れてしまった方がいいかもしれないな。」
父さんの思わぬ言葉に思わず驚く。
「まだ俺学生だけど、籍なんて入れて大丈夫なの?」
「澪音くんの籍をそのままにしておくと後々厄介だから、けりをつけておいた方がいいとじいさんと昨日相談してそういう結論になったんだ。蓮、これからも澪音くんのために生きる覚悟はあるな?」
「もちろん!澪のためなら、なんだってする。」
「その覚悟があるならいい。…少し休んできなさい。澪音くんは何かあれば母さんが連絡くれるだろうし、お兄さんが来るまで部屋で寝てきなさい。お兄さんから連絡があったら出ておくから。」
父さんにそう諭されて携帯を渡して部屋に戻り、ベッドに転がった。
目を閉じると疲れていたのかすーっと眠りに入った。
ノック音に目を覚ますと、父さんが部屋に入ってくるところだった。
「今運転手が迎えに行ってくれたから、もうあと少しで着くと思うよ。準備して降りておいで。」
そういうと部屋から出て行った。
乱れた髪の毛を整え、客間へ向かう。
入ると父さんとおじいさんが並んでソファに座っていたのでその隣へと腰掛けた。
2人も気を張っているのか会話はなく何処か張り詰めた空気の中、ノック音が響いた。
「どうぞ。」
おじいさんが答えるとお兄さんが入ってきた。
「失礼します。はじめまして、鈴原澪音の兄の壮一です。この度はご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
「君が悪いわけではなかろうに。どうぞお掛けになって。」
おじいさんが声をかけるとお兄さんも腰を下ろした。
「あの、澪音は今…?」
「病院です。あれから目を覚まさなくて。…う澪は家で何か薬を飲んでいたんでしょうか。先生が採血して調べてくれていますが、なかなか目を覚まさないので心配なんです。」
「…何からお話ししたら良いのか…。」
お兄さんは時折目を潤ませながら澪音のことを話してくれた。
12歳の時採血結果で既にΩと出ていたが父親がそれを伏せてβとして高校に通わせていたこと、
18歳まではひと月に一回ヒートを起こさせないようにする注射を打っていて、今はヒートの誘発する薬を飲んだりしていたが詳しい内容まではわからないこと、
ずっと助けてあげたかったけれど、自分に力がなく、何もすることができなかったこと…
一度澪が俺のフェロモンの纏っているのを嗅いだことがあったから、昨日会った時にすぐ、澪の助けになるかもしれないと俺に声をかけたそうだ。
「見ず知らずの家に助けを求めて申し訳ないです。できる範囲の証拠を集めてはきてはいるのですが、訴えたり警察に持って行ったりする事で詳細が世間に知れるとなるとあの子の気持ちや今後が心配で…相談先もなく途方に暮れておりました。」
「我々は澪音くんを引き取りたいと考えています。」
突然の父さんの意見にお兄さんはがばっと顔を上げると驚いた様子だった。
それから少し悲しそうに眉をハの字にした。
「大変ありがたい申し出で、伝えにくいのですが、澪音は、、、父に男の相手をさせられていました。…それでも…」
「分かっています。それでもあの子は俺の運命なんです。必ず幸せにしたい。できれば自分の手で。」
言いにくそうに澱むお兄さんの言葉を遮って答える。
「本当ですか?」
俺たちの顔を潤んだ目で見たお兄さんは、本気とわかってくれたようで、
「、ありがとうございます!本当に何とお礼を言ったら良いのか分かりません。」
と頭を下げた。
「顔を上げてください。私たちは大したことはしていません。それで、証拠というのは?」
「はい。まず、こちらが分かりにくいですが、注射を打たれている時の澪とその医者です。こちらが顔写真です。名前がちょっとわからなかったのですが、父とは古くからの付き合いだと思います。あとは………この証拠は抑えたのですが、出さない方がいいのか迷っているものです。」
お兄さんの出し渋る様子で大体どんなものか想像がついたのか、父さんが、俺に席を外すよう伝えてきた。
見たら冷静ではいられないだろうと言う判断だった。
運転手さんに送ってもらって澪の顔でも見て行きなさいと言われ、鋭い眼光に逆らえずそのまま従った。
父さんとお兄さんで証拠の整理と、そのまま警察に提出したり手続きを取ると言っていた。
おじいさんは澪をこちらに迎える手続きを進めてくれるらしい。
そんな中何もせずに澪の顔を見に行くなんて情けなかったが、逆らえなかった。
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