33 / 51
蓮side14
しおりを挟む
「澪!!」
「澪音!!」
思わずベッドに乗り出すようにしながら名前を呼ぶと、ずっと焦点の合わなかった瞳が彷徨った。
数秒だったのか、数十秒だったのか、ゆっくりと目線が動き、ついに目が合った。
「澪!」
叫ぶように名前を呼ぶと、弱々しく微笑みを返された。
ゆっくりと口が開き、
「…れんくん。」
と、かすれて小さい声だったが確かに聞こえた。
言葉にならず、ただその痩せた体を抱きしめた。
「………おかゆさん、おいしい、ね?」
小さな声が聞こえることに胸がいっぱいになる。
「…っ、うん、うん。もう少し食べる?」
こくりと頷いたので体を離すと、膝から床に崩れ落ちるように泣いている壮一さんが目に入った。
澪にもそれが分かったようで、
「…おにいさま…。」
と呟いた。
「ごめん…ごめんねっ…」
壮一さんはそう絞り出すように言うと顔を手で覆った。
澪はずっと抱えていたハンカチから片手をゆっくり離し、そっと壮一さんの顔を覆う手に触れた。
壮一さんは驚いた顔をして、手を顔から離して澪の方を見た。
体は震えたりしていなくて、ゆっくりと言葉を発する。
「…ありがとう……めいわくばかり、、ごめんなさい。」
自分の手に触れている澪の手を壮一さんはそっと両手で包み直した。
もう壮一さんは言葉も出ず、涙だけがぽろぼろと溢れ落ちている。
その顔には深い安堵の表情が浮かんでいて、俺も穏やかな気持ちになる。
もう何も言葉は必要なかった。
きっと澪は何かも理解したことが何も言わずとも伝わってきて、嬉しい気持ちの昂りに3人で涙を流した。
先に我に返ったのは壮一さんで、先生も心配していたから電話をと教えてくれた。
電話をすると驚いた様子だったが、念のためもう一度今日様子を見に来るという。
俺が電話をしてる間に父さん母さんとおじいさんには壮一さんから連絡をしてくれた。
「澪音!!」
思わずベッドに乗り出すようにしながら名前を呼ぶと、ずっと焦点の合わなかった瞳が彷徨った。
数秒だったのか、数十秒だったのか、ゆっくりと目線が動き、ついに目が合った。
「澪!」
叫ぶように名前を呼ぶと、弱々しく微笑みを返された。
ゆっくりと口が開き、
「…れんくん。」
と、かすれて小さい声だったが確かに聞こえた。
言葉にならず、ただその痩せた体を抱きしめた。
「………おかゆさん、おいしい、ね?」
小さな声が聞こえることに胸がいっぱいになる。
「…っ、うん、うん。もう少し食べる?」
こくりと頷いたので体を離すと、膝から床に崩れ落ちるように泣いている壮一さんが目に入った。
澪にもそれが分かったようで、
「…おにいさま…。」
と呟いた。
「ごめん…ごめんねっ…」
壮一さんはそう絞り出すように言うと顔を手で覆った。
澪はずっと抱えていたハンカチから片手をゆっくり離し、そっと壮一さんの顔を覆う手に触れた。
壮一さんは驚いた顔をして、手を顔から離して澪の方を見た。
体は震えたりしていなくて、ゆっくりと言葉を発する。
「…ありがとう……めいわくばかり、、ごめんなさい。」
自分の手に触れている澪の手を壮一さんはそっと両手で包み直した。
もう壮一さんは言葉も出ず、涙だけがぽろぼろと溢れ落ちている。
その顔には深い安堵の表情が浮かんでいて、俺も穏やかな気持ちになる。
もう何も言葉は必要なかった。
きっと澪は何かも理解したことが何も言わずとも伝わってきて、嬉しい気持ちの昂りに3人で涙を流した。
先に我に返ったのは壮一さんで、先生も心配していたから電話をと教えてくれた。
電話をすると驚いた様子だったが、念のためもう一度今日様子を見に来るという。
俺が電話をしてる間に父さん母さんとおじいさんには壮一さんから連絡をしてくれた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
起きたらオメガバースの世界になっていました
さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。
しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる