積もるのは嘘と気持ちと

どんころ

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その日の学校は上の空で過ごした。
蓮くんに迎えにきてもらって家に帰ってもそのことばかりが頭をよぎって落ち着かない。
ヒートが来ないようなΩなんてどうやって生きていったらいいのだろう。
蓮くんと番になれないし、子供だって産めない。
でも…ヒートが来るのも怖い。
あの僕を飲み込んでいくような快楽に何もかも支配されてしまうのが怖い。

……蓮くんに嫌われてしまうのが怖い。

僕が上の空なのを蓮くんもおじいさんも心配して無理する事ないから辛かったら一回休みなさいと言ってくれるけれど、大丈夫と答えることしかできなかった。

ヒートが来てほしい、でも来てほしくない。相反する気持ちに押しつぶされて身動きが取れなくなった僕は次の日高熱を出した。

蓮くんは心配そうにしながらも僕がお願いだから行ってと言ったら、渋々大学に行った。
午前中に田中先生が往診に来てくれるようにおじいさんがお願いしてくれて、それまで横になって待つ。
熱は出ているが体のだるさはそこまでなく、それよりも先生に確認したい事の方が気になって、それどころではない。
結局転がるだけで、先生が来るまで眠れなかった。

「熱出ちゃったって?」
「はい。少し。」
「体は?だるい?」
「そんなにだるくないです。」
「そう。ちょっと胸の音聞かせてね。」
先生が聴診器を当てている間もあの話を切り出すタイミングを見計らう。
「はい、喉見るよ?あーして。……うん。鼻水とか咳は?」
「ないです。」
「そう。喉も綺麗だし、疲労かな?最近学校行き始めたから疲れたのかもしれないね。解熱剤出しておくから、無理しないよう休んでね。」
「はい。」
「じゃあまた何かあったら連絡し」
「先生、あの!」
帰ろうとする先生を引き止めなければと、失礼だけど
話の途中で割り込んだ。
「どうしたの?」
「僕…あれから発情期、来てないですけど、もうすぐ来ますか。」
「……ちょっと首筋で測ってもいいかな?」
そう言うと先生はパッド見たいな物を首に取り付けて、タブレットを見せてくれた。
「これが、今の君のフェロモン値。で、大体発情期じゃない時のΩのフェロモン値がこれくらい。澪音くんは、まだ発情期の来ていないΩの子のフェロモン値くらいしか出ていないの。回復してこの数値が上がってこれば、発情期が来るけど、…上がらなかったら、、来ることはないかな。」
「上げることは出来るのですか?」
「……性行為をすることで上がるとか、項を噛んでもらうと発情期が来るとか言われているけど、どれも科学的根拠はないんだ…。それにまだ回復したところだから、今もしこのまま発情期が来たら、体に負担がかかるから、もう少し落ち着いてからね。僕も治療法がないか探してみるから。」
「ありがとうございます。」
先生が治療法を探してくれると言ってくれて少し安心した。
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