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どのみちまだ体が回復していないからと考えると気が楽になって、発情期のことを考えずに過ごせるようになった。
学校生活も順調だった。
授業は一度習ったことのある範囲だからついていけるし、翠くん以外のクラスメイトの子とも少しずつ話せるようになってきた。
5月も末に近付いてきた頃、翠くんが朝から机に突っ伏していた。
そんな姿を見たことがなかったから驚いて声をかける。
「翠くん?どうしたの?大丈夫?」
「……みおんくん、、おはよう。…だいじょうぶだよ。」
「熱あるの?」
「ううん。ごめんね、ごごから、かえるね。たぶんもうすぐひーとくる。」
「もう帰った方がいいんじゃない?」
だるそうな翠くんを心配していたが、結局1時間目の授業中に迎えが来て帰って行った。
その日から1週間翠くんは学校に来なかった。
発情期明けに出てきた翠くんに、クラスメイトもその話題を出すこともなくいつも通り接している。
翠くんもいつも通り元気そうにしている。
ヒート辛くなかったのかな。
症状が軽い人も重い人もいると聞く。
もしかしたら軽い方だったのかなとか、どこでどうやって耐えていたのかなとか気になって授業が頭に入ってこなかった。
午前中の授業が終わって、いつも通り翠くんと教室でご飯を食べていると、僕たちの他に2人オメガの男の子が教室に残っていて翠くんに話しかけに来た。
「佐倉先輩1週間休みとってくれたのー?」
「うーん…休みだったのは5日だったかな。でも僕大体3日くらいで怠いけど身の回りのこととかはできるようになるし、今回はずっと周くんの家にいたからすごく満たされてた!」
「やっぱりパートナー居るとそんなに苦じゃないよね。」
「うん。薬も飲まなかったけど、向こうの家だとどこにいっても匂い染み付いてるから、幸せだったぁ!三郷はもう番になったんでしょ?どうなの?ヒートの症状軽くなるの?」
「いや、この前番になったばっかりで、それからまだ来てないから分からないや。ただ、噛んでもらう瞬間は全然痛くなくて、幸せだったのだけは確か!」
「番の儀式が痛くないって本当だったんだね。都市伝説かと思ってた。僕も早く番が欲しい。」
もう1人が羨ましそうに番が欲しいと話すと、三郷と呼ばれた男の子が嗜めるように話す。
「香田の場合は相手探しからじゃん。この前の誰だっけ…6組の人はどうしちゃったの?」
教室にαが居ないからか、Ω特有の話を3人がすごくオープンにしているのをつい耳を大きくして聞き入る。
「あぁ、坂野くんね。気がついたら別れてた?みたいな。」
「ええ!何で?」
「もともと接点もなかったし、会話が弾まなくてさぁ……あと、はっきりは言わなかったけど女の子が好きな感じだったから……ねぇ。」
「え!何それ、、だって告白してきたの、向こうって言ってなかった?」
翠くんが2人の馴れ初めを知っていたようで聞くと、香田くんが少し怒ったように口調を強めて同調する。
「そうなの!本当に、何なのって言いたくなるでしょ!?」
2人がうんうんと頷いているのを見るとそのままヒートアップして話し続ける。
「手を繋ぐくらいで終わったんだよ!キスも無理みたいな!そんなんなら告白しないでよって話!」
「ひどい。……じゃあこの前のヒートももしかして1人で?」
「そう!まぁ抑制剤飲めば何とか人工物で我慢できるくらいだし、マッチングとかあるけど、まだちょっと手を出すには抵抗あるしね…。2人が羨ましい。」
「中本が症状重くて病院の紹介のマッチング使ったって言ってたけど、相性良くてそのまま番になりそうって言ってたよ!ちゃんとしたところを選べば良い人と会えるかもしれないよ?」
翠くんが誰か他の子の話をする。普段僕と一緒に居てくれるけど、交友関係が広いみたいだ。
「そうなんだぁ。えーやってみようかなぁ。確か学校もマッチングサービスあったよね?」
「あったあった!先生から評価の高い人紹介してもらえるみたいだから登録したらいいじゃん。」
「そうしてみる!だってもう今年で卒業しちゃうし、高校の人と出会えるのは今のうちだもんね。」
三郷くんにも背中を押されて香田くんはマッチングサービスというのに登録することにする話になった。
学校生活も順調だった。
授業は一度習ったことのある範囲だからついていけるし、翠くん以外のクラスメイトの子とも少しずつ話せるようになってきた。
5月も末に近付いてきた頃、翠くんが朝から机に突っ伏していた。
そんな姿を見たことがなかったから驚いて声をかける。
「翠くん?どうしたの?大丈夫?」
「……みおんくん、、おはよう。…だいじょうぶだよ。」
「熱あるの?」
「ううん。ごめんね、ごごから、かえるね。たぶんもうすぐひーとくる。」
「もう帰った方がいいんじゃない?」
だるそうな翠くんを心配していたが、結局1時間目の授業中に迎えが来て帰って行った。
その日から1週間翠くんは学校に来なかった。
発情期明けに出てきた翠くんに、クラスメイトもその話題を出すこともなくいつも通り接している。
翠くんもいつも通り元気そうにしている。
ヒート辛くなかったのかな。
症状が軽い人も重い人もいると聞く。
もしかしたら軽い方だったのかなとか、どこでどうやって耐えていたのかなとか気になって授業が頭に入ってこなかった。
午前中の授業が終わって、いつも通り翠くんと教室でご飯を食べていると、僕たちの他に2人オメガの男の子が教室に残っていて翠くんに話しかけに来た。
「佐倉先輩1週間休みとってくれたのー?」
「うーん…休みだったのは5日だったかな。でも僕大体3日くらいで怠いけど身の回りのこととかはできるようになるし、今回はずっと周くんの家にいたからすごく満たされてた!」
「やっぱりパートナー居るとそんなに苦じゃないよね。」
「うん。薬も飲まなかったけど、向こうの家だとどこにいっても匂い染み付いてるから、幸せだったぁ!三郷はもう番になったんでしょ?どうなの?ヒートの症状軽くなるの?」
「いや、この前番になったばっかりで、それからまだ来てないから分からないや。ただ、噛んでもらう瞬間は全然痛くなくて、幸せだったのだけは確か!」
「番の儀式が痛くないって本当だったんだね。都市伝説かと思ってた。僕も早く番が欲しい。」
もう1人が羨ましそうに番が欲しいと話すと、三郷と呼ばれた男の子が嗜めるように話す。
「香田の場合は相手探しからじゃん。この前の誰だっけ…6組の人はどうしちゃったの?」
教室にαが居ないからか、Ω特有の話を3人がすごくオープンにしているのをつい耳を大きくして聞き入る。
「あぁ、坂野くんね。気がついたら別れてた?みたいな。」
「ええ!何で?」
「もともと接点もなかったし、会話が弾まなくてさぁ……あと、はっきりは言わなかったけど女の子が好きな感じだったから……ねぇ。」
「え!何それ、、だって告白してきたの、向こうって言ってなかった?」
翠くんが2人の馴れ初めを知っていたようで聞くと、香田くんが少し怒ったように口調を強めて同調する。
「そうなの!本当に、何なのって言いたくなるでしょ!?」
2人がうんうんと頷いているのを見るとそのままヒートアップして話し続ける。
「手を繋ぐくらいで終わったんだよ!キスも無理みたいな!そんなんなら告白しないでよって話!」
「ひどい。……じゃあこの前のヒートももしかして1人で?」
「そう!まぁ抑制剤飲めば何とか人工物で我慢できるくらいだし、マッチングとかあるけど、まだちょっと手を出すには抵抗あるしね…。2人が羨ましい。」
「中本が症状重くて病院の紹介のマッチング使ったって言ってたけど、相性良くてそのまま番になりそうって言ってたよ!ちゃんとしたところを選べば良い人と会えるかもしれないよ?」
翠くんが誰か他の子の話をする。普段僕と一緒に居てくれるけど、交友関係が広いみたいだ。
「そうなんだぁ。えーやってみようかなぁ。確か学校もマッチングサービスあったよね?」
「あったあった!先生から評価の高い人紹介してもらえるみたいだから登録したらいいじゃん。」
「そうしてみる!だってもう今年で卒業しちゃうし、高校の人と出会えるのは今のうちだもんね。」
三郷くんにも背中を押されて香田くんはマッチングサービスというのに登録することにする話になった。
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