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第6話 たった一つの彼女
たった一つの彼女 その3
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私にとって、『伊瀬冬くん』とは何なのでしょうか。
研究の対象、と言い切ってしまうほど冷ややかではありません。子ども、といえば間違ってないかもしれませんが少しくすぐったいです。仲間、というのもなんだか違う気がします。友人……が一番近いのでしょうか。
思考に隙間があると、こういうことを思い出したように考えてしまいます。すると、胃の底で綺麗な羽の生えた蝶がぐるぐると渦巻きながら飛び回るような感じがするのです。それを放っておいたままでいると、次第に湧いてくる感情があるのですが、私はそれがどうしても怖くて、顔を洗って心をリセットするようにしています。そうすると今度は、伊瀬冬くんにとって私は何なのか、という疑問が湧いてくるのですが、先ほどのような過程を経た後で、私はまた顔を洗いに行く羽目になります。
……数えてはいませんが、一日に顔を洗う回数は過去五年に比べてきっと増えていることでしょう。
〇
『ISY』について、とりあえず話を聞いてくれるという研究所があったので名古屋まで向かったのですが、新幹線に乗っている途中で「あの件は忘れて欲しい」と連絡が入り、馬鹿らしくなって道中で引き返してきました。先方の担当者が「そちらの上司が云々」と電話口で仰っていたので、また佐藤課長が手を回したのでしょう。
いくらなんでも酷すぎます。もちろん、権利的な話からすれば私達が勝てる道理はありませんが……それでも、『ISY』を買ってくれるという機関があればそれが一番であるはずなのに。私怨、と言うと語弊があるかもしれませんが、それに近いものは感じてしまいます。
研究所に戻った時には、もう夜の八時過ぎになっていました。研究室に向かうと、扉の隙間からは光が漏れています。開いてみれば鹿間さんと江村さんが同じノートパソコンに向かって何やら作業をしている最中でした。英字のシールが背面にぺたぺたと貼ってあるので、きっと鹿間さんのパソコンでしょう。
「遅くまでお疲れ様」と声を掛けると、ふたりはディスプレイからこちらへと視線を向けて「お疲れ様です」と会釈しました。
「お早いお帰りでしたね。戻るのは明日だと思っていましたが」と鹿間さんが不思議そうに言います。経緯を説明すると、一瞬きょとんとした表情は見る見るうちに怒りの色を帯びていき、ついに彼女はテーブルを拳で叩きました。江村さんも、鹿間さんのように行動に表しこそしませんが、眉間にしわを寄せています。
「ふざけてますね、あの課長。金槌でぶっ飛ばしてやりましょうか」
「見張りは任せて。誰も近づけないようにしておくから」
「ふ、ふたりとも。駄目だよ、そんことしたら」
「わかってます。ちょっと言ってみただけですよ」と鹿間さん、「冗談です」と江村さんが続きますが、その表情に笑みはありません。ほんの少し怖いですが……でも、気弱な私と違って頼りになります。
作業が終わったのか、ノートパソコンを落とした鹿間さんは私に訊ねました。
「源尾さん。なにかお手伝いできることがあればやりますが」
「大丈夫。メールの確認くらいだから。先に帰っていいよ」
「なら、どうです。それが終わったら、外で食事でもしていきませんか? 江村さんとどっか寄って帰ろうかって、話してたところなんですよ」
「どうしようかな」と私は迷う素振りをしましたが、本当はあまり乗り気にはなれませんでした。メールの確認の後、「いざという時」のために伊瀬冬くんを助けるアイデアを練ろうとしていたのです。
少し間を置いて、「やっぱりやめておこうかな」と言いかけたその時、江村さんが鋭い視線で私を刺しました。
「源尾さん。何を考えているかはわかりませんけど、こんなところで考え事してもいいアイデアなんて出ません」
頭の中を見透かしたような江村さんの言葉に、私は何も言えなくなりました。そんなに顔に出やすいのでしょうか。
でも、江村さんの言うことにも一理ある気はします。白状してしまえば、アイデアを練るなんてかっこつけたことを言ってもその種すら今の私には無かったんですから。ふたりと喋ることで、もしかしたらそれが産まれるかもしれません。
微笑みで取り繕った私は、「じゃあ、美味しいお店に連れてってね」とふたりの誘いを受けました。
〇
鹿間さんが連れて行ってくれたお店は、研究所の最寄りからふたつ離れた駅のすぐそばにありました。天井からぶら下がった洋灯が赤皮の張られたソファーを優しく照らすお洒落なお店で、鹿間さん曰く、昼は喫茶店としてコーヒーを出しているとのことです。店内には常連客らしい方々がすでに大勢いて陽気に会話を楽しんでおり、少し気後れしそうになりましたが、鹿間さんが店長らしき方と仲良く喋っているのを見てホッとしました。
一番奥にあるテーブル席が空いていたので、私達はそこに通されました。鹿間さんは女性の店員へ慣れた様子でなにかを色々と注文します。数分後には食べたことの無い料理がテーブルに次々と並んでいきました。
アボカドやトマトが混ざったサラダ、肉や野菜が薄皮で挟んであるサンドウィッチのような料理、汁気が少なく豆が多いミネストローネのような料理……見た目にはそうでもないのに、スパイシーな香りが鼻一杯に広がります。曰く、これらはメキシコ料理とのことです。飲み物として私はウーロン茶を頂きましたが、鹿間さんと江村さんはマルガリータというステキなカクテルを注文していました。
とりあえず「お疲れ様です」と乾杯をして、ウーロン茶を一口飲んだ私は、テーブルに並ぶ料理を見て改めて感心し、「鹿間さんは色々なお店知ってるよね」と言いました。
「私は決まったお店以外はあんまり冒険しないから。すごいな」
「まあ、それくらいしか楽しみがありませんからね。何より、美味しいお店にはかわいい女の子が付き物なので」と彼女は先ほど注文を取ってくれた女性店員に目をやりました。
「相変わらずの色魔だね」
「言い方考えてくださいよ、江村さん」
バツが悪そうに後ろ髪を撫でた鹿間さんは、カクテルを一口飲んで息を吐きます。
「しかし、こうして江村さんとお酒を飲みにいけるようになるなんて思いませんでしたよ。入った時にはめちゃくちゃに警戒されてましたからね」
「当たり前でしょ? 言葉遣い悪かったし、いちいちうるさかったし。あと、会った瞬間に『カワイイじゃーん!』とか言いながら撫でてきたし」
「後で思い切り手の甲を抓られたので、その件は清算済みだとは思ってるんですが」
「馬鹿にされたことは一生忘れないようにしてるの」
そのやり取りを見た私が、「相変わらず仲がいいね」と素直な感想を述べると、ふたりは口をそろえて「そんなつもりはありません」と返しました。やっぱり、仲がいいと思います。
江村さんは警戒する時の猫みたいな目つきで隣に座る鹿間さんに視線をやりつつ、カクテルのグラスを傾けました。
「入ったばかりの時は、ふたりで研究室にいる時はどうしようもないくらいに空気が重かった。でも、伊瀬冬がいたからなんとかなった」
「うんざりするくらい勝手に喋ってくれましたからね。いま考えてみれば、あの時のテンションの高さは異常でしたよ」
「今だから言えるけど、伊瀬冬くん、相当困ってたよ。こっちが気を遣って喋ってるのに、全然会話に乗ってこないって」
「そりゃそうですよ。あんだけ無駄に話しかけられたら、却って警戒しますって」
「そういうとこ、ちょっと不器用ですよね。伊瀬冬って」
江村さんの言葉に私達はそろって笑い声を上げます。笑いの波がだんだんと引いていくと、なんだか不思議な沈黙がはじまりました。ふたりが黙る理由はわかりません。私の場合は、こうして彼の思い出話をするのが、なんだか〝死〟を受け入れるまでのプロセスに思えてきて嫌になっただけです。
「あの頃からもう、伊瀬冬さんは人間だったんですね」と鹿間さんがポツリと呟きましたが、それから言葉を続ける人はおらず、私達は黙り込んだままお互いの顔をじっと伺っていました。
重苦しい雰囲気の中、口を開いたのは鹿間さんでした。
「源尾さん。ここだけの話、伊瀬冬さんを外に逃がそうと考えているんですが――」
「鹿間、やめて。博士の前で」と、鋭い口調で江村さんが制しました。鹿間さんは「ですが」と何か言いかけましたが、再度「やめて」と言われたことで、唇を一直線に結んでしまいました。
……引き取り手がいないのなら、伊瀬冬くんを外に逃がせばいいのではないかと、私だって考えたことがあります。でも、それは考えれば考えるほど難しいことです。
伊瀬冬くんの家――つまり、『ISY』が保管されているサーバはネットワークから完全に独立しています。仮想現実空間を展開する際は大容量データを扱う必要があるので社内ネットワークに接続しますが、セキュリティのためインターネットとは一切繋がりません。伊瀬冬くんは、壁面に外の絵が描かれただけの、窓も扉もない部屋に閉じ込められているようなものなのです。
暗い顔をするふたりへ「ありがとうね」と言って、精一杯に微笑んだ私は、江村さんのカクテルグラスを手に取って勝手に飲んでしまいました。ジュースのように甘い味がしました。
今は少しだけ、酔いたい気分です。
研究の対象、と言い切ってしまうほど冷ややかではありません。子ども、といえば間違ってないかもしれませんが少しくすぐったいです。仲間、というのもなんだか違う気がします。友人……が一番近いのでしょうか。
思考に隙間があると、こういうことを思い出したように考えてしまいます。すると、胃の底で綺麗な羽の生えた蝶がぐるぐると渦巻きながら飛び回るような感じがするのです。それを放っておいたままでいると、次第に湧いてくる感情があるのですが、私はそれがどうしても怖くて、顔を洗って心をリセットするようにしています。そうすると今度は、伊瀬冬くんにとって私は何なのか、という疑問が湧いてくるのですが、先ほどのような過程を経た後で、私はまた顔を洗いに行く羽目になります。
……数えてはいませんが、一日に顔を洗う回数は過去五年に比べてきっと増えていることでしょう。
〇
『ISY』について、とりあえず話を聞いてくれるという研究所があったので名古屋まで向かったのですが、新幹線に乗っている途中で「あの件は忘れて欲しい」と連絡が入り、馬鹿らしくなって道中で引き返してきました。先方の担当者が「そちらの上司が云々」と電話口で仰っていたので、また佐藤課長が手を回したのでしょう。
いくらなんでも酷すぎます。もちろん、権利的な話からすれば私達が勝てる道理はありませんが……それでも、『ISY』を買ってくれるという機関があればそれが一番であるはずなのに。私怨、と言うと語弊があるかもしれませんが、それに近いものは感じてしまいます。
研究所に戻った時には、もう夜の八時過ぎになっていました。研究室に向かうと、扉の隙間からは光が漏れています。開いてみれば鹿間さんと江村さんが同じノートパソコンに向かって何やら作業をしている最中でした。英字のシールが背面にぺたぺたと貼ってあるので、きっと鹿間さんのパソコンでしょう。
「遅くまでお疲れ様」と声を掛けると、ふたりはディスプレイからこちらへと視線を向けて「お疲れ様です」と会釈しました。
「お早いお帰りでしたね。戻るのは明日だと思っていましたが」と鹿間さんが不思議そうに言います。経緯を説明すると、一瞬きょとんとした表情は見る見るうちに怒りの色を帯びていき、ついに彼女はテーブルを拳で叩きました。江村さんも、鹿間さんのように行動に表しこそしませんが、眉間にしわを寄せています。
「ふざけてますね、あの課長。金槌でぶっ飛ばしてやりましょうか」
「見張りは任せて。誰も近づけないようにしておくから」
「ふ、ふたりとも。駄目だよ、そんことしたら」
「わかってます。ちょっと言ってみただけですよ」と鹿間さん、「冗談です」と江村さんが続きますが、その表情に笑みはありません。ほんの少し怖いですが……でも、気弱な私と違って頼りになります。
作業が終わったのか、ノートパソコンを落とした鹿間さんは私に訊ねました。
「源尾さん。なにかお手伝いできることがあればやりますが」
「大丈夫。メールの確認くらいだから。先に帰っていいよ」
「なら、どうです。それが終わったら、外で食事でもしていきませんか? 江村さんとどっか寄って帰ろうかって、話してたところなんですよ」
「どうしようかな」と私は迷う素振りをしましたが、本当はあまり乗り気にはなれませんでした。メールの確認の後、「いざという時」のために伊瀬冬くんを助けるアイデアを練ろうとしていたのです。
少し間を置いて、「やっぱりやめておこうかな」と言いかけたその時、江村さんが鋭い視線で私を刺しました。
「源尾さん。何を考えているかはわかりませんけど、こんなところで考え事してもいいアイデアなんて出ません」
頭の中を見透かしたような江村さんの言葉に、私は何も言えなくなりました。そんなに顔に出やすいのでしょうか。
でも、江村さんの言うことにも一理ある気はします。白状してしまえば、アイデアを練るなんてかっこつけたことを言ってもその種すら今の私には無かったんですから。ふたりと喋ることで、もしかしたらそれが産まれるかもしれません。
微笑みで取り繕った私は、「じゃあ、美味しいお店に連れてってね」とふたりの誘いを受けました。
〇
鹿間さんが連れて行ってくれたお店は、研究所の最寄りからふたつ離れた駅のすぐそばにありました。天井からぶら下がった洋灯が赤皮の張られたソファーを優しく照らすお洒落なお店で、鹿間さん曰く、昼は喫茶店としてコーヒーを出しているとのことです。店内には常連客らしい方々がすでに大勢いて陽気に会話を楽しんでおり、少し気後れしそうになりましたが、鹿間さんが店長らしき方と仲良く喋っているのを見てホッとしました。
一番奥にあるテーブル席が空いていたので、私達はそこに通されました。鹿間さんは女性の店員へ慣れた様子でなにかを色々と注文します。数分後には食べたことの無い料理がテーブルに次々と並んでいきました。
アボカドやトマトが混ざったサラダ、肉や野菜が薄皮で挟んであるサンドウィッチのような料理、汁気が少なく豆が多いミネストローネのような料理……見た目にはそうでもないのに、スパイシーな香りが鼻一杯に広がります。曰く、これらはメキシコ料理とのことです。飲み物として私はウーロン茶を頂きましたが、鹿間さんと江村さんはマルガリータというステキなカクテルを注文していました。
とりあえず「お疲れ様です」と乾杯をして、ウーロン茶を一口飲んだ私は、テーブルに並ぶ料理を見て改めて感心し、「鹿間さんは色々なお店知ってるよね」と言いました。
「私は決まったお店以外はあんまり冒険しないから。すごいな」
「まあ、それくらいしか楽しみがありませんからね。何より、美味しいお店にはかわいい女の子が付き物なので」と彼女は先ほど注文を取ってくれた女性店員に目をやりました。
「相変わらずの色魔だね」
「言い方考えてくださいよ、江村さん」
バツが悪そうに後ろ髪を撫でた鹿間さんは、カクテルを一口飲んで息を吐きます。
「しかし、こうして江村さんとお酒を飲みにいけるようになるなんて思いませんでしたよ。入った時にはめちゃくちゃに警戒されてましたからね」
「当たり前でしょ? 言葉遣い悪かったし、いちいちうるさかったし。あと、会った瞬間に『カワイイじゃーん!』とか言いながら撫でてきたし」
「後で思い切り手の甲を抓られたので、その件は清算済みだとは思ってるんですが」
「馬鹿にされたことは一生忘れないようにしてるの」
そのやり取りを見た私が、「相変わらず仲がいいね」と素直な感想を述べると、ふたりは口をそろえて「そんなつもりはありません」と返しました。やっぱり、仲がいいと思います。
江村さんは警戒する時の猫みたいな目つきで隣に座る鹿間さんに視線をやりつつ、カクテルのグラスを傾けました。
「入ったばかりの時は、ふたりで研究室にいる時はどうしようもないくらいに空気が重かった。でも、伊瀬冬がいたからなんとかなった」
「うんざりするくらい勝手に喋ってくれましたからね。いま考えてみれば、あの時のテンションの高さは異常でしたよ」
「今だから言えるけど、伊瀬冬くん、相当困ってたよ。こっちが気を遣って喋ってるのに、全然会話に乗ってこないって」
「そりゃそうですよ。あんだけ無駄に話しかけられたら、却って警戒しますって」
「そういうとこ、ちょっと不器用ですよね。伊瀬冬って」
江村さんの言葉に私達はそろって笑い声を上げます。笑いの波がだんだんと引いていくと、なんだか不思議な沈黙がはじまりました。ふたりが黙る理由はわかりません。私の場合は、こうして彼の思い出話をするのが、なんだか〝死〟を受け入れるまでのプロセスに思えてきて嫌になっただけです。
「あの頃からもう、伊瀬冬さんは人間だったんですね」と鹿間さんがポツリと呟きましたが、それから言葉を続ける人はおらず、私達は黙り込んだままお互いの顔をじっと伺っていました。
重苦しい雰囲気の中、口を開いたのは鹿間さんでした。
「源尾さん。ここだけの話、伊瀬冬さんを外に逃がそうと考えているんですが――」
「鹿間、やめて。博士の前で」と、鋭い口調で江村さんが制しました。鹿間さんは「ですが」と何か言いかけましたが、再度「やめて」と言われたことで、唇を一直線に結んでしまいました。
……引き取り手がいないのなら、伊瀬冬くんを外に逃がせばいいのではないかと、私だって考えたことがあります。でも、それは考えれば考えるほど難しいことです。
伊瀬冬くんの家――つまり、『ISY』が保管されているサーバはネットワークから完全に独立しています。仮想現実空間を展開する際は大容量データを扱う必要があるので社内ネットワークに接続しますが、セキュリティのためインターネットとは一切繋がりません。伊瀬冬くんは、壁面に外の絵が描かれただけの、窓も扉もない部屋に閉じ込められているようなものなのです。
暗い顔をするふたりへ「ありがとうね」と言って、精一杯に微笑んだ私は、江村さんのカクテルグラスを手に取って勝手に飲んでしまいました。ジュースのように甘い味がしました。
今は少しだけ、酔いたい気分です。
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