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片恋切符は天の川をこえて
3、槻尾 万美子
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何もかも諦めていて、すべてのことがどうでもよくて大嫌いだった。
世界を色に例えるなら、いつもそこは常に真っ黒で。
それでも母の言いつけを破ることができなかった臆病なわたしが、唯一自分史上に残る大きな冒険をしていろんな人に迷惑をかけてしまったのはこの場所で、忘れもしない優しい光に包まれたのも、あの温かな日々の中での出来事だった。
目を閉じればあの光景が蘇る。
優しい声がわたしを呼ぶ。
思い出すたび、優しい涙がにじむ。
わたしだけの光は、あの時確かに、わたしだけを照らしてくれた。
☆☆☆
『マミちゃ~ん、これ、お土産』
じゃーんと得意げに鞄から紙袋を取り出し、屈託のない笑顔を浮かべる男子の名はセイ。
多分、近くの高校の生徒なのだと思うけど、学校どころか本当の名前さえ知らない男の子。
『な、なにこれ……』
わたしが手に取る前に紙袋から取り出されたのは手のひらサイズのぬいぐるみだった。
『スペースワールドのお土産!』
『……はぁ?』
トロンとした瞳と前歯が出た特徴的な表情をしたうさぎのぬいぐるみをドヤッとした顔で見せられても反応に困る。
『遠足で行ったって言わなかったっけ』
『……い、いや、わたしも来週行くんだけど』
北九州市にあるテーマパークのことを言っているのならわたしだって来週行く予定だと伝えてあったはずだ。それなのにお土産を買ってくるなんて、どうかしている。
『マミちゃんだったら絶対自分では買わないだろうと思って』
(ええ、買わないでしょうよ)
結構高かったんだ、と手渡されても困惑するしかない。
『美人で近づきがたいけど、これをつけてたら本当のマミちゃんは優しくて親しみやすい人なんだってわかるだろうから』
『ほ、本当のわたし……?』
褒めているようで何やらさらっと失礼なことを言われた気がしてならないけど、彼は本当にそう思っているのだろう。真っ直ぐな瞳に曇りはない。
『よ、余計なお世話なんですけど。第一、別にわたしがどんな人かだなんてわかってもらえなくていい』
『大丈夫だよ。マミちゃんの魅力は俺が保証する』
『わからない人には何を言っても無駄だと思うけど』
『またそんなこと言う』
などと言いつつ、笑顔を絶やさないセイ。
彼には不思議な魅力があって、その笑顔を見ていると何も言い返すことができなくなることがあり、今回も同様に彼の笑顔に導かれるように小さくありがとうと呟くととても満足そうにうなずいた姿が目に入ったのだった。
木曜日の夕方にだけこの地に現れるセイはつかめない存在だった。
どこの誰かもわからない、このひとときだけを共に過ごし、他愛もない会話を交わす人。
ひとりで平気だとずっと思っていたのに、この人のいる空間だけは不思議といつものわたしでいられた。
世界を色に例えるなら、いつもそこは常に真っ黒で。
それでも母の言いつけを破ることができなかった臆病なわたしが、唯一自分史上に残る大きな冒険をしていろんな人に迷惑をかけてしまったのはこの場所で、忘れもしない優しい光に包まれたのも、あの温かな日々の中での出来事だった。
目を閉じればあの光景が蘇る。
優しい声がわたしを呼ぶ。
思い出すたび、優しい涙がにじむ。
わたしだけの光は、あの時確かに、わたしだけを照らしてくれた。
☆☆☆
『マミちゃ~ん、これ、お土産』
じゃーんと得意げに鞄から紙袋を取り出し、屈託のない笑顔を浮かべる男子の名はセイ。
多分、近くの高校の生徒なのだと思うけど、学校どころか本当の名前さえ知らない男の子。
『な、なにこれ……』
わたしが手に取る前に紙袋から取り出されたのは手のひらサイズのぬいぐるみだった。
『スペースワールドのお土産!』
『……はぁ?』
トロンとした瞳と前歯が出た特徴的な表情をしたうさぎのぬいぐるみをドヤッとした顔で見せられても反応に困る。
『遠足で行ったって言わなかったっけ』
『……い、いや、わたしも来週行くんだけど』
北九州市にあるテーマパークのことを言っているのならわたしだって来週行く予定だと伝えてあったはずだ。それなのにお土産を買ってくるなんて、どうかしている。
『マミちゃんだったら絶対自分では買わないだろうと思って』
(ええ、買わないでしょうよ)
結構高かったんだ、と手渡されても困惑するしかない。
『美人で近づきがたいけど、これをつけてたら本当のマミちゃんは優しくて親しみやすい人なんだってわかるだろうから』
『ほ、本当のわたし……?』
褒めているようで何やらさらっと失礼なことを言われた気がしてならないけど、彼は本当にそう思っているのだろう。真っ直ぐな瞳に曇りはない。
『よ、余計なお世話なんですけど。第一、別にわたしがどんな人かだなんてわかってもらえなくていい』
『大丈夫だよ。マミちゃんの魅力は俺が保証する』
『わからない人には何を言っても無駄だと思うけど』
『またそんなこと言う』
などと言いつつ、笑顔を絶やさないセイ。
彼には不思議な魅力があって、その笑顔を見ていると何も言い返すことができなくなることがあり、今回も同様に彼の笑顔に導かれるように小さくありがとうと呟くととても満足そうにうなずいた姿が目に入ったのだった。
木曜日の夕方にだけこの地に現れるセイはつかめない存在だった。
どこの誰かもわからない、このひとときだけを共に過ごし、他愛もない会話を交わす人。
ひとりで平気だとずっと思っていたのに、この人のいる空間だけは不思議といつものわたしでいられた。
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