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片恋切符は天の川をこえて
4、十六歳の葛藤
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わたしがこの街、山口県下関市に引っ越してきたのは、高校生になってすぐの夏の終わりのことだった。
もともと仲の悪かった両親が父の浮気が発覚したことをきっかけについに離婚を決めたため、母の実家のあるこの地に引っ越してきたのだった。
今にして思えば上辺の付き合いだったと思うけど、当時はそれなりに仲の良い友達もいて、見栄を張って頑張って受験した偏差値の高い可愛い制服の高校もこれらの出来事の影響で夏休みまでしか通うことを許されなかった。
突然、山口県に引っ越すと言われ、すぐに編入試験を受けさせられ、この右も左も言葉さえもまったくわからない土地にやってきたのだ。何のために今まで必死に受験勉強を頑張ったのだろうかと絶望した。
なにより、どうせ父が外で遊んでいることなんてわかっていたことだし、わたしが高校を卒業するまで見て見ぬふりをしてくれればよかったのにと母に対して苛立ちさえ感じていた。
わたしに選択肢はなかった。
東京にそのまま残りたいと思っていた。それでも今後は我が物顔でやってくるであろう父の恋人と一緒に過ごせるなんて思わなかったし、一人暮らしがしたいと言っても高校生になったばかりの身では許してもらうことは叶わなかった。
なにより、わたしはヒステリック気味の母に怒鳴られたり泣かれたりすると萎縮してしまってなにも言い返せず、ただただ言われるままにこの地にやってきたのだった。
『下関』
条約が結ばれた場所だったと小学校の歴史で習ったことがある。
でもまさか……夜になるとすべてがオフ状態で真っ暗になり、静まり返るような海辺の街に自分自身が住むことになるなんて思ってもみなかった。日本地図で見てみると本州の最果ての地に自分がいることが判明し、唖然としたくらいだ。
加えて、転校した先の新しい学校は、初日から本当に最悪だった。
まだ新しい制服が完成していなかったため、かつての高校の制服を身に着けた季節外れの転校生が珍しかったのだろう。一斉にいろんなクラスの人間がわたしを見にやって来たし、こそこそ何かを言っているのだってわかっていた。いきなり話しかけられ、聞き慣れないイントネーションや語尾に驚き、フリーズしているうちに『お高くとまっている』とか『嫌な感じ』などと悪態をつかれ始め、みんな遠目にはもの珍しそうに眺めるくせに、話しかけてはこなくなった。
問題ない。
友達なんてほしいとも思わない。
こんな街、すぐに出て行ってやるんだから。
そう思っていた。
母の借りた小さなアパートはとても窮屈だったけど、海に近い場所にあってそこだけは唯一嫌いではなかった。
学校が終わるとすぐにバスに乗り込んで帰ってくる三十分ほどの道のりは、窓の外に広がる関門海峡を目にすることができる。きらきらしていて、初めて見た日はひどくふてくされていたくせに、思わず目を奪われた。見慣れない景色だったからこそ、小さく胸が揺れたのだとその時は思っていた。
地図で見た本州と九州は海を挟んでいるため、ずいぶんと離れたところにあるのだろうという印象だったのに、目視で海を越えた先に九州の街を見ることができ、驚くことばかりだった。なお、どこに向かうのかどこからやってきたのかわからない海外の名前の書かれた船が行き交うのもこの街では当たり前の光景だというのは後から知った。
その中でも好きだったのは、夕暮れから夜にかけて海の向こうに見える門司港の景色だった。遠くの景色がオレンジ色の光に照らされ、まるで別世界のようだった。
夜は絶対に外へ出ちゃダメよ、と耳にタコができるほど同じことを繰り返す母は、自分自身が外へ出て、東京の男と出会ったからだろう。下関に引っ越してきてからは特に外出に関して厳しく言うようになったため、わたしも従わざるを得なかった。逆らったら最後、ひどいヒステリックな感情をぶつけられるからだ。長年共に過ごしてきたためか、良くも悪くも母の取扱説明書は熟知できているつもりだ。
なにより父とよく似た造形をしたわたしを見ると嫌悪感が生まれてくるのだろう。本当に勝手な話だけど。
母は、高校卒業を目前にして、当時大学生でふらふらと旅行をしていたらしい父と出会い、恋に落ちた。周りが見えなくなったのだろう、彼女は周りの反対に耳を傾けることなく、すべてを捨ててそのまま何も持たない状況で東京まで付いて行ったのだという。そして、上京してすぐにわたしが生まれた。こんな結末を迎えることになるなんて当時の母は思いもしなかったのだろう。娘のわたしから見ても馬鹿な選択をしたものだと呆れるしかないのだけど、その反面教師で同じ過ちだけは絶対するものかと幼いながらずっと思い続けていたため、その部分だけは賢くなり、その気持ちはわたしを強くしてくれた。
わたしの養育費は変わらず父が払ってくれることになっているし、成人するまでの責任はとってくれると話は決まった。父はわたしに激甘だから、養育費の他に、離れてしまう娘にお小遣いも送金したいと言っていたが、もちろんのこと母の逆鱗にふれた。
いろんな選択肢はあったはずなのに、母は東京にわたしを残すことを許さなかったし、自身のプライドの高さからかわざわざ下関へ戻ってきたというのに実家に頼ることなく自分たちの力だけで過ごすことを決めた。そのため、朝から晩まで働きに出ることになった。わたしを見張りたいのかそうでないのか、どっちなのだと言いたくなるけど、彼女の帰宅は夜の十時を超えるため、それまでの間はわたしにとって自由時間となり、これに関しては不幸中の幸いだった。ああだこうだと口うるさいわりに、誰にも干渉されない時間が夜はゆったり取れるため、ふらりと関門海峡の向こうに見える光景を眺めに外へ出るのが日課になった。
みもすそ川公園は、名称に『公園』とついているけど子どもたちが遊ぶような遊具はひとつもない。あるのは壇ノ浦の戦いの跡地であることがわかるいくつかの石碑と五門の大砲くらいだ。
こうしてふらりと夕方にこの地を訪れるようになったころ、暑くて暑くて仕方がなかった夏場からようやく秋へと季節が移り替わろうとしていたころだった。
私服に着替えてすぐ海沿いに小さく佇むみもすそ川公園に立ち寄り、止まることなくただひたすら流れ続ける関門海峡を眺め、暗くなるまでその場所で過ごすことが増えた。
自分の部屋さえない小さなアパートにいても気が滅入るだけだ。その日も高校から帰るなり、長い髪をひとつにまとめ、ジーンズに履き替え、パーカーを羽織って外へ出た。壇ノ浦古戦場と記されたその場所を目前にした横断歩道の先で源義経と平知盛の石碑に迎えられる。向かい合って武器を構える彼らの姿はあまりにもリアルで迫力があって、今にも動き出して取っ組み合いの喧嘩を始めそうだった。小学校の時に授業で聞いたことのあるだけだった壇ノ浦の戦いの跡地に自分自身が立っていることが何とも不思議な気持ちにさせた。
新しい生活はどう?と連絡をくれていたかつての友達からの連絡もひとり、またひとりと途絶えていった。
入学して早々に連絡先を聞いてきた清水先輩も今は可愛い彼女ができたらしい。
どうでもいいのに、周りからそんな連絡だけは入ってくる。
人間関係なんて、どうせ終わりがくる。
この場所で敗れてほろびた平家の人間には申し訳なく思うけど、わたしはもうこれからの人生に希望なんてなかった。
ただ、こんな狭くて過ごしにくいところにだけはいたくないから大学は東京に行こうという目標はあった。それまではここの暮らしで耐えていく。でも、高校を卒業したらもういいだろう。すべてのしがらみから解放してほしかった。
絶対に東京の大学に合格してみせる。
遊び相手もいないし、勉強に励むからそのあたりは問題ないだろう。
だからこそ、先生が言ったようにここで人間関係なんてちんたら築いている暇なんてない。たった三年弱の高校生活で絆なんて結んで何になる。どうせ、離れたら終わるのに。
ゆったり船が通り過ぎる様子をぼんやり眺め、何も感じられないわたしは心がどんどんすり減っていくのを感じる。
バカだなぁと思う。
東京から来たという男にほいほいついて行ったくせにこんな風にまた戻ってくることになった母も、そうは思いつつ反抗できない自分も。
母は、自分が自由になれなかった分、わたしに執着するようになった。
あれはダメ、これはダメ。
言われたとおりに生き、母がヒステリックを起こさないようにとばかり先回りをして考えるようになった。すでにわたしは母の操り人形だった。
何をしても希望を見出せない。
きっとわたしはろくな大人にはなれないし、一生このままなのだろう。
「ああ、もうっ!」
大きな声で叫んで、顔を覆った。
どうしたらいいのかわからない。
もやもや、もやもやもやもや。
心がどんどん黒い影に覆われていく。
口を開いても十分な空気が入ってこなくて、胸が締め付けられる一方で息をするのも苦しくて苦しくて仕方ないのだ。
『大丈夫?』
そんな時に声をかけてきたのが、セイだったのだ。
誰このひと?と思って視線を上げると見たこともないきれいな顔をした男の子が立っていて、不意に止めていた呼吸を再開したら、思わず涙が出た。
声をかけるなら、空気を読みなさいよ……そう思ったのが、第一印象だった。
もともと仲の悪かった両親が父の浮気が発覚したことをきっかけについに離婚を決めたため、母の実家のあるこの地に引っ越してきたのだった。
今にして思えば上辺の付き合いだったと思うけど、当時はそれなりに仲の良い友達もいて、見栄を張って頑張って受験した偏差値の高い可愛い制服の高校もこれらの出来事の影響で夏休みまでしか通うことを許されなかった。
突然、山口県に引っ越すと言われ、すぐに編入試験を受けさせられ、この右も左も言葉さえもまったくわからない土地にやってきたのだ。何のために今まで必死に受験勉強を頑張ったのだろうかと絶望した。
なにより、どうせ父が外で遊んでいることなんてわかっていたことだし、わたしが高校を卒業するまで見て見ぬふりをしてくれればよかったのにと母に対して苛立ちさえ感じていた。
わたしに選択肢はなかった。
東京にそのまま残りたいと思っていた。それでも今後は我が物顔でやってくるであろう父の恋人と一緒に過ごせるなんて思わなかったし、一人暮らしがしたいと言っても高校生になったばかりの身では許してもらうことは叶わなかった。
なにより、わたしはヒステリック気味の母に怒鳴られたり泣かれたりすると萎縮してしまってなにも言い返せず、ただただ言われるままにこの地にやってきたのだった。
『下関』
条約が結ばれた場所だったと小学校の歴史で習ったことがある。
でもまさか……夜になるとすべてがオフ状態で真っ暗になり、静まり返るような海辺の街に自分自身が住むことになるなんて思ってもみなかった。日本地図で見てみると本州の最果ての地に自分がいることが判明し、唖然としたくらいだ。
加えて、転校した先の新しい学校は、初日から本当に最悪だった。
まだ新しい制服が完成していなかったため、かつての高校の制服を身に着けた季節外れの転校生が珍しかったのだろう。一斉にいろんなクラスの人間がわたしを見にやって来たし、こそこそ何かを言っているのだってわかっていた。いきなり話しかけられ、聞き慣れないイントネーションや語尾に驚き、フリーズしているうちに『お高くとまっている』とか『嫌な感じ』などと悪態をつかれ始め、みんな遠目にはもの珍しそうに眺めるくせに、話しかけてはこなくなった。
問題ない。
友達なんてほしいとも思わない。
こんな街、すぐに出て行ってやるんだから。
そう思っていた。
母の借りた小さなアパートはとても窮屈だったけど、海に近い場所にあってそこだけは唯一嫌いではなかった。
学校が終わるとすぐにバスに乗り込んで帰ってくる三十分ほどの道のりは、窓の外に広がる関門海峡を目にすることができる。きらきらしていて、初めて見た日はひどくふてくされていたくせに、思わず目を奪われた。見慣れない景色だったからこそ、小さく胸が揺れたのだとその時は思っていた。
地図で見た本州と九州は海を挟んでいるため、ずいぶんと離れたところにあるのだろうという印象だったのに、目視で海を越えた先に九州の街を見ることができ、驚くことばかりだった。なお、どこに向かうのかどこからやってきたのかわからない海外の名前の書かれた船が行き交うのもこの街では当たり前の光景だというのは後から知った。
その中でも好きだったのは、夕暮れから夜にかけて海の向こうに見える門司港の景色だった。遠くの景色がオレンジ色の光に照らされ、まるで別世界のようだった。
夜は絶対に外へ出ちゃダメよ、と耳にタコができるほど同じことを繰り返す母は、自分自身が外へ出て、東京の男と出会ったからだろう。下関に引っ越してきてからは特に外出に関して厳しく言うようになったため、わたしも従わざるを得なかった。逆らったら最後、ひどいヒステリックな感情をぶつけられるからだ。長年共に過ごしてきたためか、良くも悪くも母の取扱説明書は熟知できているつもりだ。
なにより父とよく似た造形をしたわたしを見ると嫌悪感が生まれてくるのだろう。本当に勝手な話だけど。
母は、高校卒業を目前にして、当時大学生でふらふらと旅行をしていたらしい父と出会い、恋に落ちた。周りが見えなくなったのだろう、彼女は周りの反対に耳を傾けることなく、すべてを捨ててそのまま何も持たない状況で東京まで付いて行ったのだという。そして、上京してすぐにわたしが生まれた。こんな結末を迎えることになるなんて当時の母は思いもしなかったのだろう。娘のわたしから見ても馬鹿な選択をしたものだと呆れるしかないのだけど、その反面教師で同じ過ちだけは絶対するものかと幼いながらずっと思い続けていたため、その部分だけは賢くなり、その気持ちはわたしを強くしてくれた。
わたしの養育費は変わらず父が払ってくれることになっているし、成人するまでの責任はとってくれると話は決まった。父はわたしに激甘だから、養育費の他に、離れてしまう娘にお小遣いも送金したいと言っていたが、もちろんのこと母の逆鱗にふれた。
いろんな選択肢はあったはずなのに、母は東京にわたしを残すことを許さなかったし、自身のプライドの高さからかわざわざ下関へ戻ってきたというのに実家に頼ることなく自分たちの力だけで過ごすことを決めた。そのため、朝から晩まで働きに出ることになった。わたしを見張りたいのかそうでないのか、どっちなのだと言いたくなるけど、彼女の帰宅は夜の十時を超えるため、それまでの間はわたしにとって自由時間となり、これに関しては不幸中の幸いだった。ああだこうだと口うるさいわりに、誰にも干渉されない時間が夜はゆったり取れるため、ふらりと関門海峡の向こうに見える光景を眺めに外へ出るのが日課になった。
みもすそ川公園は、名称に『公園』とついているけど子どもたちが遊ぶような遊具はひとつもない。あるのは壇ノ浦の戦いの跡地であることがわかるいくつかの石碑と五門の大砲くらいだ。
こうしてふらりと夕方にこの地を訪れるようになったころ、暑くて暑くて仕方がなかった夏場からようやく秋へと季節が移り替わろうとしていたころだった。
私服に着替えてすぐ海沿いに小さく佇むみもすそ川公園に立ち寄り、止まることなくただひたすら流れ続ける関門海峡を眺め、暗くなるまでその場所で過ごすことが増えた。
自分の部屋さえない小さなアパートにいても気が滅入るだけだ。その日も高校から帰るなり、長い髪をひとつにまとめ、ジーンズに履き替え、パーカーを羽織って外へ出た。壇ノ浦古戦場と記されたその場所を目前にした横断歩道の先で源義経と平知盛の石碑に迎えられる。向かい合って武器を構える彼らの姿はあまりにもリアルで迫力があって、今にも動き出して取っ組み合いの喧嘩を始めそうだった。小学校の時に授業で聞いたことのあるだけだった壇ノ浦の戦いの跡地に自分自身が立っていることが何とも不思議な気持ちにさせた。
新しい生活はどう?と連絡をくれていたかつての友達からの連絡もひとり、またひとりと途絶えていった。
入学して早々に連絡先を聞いてきた清水先輩も今は可愛い彼女ができたらしい。
どうでもいいのに、周りからそんな連絡だけは入ってくる。
人間関係なんて、どうせ終わりがくる。
この場所で敗れてほろびた平家の人間には申し訳なく思うけど、わたしはもうこれからの人生に希望なんてなかった。
ただ、こんな狭くて過ごしにくいところにだけはいたくないから大学は東京に行こうという目標はあった。それまではここの暮らしで耐えていく。でも、高校を卒業したらもういいだろう。すべてのしがらみから解放してほしかった。
絶対に東京の大学に合格してみせる。
遊び相手もいないし、勉強に励むからそのあたりは問題ないだろう。
だからこそ、先生が言ったようにここで人間関係なんてちんたら築いている暇なんてない。たった三年弱の高校生活で絆なんて結んで何になる。どうせ、離れたら終わるのに。
ゆったり船が通り過ぎる様子をぼんやり眺め、何も感じられないわたしは心がどんどんすり減っていくのを感じる。
バカだなぁと思う。
東京から来たという男にほいほいついて行ったくせにこんな風にまた戻ってくることになった母も、そうは思いつつ反抗できない自分も。
母は、自分が自由になれなかった分、わたしに執着するようになった。
あれはダメ、これはダメ。
言われたとおりに生き、母がヒステリックを起こさないようにとばかり先回りをして考えるようになった。すでにわたしは母の操り人形だった。
何をしても希望を見出せない。
きっとわたしはろくな大人にはなれないし、一生このままなのだろう。
「ああ、もうっ!」
大きな声で叫んで、顔を覆った。
どうしたらいいのかわからない。
もやもや、もやもやもやもや。
心がどんどん黒い影に覆われていく。
口を開いても十分な空気が入ってこなくて、胸が締め付けられる一方で息をするのも苦しくて苦しくて仕方ないのだ。
『大丈夫?』
そんな時に声をかけてきたのが、セイだったのだ。
誰このひと?と思って視線を上げると見たこともないきれいな顔をした男の子が立っていて、不意に止めていた呼吸を再開したら、思わず涙が出た。
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