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1章 囚われた真紅の歌姫
6、歌姫は騎士となり、再び舞台へ
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「言いづらいのなら追々でいい。……それにしても、滑稽だね。君とこうしてゆっくり話す初めての機会が、こんな馬車の中ではね」
「そうだね」
互いに背中を預け合い、共闘はしてきたもののこうしてゆっくり時間を共にすることなんてなかった。
「一度君とは杯を交わしたいとは思っていたけど、残念ながらこれはアンネが憧れていた世界観だ」
「と、いうと?」
「よく舞台でもありがちな場面だよ。王子様に見初められてともに王宮に向かうんだ。あたしの場合は囚われの身のわけだから、まったくもってハッピーエンドじゃないな、と思うと笑ってしまうけど」
物語と現実は違うようだ。
「……囚われるという言葉ほど君に似合わない言葉はないね」
「まったくだ」
ようやくどんよりした空気が和らぎ、意識をして肩の力を抜く。
これでいい。
どうせいずれ導かれる未来なのであれば、嘆いたって始まらない。
「マリア」
「ん?」
「先ほども言った通り、しばらく君のことを女性として扱えない」
「……いや、一度だって君から女性扱いを受けた覚えはないけど」
「そうじゃなくって」
「ああ、これのことだろ。平気さ」
彼から渡され身につけた立派な騎士装飾に触れると、誇らしさのあまり頬が緩んだ。
これから第二王子としての彼のそばに仕える際は、もとより仮の姿として活動をしていたエクテスとして生きていくことを約束させられた。
すなわち、男の姿というわけだ。
彼の騎士となり、そばにつくことになっている。
「構うものか。あたしはもともと性別にはこだわりはない。すべてにおいて煩わしい女性という性を受けるのであれば男性として生きたかったと思うくらいだからね」
むしろ、男として生まれたかった。
未だ差別のあるこの世の中で、女という生き物は選択肢が少ないどころかたくさんの鎖に縛られ、とても生きづらいのだ。それに、
「この姿のほうが可愛い乙女たちに好感を持ってもらいやすい」
「……相変わらずだね」
「胸クソ悪い男どもとともに時間を過ごすくらいなら美しい花を愛でていたほうが楽しいじゃないか」
「……俺も胸クソ悪いひとりに入ってないことを願いたいものだね」
「あたしは顔のいい男は最も嫌いだよ」
「……お褒めに与り光栄だよ」
ルイがようやく口角を上げる。
そうだな。
この方がずっといい。
「改めてよろしく頼むよ、ペテン師くん」
「またペテン師って……」
「呼び方は、君の今後の行い次第だよ」
声を上げて笑うと、彼も笑った。
ずっとこうした関係が続くと思っていたのにな……などと考えても時間の無駄のため、金輪際、この考えは捨てることにする。
流れ行く世界が、ほんの少し色を変えて見えたのは、気のせいか。
こうして、あたしの穏やかだった日常はとんでもない速度で大きく変わっていくこととなる。
目立たないように目立たないようにと生きてきたのに、舞台の神様はどうやらあたしにまたスポットライトを当てたいらしい。
そもそも歩く発光機のような男が常に隣にいるのだからもうお手上げである。
彼の言う二年後には、自らの幕は自らでしっかり下ろすのだと改めて誓いながら、あたしは新しい世界へと脚を一歩踏み出したのだった。
「そうだね」
互いに背中を預け合い、共闘はしてきたもののこうしてゆっくり時間を共にすることなんてなかった。
「一度君とは杯を交わしたいとは思っていたけど、残念ながらこれはアンネが憧れていた世界観だ」
「と、いうと?」
「よく舞台でもありがちな場面だよ。王子様に見初められてともに王宮に向かうんだ。あたしの場合は囚われの身のわけだから、まったくもってハッピーエンドじゃないな、と思うと笑ってしまうけど」
物語と現実は違うようだ。
「……囚われるという言葉ほど君に似合わない言葉はないね」
「まったくだ」
ようやくどんよりした空気が和らぎ、意識をして肩の力を抜く。
これでいい。
どうせいずれ導かれる未来なのであれば、嘆いたって始まらない。
「マリア」
「ん?」
「先ほども言った通り、しばらく君のことを女性として扱えない」
「……いや、一度だって君から女性扱いを受けた覚えはないけど」
「そうじゃなくって」
「ああ、これのことだろ。平気さ」
彼から渡され身につけた立派な騎士装飾に触れると、誇らしさのあまり頬が緩んだ。
これから第二王子としての彼のそばに仕える際は、もとより仮の姿として活動をしていたエクテスとして生きていくことを約束させられた。
すなわち、男の姿というわけだ。
彼の騎士となり、そばにつくことになっている。
「構うものか。あたしはもともと性別にはこだわりはない。すべてにおいて煩わしい女性という性を受けるのであれば男性として生きたかったと思うくらいだからね」
むしろ、男として生まれたかった。
未だ差別のあるこの世の中で、女という生き物は選択肢が少ないどころかたくさんの鎖に縛られ、とても生きづらいのだ。それに、
「この姿のほうが可愛い乙女たちに好感を持ってもらいやすい」
「……相変わらずだね」
「胸クソ悪い男どもとともに時間を過ごすくらいなら美しい花を愛でていたほうが楽しいじゃないか」
「……俺も胸クソ悪いひとりに入ってないことを願いたいものだね」
「あたしは顔のいい男は最も嫌いだよ」
「……お褒めに与り光栄だよ」
ルイがようやく口角を上げる。
そうだな。
この方がずっといい。
「改めてよろしく頼むよ、ペテン師くん」
「またペテン師って……」
「呼び方は、君の今後の行い次第だよ」
声を上げて笑うと、彼も笑った。
ずっとこうした関係が続くと思っていたのにな……などと考えても時間の無駄のため、金輪際、この考えは捨てることにする。
流れ行く世界が、ほんの少し色を変えて見えたのは、気のせいか。
こうして、あたしの穏やかだった日常はとんでもない速度で大きく変わっていくこととなる。
目立たないように目立たないようにと生きてきたのに、舞台の神様はどうやらあたしにまたスポットライトを当てたいらしい。
そもそも歩く発光機のような男が常に隣にいるのだからもうお手上げである。
彼の言う二年後には、自らの幕は自らでしっかり下ろすのだと改めて誓いながら、あたしは新しい世界へと脚を一歩踏み出したのだった。
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