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義足
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調査部は誰も声を出さず、黙々と段ボールに私物を入れている。部員の冷たい視線が背中に刺さる。課長一人だけ社長室長になったのだからそうなのだろう。だが今後の影響力を考えて周平には不満をぶつけない。誰も同じ職場に配置された者はいない。会社の腐った部分を見てきた者たちなのだ。それぞれが分離されて管理される。
内ポケットのバイブレーターの携帯が震えて覗き込む。舅だ。思わず救われたように部屋を出る。留守電で地下の喫茶店にいるという伝言が残っている。
この喫茶店は運転手のたまり場で周平はほとんど利用しない。窓際に舅がつまらなそうに煙草をふかせている。
「広島の関連会社のようですね?」
人事部から回ってきた通達の片隅に鈴木の名前が載っていた。柳沢も周平も知らない台湾の現地法人の名前が出ていた。
「お前はうまく立ち回ったな」
あなたは私を捨てて行ったのですよ。そう心の中でつぶやいた。
「広島に?」
「馬鹿な!」
言葉に力がない。
「相談役と組んだのではないですか?」
「確かに俺が動いて相談役を腐った池の底から引き揚げた」
「ならなぜ捨てられたのですか?」
「俺も柳沢も目立ちすぎたということか」
確かにこれからのM商事では忘れてしまいたい過去だ。これはM銀行の頭取と顧問の意志だろう。4者会談の中で密かに合意されたのだろう。会長の意志でもあるわけだ。
「これからどうするのです?」
「黒崎にこれから会う。このままでは引き下がれない。どうだ。もう一度組んでみないか?」
舅の義足がカタカタと震えている。
「いえ、私も退職を考えています」
内ポケットのバイブレーターの携帯が震えて覗き込む。舅だ。思わず救われたように部屋を出る。留守電で地下の喫茶店にいるという伝言が残っている。
この喫茶店は運転手のたまり場で周平はほとんど利用しない。窓際に舅がつまらなそうに煙草をふかせている。
「広島の関連会社のようですね?」
人事部から回ってきた通達の片隅に鈴木の名前が載っていた。柳沢も周平も知らない台湾の現地法人の名前が出ていた。
「お前はうまく立ち回ったな」
あなたは私を捨てて行ったのですよ。そう心の中でつぶやいた。
「広島に?」
「馬鹿な!」
言葉に力がない。
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「いえ、私も退職を考えています」
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