夢の橋

伯爵8

　襲撃で暴漢は２人が死に１人が担がれて逃げた。黒揚羽が枢密院まで戻って警官を呼んでいた。蜘蛛は死んだ書生を背負い、私は腹を裂かれた総司を背負った。
　すぐに総司は源内の部屋に運ばれた。
「源内は医者でもあるのだ」
　娘が源内が縫った腹に包帯を巻いている。その指が乳首に触れている。総司が初めて女と知ったからだろうか。
「トラベラーでも死ぬことはあるのですか？」
「もちろん死ぬ。博士の話では未来のその人も消えるのだそうだ」
「消える？」
「何かの形で死亡するのだと言っている。時間の調整と言うのだそうだ。だが詳しいことはまだないも分かっていない」
「トラベラーがいると言うことも私の世界でも知られていません」
「いや、それは違う。一部の人間がいつの時代も調べている」
「そうだよ。私の初代の源内もその一人なのだ。彼もトラベラーの才能があり私に一度だけ会いに来た」
　源内が手袋を脱いで言う。
「それを一派的に正夢と言うのだが、実は夢ではないのさ。それを正夢で済まさないのが科学者なのだよ」
「総司は？」
「５針縫ったが内臓には損傷がなかった。ただこの時代は麻酔の調整ができないのでアヘンを使ったのでしばらく目覚めないだろうな？」
　娘が総司の体を消毒液で丁寧に拭いている。茂みの中まで指を入れて拭いている。それから新しい浴衣を着せる。まるで人形のようだ。もう伯爵と源内の姿はない。
「私男になりたかったな」
「どうして？」
「男だったら総司が抱けるもの。それに私も抱いてみたい」
「変わってるな？」
「私は父源内の子供を産んだ。伯爵の子も」