45 / 182
出会う7
しおりを挟む
「本当にいいのですか?」
社長室で念を押して書類を説明しサインをもらう。これは検査部がまとめあげた不良債権の行状だ。恐らくこの社長はバブルの僅かでも甘んじたと言うことはないのだろう。
「そういう君もバブルを知らない新入社員ではないか?」
と言われて頷いた。まるで整理のために入社したようなものだ。その足で会社を出ると顧問弁護士のところに書類を届ける。帰りは乗り継いで蒲田に出る。まだ5時で外も明るい。この時間にこの立ち飲み屋がやっているとは知らなかった。それでも中には年配の客が5人テーブルを囲んで飲んでいる。
「今日は早いね?」
とおばさんお顔が奥から覗く。仕入れた商品を段ボールから出している。
「何時から?」
「11時から開いている。時間帯に合わせて常連がいるのさ」
と言ってビールを抜いてウインナーを2本くれる。私が金を払っていると階段に向けて叫んでいる。そうするとジャージの足が見える。おばさんは背中を向けてインスタントのカレーを食べている。
「早いのね?」
「この時間も店に出るの?」
「ううん。食事の間だけ」
ようやく覚えてくれたようだ。
「読んだ?」
「もう2回目。それで夢見ちゃった」
「夢見たら覚えている?」
「覚えていない。でも昨日の夢は何だか覚えている。私が小柄を投げた夢」
「刺さるの見た?」
「右足に刺さった」
総司はしっかり覚えていた。
「総司」
と言いかけた時すでに急な階段に消えていた。
社長室で念を押して書類を説明しサインをもらう。これは検査部がまとめあげた不良債権の行状だ。恐らくこの社長はバブルの僅かでも甘んじたと言うことはないのだろう。
「そういう君もバブルを知らない新入社員ではないか?」
と言われて頷いた。まるで整理のために入社したようなものだ。その足で会社を出ると顧問弁護士のところに書類を届ける。帰りは乗り継いで蒲田に出る。まだ5時で外も明るい。この時間にこの立ち飲み屋がやっているとは知らなかった。それでも中には年配の客が5人テーブルを囲んで飲んでいる。
「今日は早いね?」
とおばさんお顔が奥から覗く。仕入れた商品を段ボールから出している。
「何時から?」
「11時から開いている。時間帯に合わせて常連がいるのさ」
と言ってビールを抜いてウインナーを2本くれる。私が金を払っていると階段に向けて叫んでいる。そうするとジャージの足が見える。おばさんは背中を向けてインスタントのカレーを食べている。
「早いのね?」
「この時間も店に出るの?」
「ううん。食事の間だけ」
ようやく覚えてくれたようだ。
「読んだ?」
「もう2回目。それで夢見ちゃった」
「夢見たら覚えている?」
「覚えていない。でも昨日の夢は何だか覚えている。私が小柄を投げた夢」
「刺さるの見た?」
「右足に刺さった」
総司はしっかり覚えていた。
「総司」
と言いかけた時すでに急な階段に消えていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる