夢の橋

生活6

　暗殺事件があってから岩倉が変わったという。
　玄道は原稿を書きながら私にいろいろ話をしてくれる。
「今の岩倉はすでに変節している。立憲はやむ得ぬと考えている。それで最近は大隈重信と伊藤博文と交互に会っている。今双方を記者に調べさせている。岩倉はどちらを押すかだが、私は伊藤と見た」
　それで今回は伊藤博文で論陣を張っている。私も何度も集会の撮影に出かけている。
「伯爵も参与で天皇と伊藤を何度も会わせている。次は内閣をどうするかだ。それと」
と言って手紙を見せる。
「あの鼠の一押しの作者だが、一葉と言うのだな？͡その出版社が出してもいいと」
「この手紙持って行ってもいいですか？」
「ああ、ついでにその発表の報告も貰ってきてくれ」
と言われるなり走り出していた。
「一葉さん！」
と飛び込んだ。一葉は庭で小さな畑を作っている。
「本が決まりました」
「ええ、ほんと？」
　手紙を見て涙を流している。
「作家で生きて行けるのね？もう半分あきらめていた」
「私は担当ですね？」
「これからもお願いします」
　彼女は庭から上がってきてお茶を入れてくれる。
「早くあの総司さんを連れてきてくださいよ？」
「はい」