81 / 192
暗殺6
しおりを挟む
慎吾は戻って来ず明け方に順慶の兵が山道を登っている。どうも修験堂を攻めること決めたようだ。茉緒は下忍を起こし兵の後ろに張り付く。この道はかなり険しく馬などは使えない。おそらく藤林が先導しているのだろう。
未明には修験堂が見えて燃え上がっている。茉緒は下忍を連れて回り道をして修験堂の裏側に出る。修験者たちの死体がおびただしく転がっている。奇襲は成功したように見える。獣道から崖を登る。修験者は至る所の洞穴に住んでいる。ここに逃げ込まれたら追い詰めるのは難しい。すでに戦闘が始まって1刻半になる。前方に朝陽を浴びた大きな岩山がある。筒井の旗がなびいている。
茉緒が見上げたその時、にわかに黒い雲が湧いてきて雷が鳴り突風が吹いた。旗とともに兵が空に飛んでばらばら落ちてくる。果心居士がいる!
兵が雪崩を打つように撤退を始めている。茉緒は草むらに身を潜ませて眺めている。順慶が兵に抱えられるように降りてくる。殿(しんがり)に藤林の忍者が修験者と戦いながら降りてくる。茉緒は下忍に手を上げて小頭を取り巻いている修験者に切り込んでいく。
「助かった」
「あれは何だ?」
「果心居士よ。誰も勝てないわ」
「あれが果心居士か。修験者も2百ほど倒したが筒井の兵も2百は失った」
「藤林は?」
「30人出したが半分は失った。お頭は本陣に残っている。やるなら戻る時がチャンスだ」
未明には修験堂が見えて燃え上がっている。茉緒は下忍を連れて回り道をして修験堂の裏側に出る。修験者たちの死体がおびただしく転がっている。奇襲は成功したように見える。獣道から崖を登る。修験者は至る所の洞穴に住んでいる。ここに逃げ込まれたら追い詰めるのは難しい。すでに戦闘が始まって1刻半になる。前方に朝陽を浴びた大きな岩山がある。筒井の旗がなびいている。
茉緒が見上げたその時、にわかに黒い雲が湧いてきて雷が鳴り突風が吹いた。旗とともに兵が空に飛んでばらばら落ちてくる。果心居士がいる!
兵が雪崩を打つように撤退を始めている。茉緒は草むらに身を潜ませて眺めている。順慶が兵に抱えられるように降りてくる。殿(しんがり)に藤林の忍者が修験者と戦いながら降りてくる。茉緒は下忍に手を上げて小頭を取り巻いている修験者に切り込んでいく。
「助かった」
「あれは何だ?」
「果心居士よ。誰も勝てないわ」
「あれが果心居士か。修験者も2百ほど倒したが筒井の兵も2百は失った」
「藤林は?」
「30人出したが半分は失った。お頭は本陣に残っている。やるなら戻る時がチャンスだ」
0
あなたにおすすめの小説
帰蝶の恋~Butterfly effect~
平梨歩
歴史・時代
ときは群雄割拠の戦国時代。
尾張国の織田信長と政略結婚で結ばれた、
美濃国の姫君・帰蝶。
「女にとって結婚は戦と同じ」
そう覚悟しつつも、
恋する心を止めることはできない。
自らの思いにまっすぐに、
強く逞しく生きた帰蝶の生涯と、
彼女を愛した男たちの戦いを綴る、
戦国恋愛絵巻。
※歴史小説に初挑戦です。
史実に基づいて書き綴っていきますが、
多くのフィクションが含まれます。
★2025.7.31
第11回歴史・時代小説大賞で【奨励賞】をいただきました。
ありがとうございました。
ソラノカケラ ⦅Shattered Skies⦆
みにみ
歴史・時代
2026年 中華人民共和国が台湾へ軍事侵攻を開始
台湾側は地の利を生かし善戦するも
人海戦術で推してくる中国側に敗走を重ね
たった3ヶ月ほどで第2作戦区以外を掌握される
背に腹を変えられなくなった台湾政府は
傭兵を雇うことを決定
世界各地から金を求めて傭兵たちが集まった
これは、その中の1人
台湾空軍特務中尉Mr.MAITOKIこと
舞時景都と
台湾空軍特務中士Mr.SASENOこと
佐世野榛名のコンビによる
台湾開放戦を描いた物語である
※エースコンバットみたいな世界観で描いてます()
クロワッサン物語
コダーマ
歴史・時代
1683年、城塞都市ウィーンはオスマン帝国の大軍に包囲されていた。
第二次ウィーン包囲である。
戦況厳しいウィーンからは皇帝も逃げ出し、市壁の中には守備隊の兵士と市民軍、避難できなかった市民ら一万人弱が立て籠もった。
彼らをまとめ、指揮するウィーン防衛司令官、その名をシュターレンベルクという。
敵の数は三十万。
戦況は絶望的に想えるものの、シュターレンベルクには策があった。
ドナウ河の水運に恵まれたウィーンは、ドナウ艦隊を蔵している。
内陸に位置するオーストリア唯一の海軍だ。
彼らをウィーンの切り札とするのだ。
戦闘には参加させず、外界との唯一の道として、連絡も補給も彼等に依る。
そのうち、ウィーンには厳しい冬が訪れる。
オスマン帝国軍は野営には耐えられまい。
そんなシュターレンベルクの元に届いた報は『ドナウ艦隊の全滅』であった。
もはや、市壁の中にこもって救援を待つしかないウィーンだが、敵軍のシャーヒー砲は、連日、市に降り注いだ。
戦闘、策略、裏切り、絶望──。
シュターレンベルクはウィーンを守り抜けるのか。
第二次ウィーン包囲の二か月間を描いた歴史小説です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
暁の果てに火は落ちず ― 大東亜戦記・異聞
藤原遊
歴史・時代
―原爆が存在しなかった世界で、大東亜戦争は“終わらなかった”。―
硫黄島、沖縄、小笠原、南西諸島。
そして、九州本土決戦。
米軍上陸と同時に日本列島は泥濘の戦場と化し、
昭和天皇は帝都東京に留まり、国体を賭けた講和が水面下で進められる。
帝国軍高官・館林。
アメリカ軍大将・ストーン。
従軍記者・ジャスティン。
帝都に生きる女学生・志乃。
それぞれの視点で描かれる「終わらない戦争」と「静かな終わり」。
誰も勝たなかった。
けれど、誰かが“存在し続けた”ことで、戦は終わる。
これは、破滅ではなく“継がれる沈黙”を描く、
もうひとつの戦後史。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる