2 / 45
陥穽2
しおりを挟む
ここは漁師ばかりで私の話し相手はいない。会社と同じだ。だがここでは一人で心豊かにいられる。話さなくても聞いているだけで楽しいのだ。8時になると漁師はすっかりいなくなって近くの工場から入れ替わりに座っていく。彼らの話も面白いのだ。
私はビールのコップを横においてノートに融資手控えとしてメモを小まめに取っている。これは審査部長になってから書き始めたものだ。社長の言うように最後に責任を取らせれる時の手控えのつもりだ。どういうことが起こるのかも今の私には分からない。ここの融資の半分はすでに上場した関連会社の孫会社の不動産購入資金だ。世間で言う地上げ資金の繋ぎが半分以上ある。銀行なら100%融資否決案件ばかりだ。
すでに私が審査部長になった頃には再建管理委員会が設けられていて全体の融資を色分けする全社合同の会議が始まっていた。委員長は社長で本社の社長が未公開株事件で拘留中だから専務が座長で参加していた。ここの情報は私には全く入って来ない。色分けだけでなく会社の方向性も見極めているようだ。
「銀座のクラブに行ったが万札が飛び交っていたな」
常連の工場長が大声で言う。だが残念ながらもうすでにバブルは破裂している。
「このままじゃまた2階の店員の空き部屋に泊まることになるわよ」
ママに言われて頷いている。この部屋に酔っぱらって泊まるのはもう20回は超えている。
「この際、ここに移って来るか?」
「駄目よ。ママの餌食になるわよ」
耳元で囁いたのは一番若い35歳の女店員だ。私はうんうんと頷いて日本酒に切り替えてコップで飲む。彼女はやはり漁師と結婚していて親父の船に夫が乗っている。
「昔はここには5人の店員が住み込みをしていたのよ。私もその一人よ。あの部屋には一番モテてた女子店員が住んでいたの。私の2つ下で親父の長男が結婚する予定だったの」
「君が結婚したのじゃないか?」
「相手の彼女がいなくなったから」
「いなくなった?」
「あの部屋から消えたの」
「消える?」
「そうよ。このの伝説になっているわ」
「今の世の中にもそのような伝説はあるのだな」
今の私の精神状態もそれを信じたい気持ちになっている。私もまた消えてしまいたい気持ちなのだ。
「今夜も泊めてもらうよ」
私はビールのコップを横においてノートに融資手控えとしてメモを小まめに取っている。これは審査部長になってから書き始めたものだ。社長の言うように最後に責任を取らせれる時の手控えのつもりだ。どういうことが起こるのかも今の私には分からない。ここの融資の半分はすでに上場した関連会社の孫会社の不動産購入資金だ。世間で言う地上げ資金の繋ぎが半分以上ある。銀行なら100%融資否決案件ばかりだ。
すでに私が審査部長になった頃には再建管理委員会が設けられていて全体の融資を色分けする全社合同の会議が始まっていた。委員長は社長で本社の社長が未公開株事件で拘留中だから専務が座長で参加していた。ここの情報は私には全く入って来ない。色分けだけでなく会社の方向性も見極めているようだ。
「銀座のクラブに行ったが万札が飛び交っていたな」
常連の工場長が大声で言う。だが残念ながらもうすでにバブルは破裂している。
「このままじゃまた2階の店員の空き部屋に泊まることになるわよ」
ママに言われて頷いている。この部屋に酔っぱらって泊まるのはもう20回は超えている。
「この際、ここに移って来るか?」
「駄目よ。ママの餌食になるわよ」
耳元で囁いたのは一番若い35歳の女店員だ。私はうんうんと頷いて日本酒に切り替えてコップで飲む。彼女はやはり漁師と結婚していて親父の船に夫が乗っている。
「昔はここには5人の店員が住み込みをしていたのよ。私もその一人よ。あの部屋には一番モテてた女子店員が住んでいたの。私の2つ下で親父の長男が結婚する予定だったの」
「君が結婚したのじゃないか?」
「相手の彼女がいなくなったから」
「いなくなった?」
「あの部屋から消えたの」
「消える?」
「そうよ。このの伝説になっているわ」
「今の世の中にもそのような伝説はあるのだな」
今の私の精神状態もそれを信じたい気持ちになっている。私もまた消えてしまいたい気持ちなのだ。
「今夜も泊めてもらうよ」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
月の綺麗な夜に終わりゆく君と
石原唯人
恋愛
ある日、十七才の春に僕は病院で色のない少女と出会う。
それは、この場所で出会わなければ一生関わる事のなかった色のない彼女とモノクロな僕の
秘密の交流。
彼女との交流によって諦観でモノクロだった僕の世界は少しずつ色づき始める。
十七歳、大人でも子どもでもないトクベツな時間。
日常の無い二人は限られて時間の中で諦めていた当たり前の青春へと手を伸ばす。
不器用な僕らの織り成す物語。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【最新版】 日月神示
蔵屋
ミステリー
私は思想と言論の自由のもと、此処に岡本天明氏が最高級神霊の神憑りにあい神の意志により自動書記さされた日月神示の内容を編集し今回『【最新版】日月神示』として小説を執筆致しました。
この日月神示は第二次世界大戦中に自動書記されたものであるにも関らず今尚斬新なものであり、その多くは現代社会の通説、また、価値観と著しく異なるものだからです。
この日月神示を読み解いていきますと
次のようなことがわかったのです。
即ち『悪は滅び善は必ず栄えるのだ』と。
そして既に始まっている三千世界の大洗濯によりこの世の最後の審判でこの世の偽悪醜に満ちた世界を綺麗にする浄化作用により罪深き者は滅びる一方でひたすら善一筋で質素に生きた人は幸せな人生を歩んでいる、ということも分かったのです。
さて、最近日月神示の予言本に不安を抱いている方もあると思うがまったく心配いらない。
何故なら日月神示では「取り越し苦労や過ぎ越し苦労はするな!」
「今に生きよ!」
「善一筋で生きよ!」
「身魂磨きをせよ!」
「人間の正しい生き方」
「人間の正しい食生活」
「人間の正しい夫婦のあり方」
「身も心も神さまからお借りしているのじゃから夜になって寝る前に神さまに一旦お返しするのじゃ。そうしたら身と心をどのようにしたらよいか、分かるじゃろ!」
たったのこれだけを守れば良いということだ。
根拠のない書籍や情報源等に惑わされてはダメだ。
日月神示も出口王仁三郎もそのようなことは一切言っていない。
これらの書籍や情報源は「日月神示」が警告する「臣民を惑わすものが出てくるから気をつけよ!」
という言葉に注目して欲しい。
今回、私は読者の皆さんに間違った解釈をされている日月神示を分かりやすく解説していくことにしました。
どうか、最後までお読み下さい。
日月神示の予言については、私が執筆中の「神典日月神示の真実」をお読み下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる