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陥穽2
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ここは漁師ばかりで私の話し相手はいない。会社と同じだ。だがここでは一人で心豊かにいられる。話さなくても聞いているだけで楽しいのだ。8時になると漁師はすっかりいなくなって近くの工場から入れ替わりに座っていく。彼らの話も面白いのだ。
私はビールのコップを横においてノートに融資手控えとしてメモを小まめに取っている。これは審査部長になってから書き始めたものだ。社長の言うように最後に責任を取らせれる時の手控えのつもりだ。どういうことが起こるのかも今の私には分からない。ここの融資の半分はすでに上場した関連会社の孫会社の不動産購入資金だ。世間で言う地上げ資金の繋ぎが半分以上ある。銀行なら100%融資否決案件ばかりだ。
すでに私が審査部長になった頃には再建管理委員会が設けられていて全体の融資を色分けする全社合同の会議が始まっていた。委員長は社長で本社の社長が未公開株事件で拘留中だから専務が座長で参加していた。ここの情報は私には全く入って来ない。色分けだけでなく会社の方向性も見極めているようだ。
「銀座のクラブに行ったが万札が飛び交っていたな」
常連の工場長が大声で言う。だが残念ながらもうすでにバブルは破裂している。
「このままじゃまた2階の店員の空き部屋に泊まることになるわよ」
ママに言われて頷いている。この部屋に酔っぱらって泊まるのはもう20回は超えている。
「この際、ここに移って来るか?」
「駄目よ。ママの餌食になるわよ」
耳元で囁いたのは一番若い35歳の女店員だ。私はうんうんと頷いて日本酒に切り替えてコップで飲む。彼女はやはり漁師と結婚していて親父の船に夫が乗っている。
「昔はここには5人の店員が住み込みをしていたのよ。私もその一人よ。あの部屋には一番モテてた女子店員が住んでいたの。私の2つ下で親父の長男が結婚する予定だったの」
「君が結婚したのじゃないか?」
「相手の彼女がいなくなったから」
「いなくなった?」
「あの部屋から消えたの」
「消える?」
「そうよ。このの伝説になっているわ」
「今の世の中にもそのような伝説はあるのだな」
今の私の精神状態もそれを信じたい気持ちになっている。私もまた消えてしまいたい気持ちなのだ。
「今夜も泊めてもらうよ」
私はビールのコップを横においてノートに融資手控えとしてメモを小まめに取っている。これは審査部長になってから書き始めたものだ。社長の言うように最後に責任を取らせれる時の手控えのつもりだ。どういうことが起こるのかも今の私には分からない。ここの融資の半分はすでに上場した関連会社の孫会社の不動産購入資金だ。世間で言う地上げ資金の繋ぎが半分以上ある。銀行なら100%融資否決案件ばかりだ。
すでに私が審査部長になった頃には再建管理委員会が設けられていて全体の融資を色分けする全社合同の会議が始まっていた。委員長は社長で本社の社長が未公開株事件で拘留中だから専務が座長で参加していた。ここの情報は私には全く入って来ない。色分けだけでなく会社の方向性も見極めているようだ。
「銀座のクラブに行ったが万札が飛び交っていたな」
常連の工場長が大声で言う。だが残念ながらもうすでにバブルは破裂している。
「このままじゃまた2階の店員の空き部屋に泊まることになるわよ」
ママに言われて頷いている。この部屋に酔っぱらって泊まるのはもう20回は超えている。
「この際、ここに移って来るか?」
「駄目よ。ママの餌食になるわよ」
耳元で囁いたのは一番若い35歳の女店員だ。私はうんうんと頷いて日本酒に切り替えてコップで飲む。彼女はやはり漁師と結婚していて親父の船に夫が乗っている。
「昔はここには5人の店員が住み込みをしていたのよ。私もその一人よ。あの部屋には一番モテてた女子店員が住んでいたの。私の2つ下で親父の長男が結婚する予定だったの」
「君が結婚したのじゃないか?」
「相手の彼女がいなくなったから」
「いなくなった?」
「あの部屋から消えたの」
「消える?」
「そうよ。このの伝説になっているわ」
「今の世の中にもそのような伝説はあるのだな」
今の私の精神状態もそれを信じたい気持ちになっている。私もまた消えてしまいたい気持ちなのだ。
「今夜も泊めてもらうよ」
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