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陥穽3
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深い眠りから立ち上がる。水を飲もうとしてこうして起きることは珍しくない。
だがこの景色は街中だ。東京の街でもなく、私の故郷の大阪の街でもない。オリオン通りという繁華街が見える。そうだ一度だけこの街を訪れたことがある。歩いているのは22歳の大学3回生の私だ。髪の毛は肩まで長い。大学紛争が治まりかけていた頃で私はノンポリとして小説を書いていた。
この頃私は同じゼミの同じ1浪の女性が好きになり親友と争っていた。だが滑稽なことに彼女は二人には目もくれないで別の活動家を好きになり同棲をしていた。その頃はそんな事実には気づかず盲目に彼女を求め続けていた。それで何度も長い手紙を彼女に送っていたのだ。
そうだ。この通りに入ると彼女の母の立ち飲み屋があった。私は学校に出なくなった彼女を訪ねて地図を手に3回生の夏休みにこの街に来たのだ。ゼミの噂では彼女は彼氏と共にイランに行ったともっぱらであった。2回生の泊まり込みのゼミで彼女を強引に口づけをして以来1年も会っていなかった。
これは夢ではなく確実な思い出の風景だ。人気の店で表で半時間待って中に入った。あっと声を出しそうなくらい中の人は彼女に似ていた。だが2周りも年上だ。思いつめたような目は娘とそっくりだ。
「大学の同窓生で」
「へえ、聖子はもう1年も戻っていませんよ」
ビール瓶を出してくれる。彼女は実家は飲み屋だと言っていた。だがほとんど故郷の話をすることはなかった。ただ酒飲みになったのはこの店を手伝っていたからだと言っていた。同年輩の男性が包丁を握っていた。
「こちらに帰っているかと?」
「田舎が嫌いで戻ってこないと思っていますよ」
客の注文の合間に答えてくれる。私はゼミで撮った写真をカウンターに置いた。13人が教授を囲んで乾杯している。私と親友が彼女の両左右にいる。
「こんなに笑っている聖子を見たの初めてよ」
1時間も飲んでいて松七五三聖子と宛てた手紙を渡して暖簾を出た。初恋と言ったら遅れの初恋だったのかもしれない。そこから行き場を失って新宿行きの夜行列車に飛び乗った。これも彼女がゼミでの紹介で話していたことだった。彼女はむしゃくしゃしたら夜行列車で度々新宿に出ていたという話を思い出したのだ。より鮮烈だったのは着いた新宿でバスの放火事件の巻き添えを食って警察に留められた嫌な記憶のせいだ。
甲府は淡い初恋と鮮烈なこの事件の思い出と重なるのだ。
だがこの景色は街中だ。東京の街でもなく、私の故郷の大阪の街でもない。オリオン通りという繁華街が見える。そうだ一度だけこの街を訪れたことがある。歩いているのは22歳の大学3回生の私だ。髪の毛は肩まで長い。大学紛争が治まりかけていた頃で私はノンポリとして小説を書いていた。
この頃私は同じゼミの同じ1浪の女性が好きになり親友と争っていた。だが滑稽なことに彼女は二人には目もくれないで別の活動家を好きになり同棲をしていた。その頃はそんな事実には気づかず盲目に彼女を求め続けていた。それで何度も長い手紙を彼女に送っていたのだ。
そうだ。この通りに入ると彼女の母の立ち飲み屋があった。私は学校に出なくなった彼女を訪ねて地図を手に3回生の夏休みにこの街に来たのだ。ゼミの噂では彼女は彼氏と共にイランに行ったともっぱらであった。2回生の泊まり込みのゼミで彼女を強引に口づけをして以来1年も会っていなかった。
これは夢ではなく確実な思い出の風景だ。人気の店で表で半時間待って中に入った。あっと声を出しそうなくらい中の人は彼女に似ていた。だが2周りも年上だ。思いつめたような目は娘とそっくりだ。
「大学の同窓生で」
「へえ、聖子はもう1年も戻っていませんよ」
ビール瓶を出してくれる。彼女は実家は飲み屋だと言っていた。だがほとんど故郷の話をすることはなかった。ただ酒飲みになったのはこの店を手伝っていたからだと言っていた。同年輩の男性が包丁を握っていた。
「こちらに帰っているかと?」
「田舎が嫌いで戻ってこないと思っていますよ」
客の注文の合間に答えてくれる。私はゼミで撮った写真をカウンターに置いた。13人が教授を囲んで乾杯している。私と親友が彼女の両左右にいる。
「こんなに笑っている聖子を見たの初めてよ」
1時間も飲んでいて松七五三聖子と宛てた手紙を渡して暖簾を出た。初恋と言ったら遅れの初恋だったのかもしれない。そこから行き場を失って新宿行きの夜行列車に飛び乗った。これも彼女がゼミでの紹介で話していたことだった。彼女はむしゃくしゃしたら夜行列車で度々新宿に出ていたという話を思い出したのだ。より鮮烈だったのは着いた新宿でバスの放火事件の巻き添えを食って警察に留められた嫌な記憶のせいだ。
甲府は淡い初恋と鮮烈なこの事件の思い出と重なるのだ。
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