冥道

夢人

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陥穽4

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「今日は生き生きしていますね」
 唯一のスタッフが声をかける。この部屋には彼女しかいなくてまるで留置されているようにも思う。机には決裁ファイルが山のように積み上げられている。どうせ利払い分を載せた延長稟議ばかりなのだ。だから急がない。ただ自分の判を押すと罪は深くなっていくばかりだ。
「判を押す前に社長室に上がってください」
と言われて1つ上の階の社長室に上がる。昔は3人いた受付嬢が年配の女性1人になっている。
「いやあ、久しぶりだな?」
 社長の白髪も目立って増えている。社長と私は外人部隊では同期なのだ。同じ日に挨拶をしてこの会社の門を潜ったのだ。私は平で社長は顧問という肩書だった。それで時々コーヒーを飲む仲になった。
「せっかく審査部長になったのに判押しばかりで悪いな」
 社長は自らコーヒーを入れて私に渡す。
「1年前オーナーは逮捕されこの会社を上場しろと弁護士を通じて指示してきたが、無謀にも私はその命令に反して上場を延期する造反をした」
 覚えている。役員間では相当非難されたのだ。
「だがオーナーの判断が正しかったよ。この事件がこんな政界を揺るがすとは思ってもみなかった」
 その時私も社長の判断に反対した記憶がある。
「ために、今回会社が清算する羽目になった。悪かったな」
「いつくらいが目途ですか?」
「最低でも3年いや5年はかかるな。債権の色分けが決定した。本社が引き取る債務と売り払う債務と裏で清算する債務に仕分け最後は銀行に背負ってもらう。まだ作業は大変だ。審査部は当面ファイルの仕分けだな」
「社員数は?」
「500人まで減らしたがこれからは本社や関連会社の引き取りはない。肩叩きで50人まで減らす。今いる私も含めて部長以上はその50人に残るだろうな。敗戦処理をして罪を償うのだ。辛い役目だ」
 恐れていた時がやってきた。今引き取り手のないものだけが取り残されているのだ。
「まだ内緒だが君は1週間後は人事部長だ」
 なぜ肩叩き役なのだ。 
「幾つになった?」
「36歳でバツイチです」
 仕事人間で31歳に結婚した妻に離婚されている。一人の娘がいて今も送金している。
「独り身で結果よかったな」








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