冥道

夢人

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超常12

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 案の定この記事が出て私はまた専務に呼ばれ一方的に怒鳴られた。だが心は全く痛まない。どこか晴れ晴れとした気持ちになった。この週刊誌は窓際教室の誰もが手にしていたのには驚いた。その日は珍しく直帰して居酒屋に戻り美味しいビールを飲んだ。ほろ酔いでベットに倒れ込んだ。
「男やもめの部屋って」
 聖子が私のベットに腰かけている。
「ここまで来れるようになったのか?」
「私も色々なことを試してみたの。私にも分からないことがたくさんある」
「私はちんぷんかんぷんだよ」
 聖子は狭い部屋を歩き回っている。ここにいる私も今は大学生の頃の私の姿をしている。なのに考えているのは今の年齢の私だ。だが聖子は体も心も昔のままだ。
「でも私の下宿もよく似たものだったわ。一度二人が訪ねてきたことあったね?」
「そうだ。1か月も顔を見ないことがあって片思いの恋敵同士で訪ねたな」
「あの時は困ったわ。脱ぎ差しの服や下着を押入れに投げ込んだわ。二人には悪かったけどあの男と同棲を始めた時期で風邪をうつされて」
 やはり同棲をしていたのだ。
「独り身だと寂しくない?」
「いや、結婚して妙に女性に興味をなくしたな。大学時代は女性に甘い幻想があったな」
「私は変かしら。今でも抱かれたくて悶えるわ。昔もそう。君と最初で最後のキスをした時ももう抱かれてもいいと」
 なぜ分からなったのか。
「でも君は最近ずいぶん明るくなったと思うわ」
「確かに少しだが目標が見えてきたように思う」
「今何をしている?」
「会社の人員整理だよ。暗い仕事だよ」
「でも私の獄はもっともっと暗かったわ。でも今はまだ話したくない」















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