43 / 45
昇華1
しおりを挟む
「最近生き生きしているわよ」
ママに声をかけられて顔を上げる。ビールを飲みながら投資会社の原案を読んでいる。これは顧問が持ってきたアメリカの投資会社の実例だ。顧問は早くこの会社からの転職組の持ち場を決めるように言われている。何度も調整をして予定の20人の中から5人の辞退者を埋めるべく面接をした。ようやく18人が決まった。本社に知られず極秘に行うので余計に時間がかかった。だが前向きな苦労は心が弾む。
「最近は君を見つけ辛くなったのよ」
聖子の姿がいつもより薄くなっている。
「どうしてだよ?」
「きっと君の中の絶望が薄まっているのだと思うわ。私は絶望の細い径を通って君にたどり着いているのよ」
「私が絶望から抜け出してしまうと聖子にもう会えなくなるのか?」
「それは分からないわ」
聖子は居酒屋の私の定席の前に座っている。
「次はミーと会いたいわ」
「まさか見ていた?」
「いいえ、君の中の残像を見た。とても気持ちよさそうな顔をしていたわよ。私もあの獄で同じようなセックスを強要されたけど、私はセックスは喜びではなく苦痛でしかなかったわ」
思い出したのか顔が歪んでいる。
「君が来れやすくするには私はどうすれば?」
「ありのまましかないわ」
ありのままか。だが確かに私は絶望の中にいた。ここで自殺をした社員と紙一重の位置にいた。もし聖子が現れなかったら私も自殺していたかもしれない。
「かも知れないわ。私も獄に入れられて3か月目に死という逃げ道に踏み込んだ。あまりもの苦痛に死の方が楽だと思った」
「なぜ拘束されていたのだ?」
「元々初めてイランに入ったのはあの男のルートの集団で、その頃はイランでは一番有名な反政府集団だった。でも入って見て知ったのはそういう集団が至る所にできていて微妙に主張が違うの。それでこの集団に襲われて囚われた」
「あの男も?」
「ええ、でもあの男は仲間を裏切った。進んで私達が密偵であると」
「そんなことがあるの?」
「どの集団も密偵を送っていた時であの男はそれを巧みに使ったのよ。自白を迫られても私達は自白のしようもなかったの」
その時に聖子が急に歪んだ。
「もう寝た方がいいわよ」
肩を揺すっていたのはママだ。居酒屋にはもう客は誰もいなくママもエプロンを外して入口のシャターも閉まっている。
ママに声をかけられて顔を上げる。ビールを飲みながら投資会社の原案を読んでいる。これは顧問が持ってきたアメリカの投資会社の実例だ。顧問は早くこの会社からの転職組の持ち場を決めるように言われている。何度も調整をして予定の20人の中から5人の辞退者を埋めるべく面接をした。ようやく18人が決まった。本社に知られず極秘に行うので余計に時間がかかった。だが前向きな苦労は心が弾む。
「最近は君を見つけ辛くなったのよ」
聖子の姿がいつもより薄くなっている。
「どうしてだよ?」
「きっと君の中の絶望が薄まっているのだと思うわ。私は絶望の細い径を通って君にたどり着いているのよ」
「私が絶望から抜け出してしまうと聖子にもう会えなくなるのか?」
「それは分からないわ」
聖子は居酒屋の私の定席の前に座っている。
「次はミーと会いたいわ」
「まさか見ていた?」
「いいえ、君の中の残像を見た。とても気持ちよさそうな顔をしていたわよ。私もあの獄で同じようなセックスを強要されたけど、私はセックスは喜びではなく苦痛でしかなかったわ」
思い出したのか顔が歪んでいる。
「君が来れやすくするには私はどうすれば?」
「ありのまましかないわ」
ありのままか。だが確かに私は絶望の中にいた。ここで自殺をした社員と紙一重の位置にいた。もし聖子が現れなかったら私も自殺していたかもしれない。
「かも知れないわ。私も獄に入れられて3か月目に死という逃げ道に踏み込んだ。あまりもの苦痛に死の方が楽だと思った」
「なぜ拘束されていたのだ?」
「元々初めてイランに入ったのはあの男のルートの集団で、その頃はイランでは一番有名な反政府集団だった。でも入って見て知ったのはそういう集団が至る所にできていて微妙に主張が違うの。それでこの集団に襲われて囚われた」
「あの男も?」
「ええ、でもあの男は仲間を裏切った。進んで私達が密偵であると」
「そんなことがあるの?」
「どの集団も密偵を送っていた時であの男はそれを巧みに使ったのよ。自白を迫られても私達は自白のしようもなかったの」
その時に聖子が急に歪んだ。
「もう寝た方がいいわよ」
肩を揺すっていたのはママだ。居酒屋にはもう客は誰もいなくママもエプロンを外して入口のシャターも閉まっている。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
【最新版】 日月神示
蔵屋
ミステリー
私は思想と言論の自由のもと、此処に岡本天明氏が最高級神霊の神憑りにあい神の意志により自動書記さされた日月神示の内容を編集し今回『【最新版】日月神示』として小説を執筆致しました。
この日月神示は第二次世界大戦中に自動書記されたものであるにも関らず今尚斬新なものであり、その多くは現代社会の通説、また、価値観と著しく異なるものだからです。
この日月神示を読み解いていきますと
次のようなことがわかったのです。
即ち『悪は滅び善は必ず栄えるのだ』と。
そして既に始まっている三千世界の大洗濯によりこの世の最後の審判でこの世の偽悪醜に満ちた世界を綺麗にする浄化作用により罪深き者は滅びる一方でひたすら善一筋で質素に生きた人は幸せな人生を歩んでいる、ということも分かったのです。
さて、最近日月神示の予言本に不安を抱いている方もあると思うがまったく心配いらない。
何故なら日月神示では「取り越し苦労や過ぎ越し苦労はするな!」
「今に生きよ!」
「善一筋で生きよ!」
「身魂磨きをせよ!」
「人間の正しい生き方」
「人間の正しい食生活」
「人間の正しい夫婦のあり方」
「身も心も神さまからお借りしているのじゃから夜になって寝る前に神さまに一旦お返しするのじゃ。そうしたら身と心をどのようにしたらよいか、分かるじゃろ!」
たったのこれだけを守れば良いということだ。
根拠のない書籍や情報源等に惑わされてはダメだ。
日月神示も出口王仁三郎もそのようなことは一切言っていない。
これらの書籍や情報源は「日月神示」が警告する「臣民を惑わすものが出てくるから気をつけよ!」
という言葉に注目して欲しい。
今回、私は読者の皆さんに間違った解釈をされている日月神示を分かりやすく解説していくことにしました。
どうか、最後までお読み下さい。
日月神示の予言については、私が執筆中の「神典日月神示の真実」をお読み下さい。
月の綺麗な夜に終わりゆく君と
石原唯人
恋愛
ある日、十七才の春に僕は病院で色のない少女と出会う。
それは、この場所で出会わなければ一生関わる事のなかった色のない彼女とモノクロな僕の
秘密の交流。
彼女との交流によって諦観でモノクロだった僕の世界は少しずつ色づき始める。
十七歳、大人でも子どもでもないトクベツな時間。
日常の無い二人は限られて時間の中で諦めていた当たり前の青春へと手を伸ばす。
不器用な僕らの織り成す物語。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる