わしらはかみさま

水村鳴花

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第一話 かげはらい

よん

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 双神家のこと。カザヒとミナツチのこと。祖母から跡を継いだこと。

 全てを小町に話し終わり、青葉は息をついた。

「……まあ、そういうことやってん」

「そういえば、青葉のおばあちゃんが巫女とか聞いたような」

 小町は過去の記憶を、必死に掘り起こしているようだ。

 彼女は眩い真昼の太陽を見て、顔をしかめた。

「今日も暑いわね」

「この縁側が、一番涼しいんやけどな。ミナツチさん、小町を冷やしたって」

 ミナツチに呼びかけると、ミナツチは小町にぴとっとくっついた。

「涼しい! さすが、水と土の神さまね」

『わしも~』

 小町の元へ行こうとするカザヒを途中で掴み、青葉は立ち上がる。

「ちょっと電話してくるけんな」

『何でわしまで~』

 文句を言うカザヒを連れて、青葉は電話の置いてある場所へと向かった。

 小町から聞いた電話番号を記したメモを取り出し、番号を入力する。十秒ほどしてから、相手が出た。

『はい、佐倉さくらです』

「こんにちは。俺は双神青葉って言います。昔、同じ村に住んでましたけど、覚えてますか」

『双神……ああ、青葉君ね? お久しぶり。ご両親、お元気?』

 小町の母の声には、生気というものが感じられなかった。

「元気です。ええと、それでですね……小町が今、この家にやって来てるんです」

『ああ、そうなの……。しばらく見ないと思ってたら』

 何と冷たい反応だろう、と青葉は唇を噛んだ。

「しばらく、ここにおらしたっても良いでしょうか」

『ええ、是非。お世話になるわね。宿代としてお金は小町の口座に振り込んでおくから、それを受け取ってちょうだい』

「要りません」

『え?』

 息を吸い込んで、青葉は告げた。

「小町は、ここに自殺しようとして来たんです。お金は要りませんけん、反省して下さい」

 そして、がちゃんと受話器を乱暴に置いた。

「青葉……何事や?」

 父が、心配そうに尋ねてきた。

「ん、小町が滞在伸ばすことにしたらしいけん、小町の親に電話したんや」

「小町ちゃん本人やなく、何でお前が……」

 そこで、父はふわふわ浮かぶカザヒに気付いたようだ。

「えええ! 何か見える!」

 今日は青葉と小町は疲れて昼まで寝ていたので、父はまだカザヒやミナツチに、会っていなかったのだ。

「親父も見えるんな? 守り神さんやよ」

「おお。でも……何でや?」

「どうも、俺の霊力が上がったらしいけん」

「なるほど……。いやはやミナツチさん、お久しぶりです」

 礼をした父の頭を、カザヒがはたく。

『アホ。わしはカザヒじゃ』

「す、すみません……へえ、こんな姿になっとったんですね。実に、き」

 おそらく〝気が抜ける〟と言おうとしたのだろうが、父は賢明にも口をつぐんだ。

『青葉作じゃ。ぷりちーやろ』

「実にぷりちーです!」

 真剣に答えつつ、青葉を横目で睨む。

「しゃあないやろ。描いた時、六歳やったんやけん」

「まあええけどな、ぷりちーで」

 ふざけているのか真面目なのか、父はその後もカザヒの姿を絶賛し続けていた。



 縁側に戻ると、小町が寝転がっていた。

「青葉、お母さん出た?」

「……ん」

「心配してなくて、お金を振り込むとか言ってたでしょ」

 どうしてわかるのだろうか、と小町の顔を覗き込むとその目は潤んでいた。

「わかるの。わかりたくなくても、ね」

 彼女が、ぎゅっとミナツチを抱きしめれば、ミナツチがもがく。その光景を見て、横でカザヒが悔しそうにしていた。

「しんどかったな。ゆっくり休み」

 青葉は、小町の目を手で覆ってやった。

「ここは神さんたちに見守られた土地やけん、すぐ小町も元気なるよ」

 優しくそう言ってやると、小町は弱々しく微笑んだのだった。
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