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mission 1 俺たち、観光大使じゃない冒険者!
策謀家と策略家
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side-デュエル 4
困ったことになった。よりにもよって、例の遺跡が市場の中にあるとは…。とりあえずは、俺たちはラインハルトの属する自警団に全てを話して協力を求める事にした。
自警団詰所は、至高神の神殿に隣接する形で建てられている重厚な石造りの建物だ。ちなみに逆側には、神官騎士や冒険者向けの訓練施設も併設されている。そっちは基本的に出入り自由なのだが、さすがに詰所はそうもいかない。俺たちにとってラッキーだったのは、ラインハルトがちょうど詰所にいたために即座に話が通った事だろう。
ちなみに冒険者の各宿屋は、二週間交代で所属する冒険者を助っ人として派遣する義務を負っている。人口増加に加えて観光客への対策や治安維持に、有志のものだけでは人手が足りなくなってきつつある現状がそこにあった。
事件の発端となった短剣がいきなり現れ、彼は驚きを隠せないようだった。まして『犯人』に直の事情聴取というのは、結構な珍事だろうが、この際そんなことは言っていられない。
説明が進むにつれ、どんどん曇っていく彼の表情。それを横目に、俺たちはこれからの方針を話し合った。
「とりあえず、観光客の一時退避は可能か?」
「無理だな。下手を打てば逆に、野次馬を集める事態になる。さっきみたいにな」
俺の問いかけは、即座にラスファによって却下される。予想のうちだ。どういうわけか、途中からの野次馬の集まり方は異常だったために説得力はあった。だが、なんでアーチはそっぽ向いてるんだ? なんでアーシェが何か言いたげにこっちを見てるんだ?
「だったら、情報に少しばかり真実を混ぜてやれ。地下で見つかった遺跡に謎の瘴気やガスが発生したかもってさ。調査名目で堂々と行けるんじゃないか? 少なくとも、道路工事ってセンよりゃ説得力あるぜ?」
あまりに突飛なアーチの提案に、俺は開いた口が塞がらなかった。この前の『魔術師ギルド・ガス騒動』のことがある。伝わるところに伝われば尾ひれもつくだろうが、観光客にまで浸透するだろうか?
だが、ラスファはそうは思わないようだった。何か企んでいる目つきで少し考え、かすかに頷く。
「なるほどな、真実を少し混ぜた方が納得もしやすい。加えて観光客を対象とした大掛かりなショーがあると情報を流せば、自然とそっちに人も流れるだろうしな。現地に突入する我々は冒険者としてでなく、あくまで目立たず自警団員を装えばいい」
アーチの案を受けてのラスファの提案は、さらにその上をいく大胆さだった。俺もラグも揃って目を丸くする。
「でも兄貴、観光客相手の大掛かりなショーってどうするのよ? だって急ぐんでしょ?」
アーシェのもっともな問いに、彼はきっぱりと言い切った。一体ナニ企んでるんだか?
「この際だ、利用できるものはなんでも利用してやろう。…おあつらえ向きに、緊急で人気取りの必要がありそうな奴がいただろう? 観光大使として。さらにちょうど、この街のあちこちで観光大使ショーの大きなイベントを予定しているらしいな」
それを聞いた俺の脳裏に、目立ちたがりが過ぎて観光大使になったバカのド派手な勇者姿がよぎった。
「おいおい、よりによってあのフランシスを利用する気か?どうやって?」
ラスファと同じ案に至ったのだろう、アーチが人差し指を振りながら俺に向き直る。
「人聞き悪ィ事言うなよ。あくまでオレらは善意の第三者なんだぜ? オレらにとってもあいつにとっても双方に利があるウィンウィンの関係だからよ。感謝されても誹られる覚えはねぇよ♪」
…ああ、わかった。世に言う詐欺師というのは、こう言う奴らのことを言うんだろう。絶句した俺を横目に納得したと解釈したか、ラスファはそのまま説明を続けた。
「この短期間に、あれだけ執拗に絡んできたんだ。観光大使としての人気に陰りが出てきて、相当に焦ってるんじゃないのか? それなら、そこを突けばいい。どうせなら儲け話を絡めてドミニクも巻き込めば、そっちも二つ返事で乗ってくるはず。さらに宿屋の沽券にも関わると焚き付ければ、他の宿屋も巻き込める」
あー…そういや思い出した。ラスファはかつて、女将さんとマスターが現役で冒険してた頃からの仲間だった。あの商魂たくましい女将さんを利用するなんてとんでもない策を思いついても不思議じゃない!
「なら、開催場所と期間の変更を流さにゃならんな? その役目はオレに任せろ。こういっちゃなんだが、オレの口車に乗らねェ奴はいねぇぜ?」
そこに、同じく策謀家の目つきでアーチがニヤリと笑った。いつの何か広げられた地図にはステージの位置と時間を赤インクで書き添えている。全く、こいつらときたら…対照的な性格で普段は仲が悪いくせに、こういう策謀がらみだと決まってぴったりと息が合うのはどういうことだろうか? つまりはラスファもアーチも、タイプは違うが同じ策謀家ということだろうか?
…とりあえず死んでも敵には回したくない。
困ったことになった。よりにもよって、例の遺跡が市場の中にあるとは…。とりあえずは、俺たちはラインハルトの属する自警団に全てを話して協力を求める事にした。
自警団詰所は、至高神の神殿に隣接する形で建てられている重厚な石造りの建物だ。ちなみに逆側には、神官騎士や冒険者向けの訓練施設も併設されている。そっちは基本的に出入り自由なのだが、さすがに詰所はそうもいかない。俺たちにとってラッキーだったのは、ラインハルトがちょうど詰所にいたために即座に話が通った事だろう。
ちなみに冒険者の各宿屋は、二週間交代で所属する冒険者を助っ人として派遣する義務を負っている。人口増加に加えて観光客への対策や治安維持に、有志のものだけでは人手が足りなくなってきつつある現状がそこにあった。
事件の発端となった短剣がいきなり現れ、彼は驚きを隠せないようだった。まして『犯人』に直の事情聴取というのは、結構な珍事だろうが、この際そんなことは言っていられない。
説明が進むにつれ、どんどん曇っていく彼の表情。それを横目に、俺たちはこれからの方針を話し合った。
「とりあえず、観光客の一時退避は可能か?」
「無理だな。下手を打てば逆に、野次馬を集める事態になる。さっきみたいにな」
俺の問いかけは、即座にラスファによって却下される。予想のうちだ。どういうわけか、途中からの野次馬の集まり方は異常だったために説得力はあった。だが、なんでアーチはそっぽ向いてるんだ? なんでアーシェが何か言いたげにこっちを見てるんだ?
「だったら、情報に少しばかり真実を混ぜてやれ。地下で見つかった遺跡に謎の瘴気やガスが発生したかもってさ。調査名目で堂々と行けるんじゃないか? 少なくとも、道路工事ってセンよりゃ説得力あるぜ?」
あまりに突飛なアーチの提案に、俺は開いた口が塞がらなかった。この前の『魔術師ギルド・ガス騒動』のことがある。伝わるところに伝われば尾ひれもつくだろうが、観光客にまで浸透するだろうか?
だが、ラスファはそうは思わないようだった。何か企んでいる目つきで少し考え、かすかに頷く。
「なるほどな、真実を少し混ぜた方が納得もしやすい。加えて観光客を対象とした大掛かりなショーがあると情報を流せば、自然とそっちに人も流れるだろうしな。現地に突入する我々は冒険者としてでなく、あくまで目立たず自警団員を装えばいい」
アーチの案を受けてのラスファの提案は、さらにその上をいく大胆さだった。俺もラグも揃って目を丸くする。
「でも兄貴、観光客相手の大掛かりなショーってどうするのよ? だって急ぐんでしょ?」
アーシェのもっともな問いに、彼はきっぱりと言い切った。一体ナニ企んでるんだか?
「この際だ、利用できるものはなんでも利用してやろう。…おあつらえ向きに、緊急で人気取りの必要がありそうな奴がいただろう? 観光大使として。さらにちょうど、この街のあちこちで観光大使ショーの大きなイベントを予定しているらしいな」
それを聞いた俺の脳裏に、目立ちたがりが過ぎて観光大使になったバカのド派手な勇者姿がよぎった。
「おいおい、よりによってあのフランシスを利用する気か?どうやって?」
ラスファと同じ案に至ったのだろう、アーチが人差し指を振りながら俺に向き直る。
「人聞き悪ィ事言うなよ。あくまでオレらは善意の第三者なんだぜ? オレらにとってもあいつにとっても双方に利があるウィンウィンの関係だからよ。感謝されても誹られる覚えはねぇよ♪」
…ああ、わかった。世に言う詐欺師というのは、こう言う奴らのことを言うんだろう。絶句した俺を横目に納得したと解釈したか、ラスファはそのまま説明を続けた。
「この短期間に、あれだけ執拗に絡んできたんだ。観光大使としての人気に陰りが出てきて、相当に焦ってるんじゃないのか? それなら、そこを突けばいい。どうせなら儲け話を絡めてドミニクも巻き込めば、そっちも二つ返事で乗ってくるはず。さらに宿屋の沽券にも関わると焚き付ければ、他の宿屋も巻き込める」
あー…そういや思い出した。ラスファはかつて、女将さんとマスターが現役で冒険してた頃からの仲間だった。あの商魂たくましい女将さんを利用するなんてとんでもない策を思いついても不思議じゃない!
「なら、開催場所と期間の変更を流さにゃならんな? その役目はオレに任せろ。こういっちゃなんだが、オレの口車に乗らねェ奴はいねぇぜ?」
そこに、同じく策謀家の目つきでアーチがニヤリと笑った。いつの何か広げられた地図にはステージの位置と時間を赤インクで書き添えている。全く、こいつらときたら…対照的な性格で普段は仲が悪いくせに、こういう策謀がらみだと決まってぴったりと息が合うのはどういうことだろうか? つまりはラスファもアーチも、タイプは違うが同じ策謀家ということだろうか?
…とりあえず死んでも敵には回したくない。
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