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天使との邂逅2

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 目の前の天使の笑い方は可愛かった。
 声を上げて笑いたそうにしているのに貴婦人らしく抑えた結果なのかたまに変な音声になってしまっている。
 よく覚えてもいない彼女の夫になった男がたまらなく羨ましくなった。
 
 話せば話す程彼女に惹かれていくのを感じる。
 友人たちが恋は良いものだとしきりに言っていたが、全く同意できない。
 
 彼女は既婚者なのだ。
 会場に戻るというイヴェットはフランシスに全く未練もなさそうに去っていった。
 月明かりに取り残されたのは、フランシスだけだ。

 遠目にナックラヴィーを視認し、作戦通り弓を放つ。
 多くは鱗に弾かれるだろうが関節や鱗の隙間にねじ込めれば勝機は格段に上がる。
 馬で一気に距離を詰めた所でフランシスはナックラヴィーの下、草むらの中にいる人影に気付いた。
 すぐさま人命救助を最優先の作戦変更を伝え、剣で対応する。
 魔獣の首を落とし、倒れている女性を助け起こそうとしてフランシスは驚愕した。

(イヴェット様)

 あの時から焦がれてやまない庭園の天使が、なぜこんな場所にいるのだろうか。

 久々に見たイヴェットはひどく憔悴しているように見えた。
 魔獣に殺されかけたのだ。
 血の気が失せて青ざめた顔や、震える身体は当然の事だろう。
 
 むしろ日常的に訓練していないのに失神していない事が驚きだ。
 しかし艶を失いかけている髪、全体的に肉が落ち、華奢というよりはやつれていると言った方が正しい身体は昨日今日で作られたものではないだろう。

(何があったのかは分からないがとにかく保護が優先だ)

 少なくとも魔獣被害者だ。抱きかかえた時に見えた足の怪我もひどかった。

(しかし、あれはナックラヴィーの傷跡ではなさそうだな)

 一体イヴェットに何があったのか、それは本人の口から語られた。

 血の気のない顔、やせ細った身体を引きずるようにしてイヴェットはドームスへ証拠を撮りに行った。
 事情を聞いてしまえば仕事としても無視できない話だった。
 庭園で出会って以来、オーダム家の話には積極的に情報収集していたのだが、いかんせん表に出る話が少なかった。

 結婚後少し特殊な家族形態をしていること、事業が上手くいっていること、あまり良い噂を聞かない人間が出入りしていること。
 社交界で噂を聞こうと思えばそれなりに聞けるものだが、いまいち全てが繋がらないままだった。
 しかし病室での家族の態度やイヴェットの扱いを見るに、全ては真実で一つの事実を示していた。

(オーダム家は乗っ取られようとしていたのか)

 あの家は今や保護者が誰もいない。
 イヴェットは成人しているとはいえまだまだ経験もなく危ういところもある。
 殺意を持つ相手に対し、それでも希望をもって旅行を計画したのだろう。
 その結果死にかけた。

(彼女を守りたい)

 小さくなるイヴェットの背中を見ながらフランシスはこぶしを握り締めた。
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