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「あら?」

リリアとエレスが小屋に戻ると不思議な生物がいた。

不思議な生物とはいえ見た目は鳥だ。
ミドリスズメのような鳥だがそれよりも各段に美しい、エメラルドグリーンの羽を持っている。

その鳥が、小屋の周りを高速でぐるぐる回っていた。
不審な鳥はどんどんヒートアップしているのか、鳥というより緑色の軌跡にしか見えなくなっていく。

「な、何!?」

普通に飛んでいたら長い尾羽も優雅だと思えるだろうが、目の前の光景のあまりの異常さに恐怖の方を感じる。
と、エレスが困ったようにため息をついた。

「アエラス」

「あっ王様!」

エレスが呼びかけると怪しい鳥は何事もなかったかのように二人の目の前で停空する。
近くで見るとその美しさがよく分かる。羽ばたく度に羽がキラキラと光を反射して輝いていた。
そして可愛い少年のような声でどんどん喋る。

「王様久しぶり! ずっと呼んでたのに全然反応ないからボクもー王様死んじゃったのかなって思ったよ! まっ王様がのんびりなのは今に始まったことじゃないけどね! むしろちょっと早めじゃない? やる気のある王様めっずらしい!」

「相変わらず気忙しいな。お前に比べたら全てが呑気に見えるだろう。私の乙女が驚いてるぞ」

「あっ王様の乙女だ! こんにちはっ! そうだったボクあなたに会いに来たんだよ!」

「こんにちは……」

鳥はすごい勢いで喋るのでリリアは圧倒されるばかりだ。

「リリア。これは風の大精霊アエラスだ」

「大精霊?」

そういえばエレスの話の中にちらっと大精霊という存在が出てきていたような気がする。
だが精霊事情に疎いリリアにはよく分からない存在だ。

「まっ大精霊ってのは人間が勝手に呼んでるだけだけどね!大精霊って言っても風の精霊は全部ボクだからさ!」

「今はリリアにも見えるように鳥の姿を取っているが、アレの言う通り風を司る精霊だ。風の精霊の中でも意思を持つ者が大精霊と呼ばれている」

「王様は力が強すぎるからね! いつもはボク達四大精霊が細かい調整してるんだよ!」

「あら? でも小屋を掃除した時に風の力を使っていなかったかしら」

「あれは別に大精霊の意識というわけではなくただの力と感情の流れにすぎない」

「どういうこと?」

「王様ここ掃除したの!? あははは! 疲れたでしょ!」

風の大精霊アエラスはその場でくるくる回りながらおかしそうに笑う。
精霊王に掃除を手伝ってもらった事が改めて申し訳なくなる。

「やっぱりあんな事させちゃいけなかったんだわ」

「何を言う。私はリリアの精霊でリリアは私の乙女なのだから、リリアがする事は私もする」

どんな理屈なのだろう、とリリアは思うがエレスの中では通る理論らしい。
思い返せば力を貸してくれた時には嬉しそうだったし、今も手伝いたそうにしているのだから精霊とはそういうものなのかもしれない。

「風の流れや小さい感情はどこにでもあるよ! でも目的を成す程の意識を持てるのはそれらが多く集まっている場合なんだ!」

「えっと、精霊はどこにでもいるけど意思を持てる程に集まったら大精霊…?」

「そう! だからこうして『見える姿を取る』事や『話す』事が出来るんだよ! もうすぐ火精霊フォティア水精霊ウォネロも来るんじゃないかな、土精霊エザフォスはいつか分かんないけど!」

土精霊エザフォスは私より寝ているからな」

ふふ、とエレスがリリアに笑いかける。

「まあ、それじゃあ何年後になるか分からないわね」

どうやらこの小さな小屋は賑やかになるようだ。
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