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その後の二人 注意、後半に暴力的な表現があり
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ーーゲイブ・ハンソンの場合ーー
「今日はハウル殿下の結婚式でしょう。パレード見れるかな?」
「人が多いからどうかな?」
王族の結婚式とあって街中がお祭り騒ぎの中、俺は一人パレードのある通りとは逆へと向かって歩いている。子爵の長子だった俺は学生時代にやらかしたせいで、騎士団の下っ端として強制的に入団させられた。最初は平民に指導される事に反発していたが、着替えも掃除も満足に出来ない俺に根気よく同じことを教えてくれる彼らにいつの間にか反発しなくなった。彼らの話を素直に聞くようになると、今まで自分が狭い世界しか知らなかった事に気づいた。
満足な食事に清潔な部屋や衣服。
それら全てを使用人がやって当たり前。やって当然と考えていた俺は良い主人では無かった。機嫌が悪けりゃ八つ当たりで怒鳴り散らしていた。どんなに両親が諌めようとも止めなかったし、養子を迎えてもその意味を深く考える事もしなかった。
あれから二年が経ち、書類仕事は字を書くのが苦手や奴の手伝いが出来る様になったが剣の腕は伸び悩んでいる現状だ。
「見て!王子さまよ!」
俺の横を小さな女の子が嬉しそうに走り抜けパレードを追い掛けて行く。その声につられて振り向けば真っ白いドレスに身を包み笑顔で手を振る女性が見えた。
あぁ、俺が迷惑を掛けた人は幸せになったのか。
その事実に胸が震えた。頭を下げたくなったが自己満足の謝罪なんて彼らは求めてはいない。
『どうかお幸せに』
心の中で呟くと気付かれる前に前を向き目的の武器屋へ向かって足を進めた。
「オヤジ。この間の剣の使い方なんだが、もう一度教えて貰えないだろうか。間合いが取り辛くて困っているんだ」
「あ?あんたか仕方ねぇな。あの武器は特殊だがあんたに向いてっから、変なクセ直しなよ」
厳ついが気の良い武器屋の店主にコツを教わりながら、いつの日か迷惑を掛けた人達に恩返し出来るように鍛練を重ねようと改めて気を引き締めた。
ーーグレーテル・ウォーレの場合ーー
「この疫病神が!!さっさと次の酒買って来い!」
今日も酒に酔った父親に殴られた。格上の男と婚約出来ると喜んでいたあの日を境に、私の生活は更に底辺に変わっていった。王族の婚約者に迷惑を掛けた娘として避けられ、先日は騎士団が家宅捜査に来て私の部屋から男達から手に入れたアクセサリーやドレスを証拠品として持って行かれた。何の証拠品か知らないけど私は何も悪くないわよ。向こうが勝手に相手が買ってくれたんだから。
父親にまた殴られる前に家を出て安い酒を買いに向かった。母親は大昔に家を出て何処にいるか分からないし私も会いたいなんて思わない。どうせ男に寄生しないと生きていけないか弱い女だわ。
「見て!王子さまよ!」
小さな子供の声につられて顔を上げると、私の人生を大きく変えた二人が白い豪華な衣装を着て幸せそうに手を振っていた。
「な……何で……」
「殿下は臣下に下って奥様と領地を治めるそうよ」
「へー、奥様って何処の人?」
「アーデンだって。あそこの野菜は美味しいわよね」
「あのアーデンかぁ。殿下も凄い人と結婚するんだねぇ」
知らない誰かがあの女を褒め称え笑顔で手を振る。その姿に怒りが込み上げてきた私は、近くに落ちていたガラス瓶を手に持ちフラリと人混みに近付いた。通りすがりに建物の角で瓶をぶつけて先を尖らせると、笑顔のあの女に向かって振りかざした。
「死ね!」
そう叫ぶと同時に私の体は地面に叩きつけられた痛みで声が出なかった。誰かが手から瓶を取り上げ拘束の腕輪を嵌め無理やり立たせた。
「痛いわね!触らないでよ」
立ち上がり視界に入ってきたのは真っ白い騎士服の王子様に抱き込まれ護られる憎い女の姿。一瞬だけ王子と目が合ったけど、感情の籠らない目で一瞥しただけでクソ女に話し掛けていた。
「大丈夫だ。警備の者が捕まえてくれた。酒の瓶を持っていたようだから酔っぱらいだろう」
「警備の方はご無事ですか?」
「あぁ……無事な様だ」
騎士の強い力で腕を引かれ、そのまま詰所へ連れて行かれた。薄暗い牢屋に入れられする事もなく座っていると、外からお祭り騒ぎの楽しげな笑い声が響く。
あぁ、何処で間違えたのかしら……同じ男爵家の娘だったクソ女は輝く光の下で手を振っているのに……
私は牢屋の中。
私は悪くない。
借金で自殺した男がいた?
結婚するつもりじゃなかったのか?
どいつもこいつも煩いわね。私は金持ちと結婚して贅沢三昧の生活をしたかっただけなのに……
金もないクセに文句言わないでよ。
「グレーテル・ウォーレ。詐欺と殺人未遂で終身刑を言い渡す。日々の奉仕作業で反省しなさい」
はぁ?反省がみられないって私悪くないのに何を反省するのよ。しかも奉仕作業?この私が?終身刑って……死ぬまでタダ働きしろって事!?冗談じゃないわ!
何処で間違えたの?あぁ、誰か教えてよ!
end
「今日はハウル殿下の結婚式でしょう。パレード見れるかな?」
「人が多いからどうかな?」
王族の結婚式とあって街中がお祭り騒ぎの中、俺は一人パレードのある通りとは逆へと向かって歩いている。子爵の長子だった俺は学生時代にやらかしたせいで、騎士団の下っ端として強制的に入団させられた。最初は平民に指導される事に反発していたが、着替えも掃除も満足に出来ない俺に根気よく同じことを教えてくれる彼らにいつの間にか反発しなくなった。彼らの話を素直に聞くようになると、今まで自分が狭い世界しか知らなかった事に気づいた。
満足な食事に清潔な部屋や衣服。
それら全てを使用人がやって当たり前。やって当然と考えていた俺は良い主人では無かった。機嫌が悪けりゃ八つ当たりで怒鳴り散らしていた。どんなに両親が諌めようとも止めなかったし、養子を迎えてもその意味を深く考える事もしなかった。
あれから二年が経ち、書類仕事は字を書くのが苦手や奴の手伝いが出来る様になったが剣の腕は伸び悩んでいる現状だ。
「見て!王子さまよ!」
俺の横を小さな女の子が嬉しそうに走り抜けパレードを追い掛けて行く。その声につられて振り向けば真っ白いドレスに身を包み笑顔で手を振る女性が見えた。
あぁ、俺が迷惑を掛けた人は幸せになったのか。
その事実に胸が震えた。頭を下げたくなったが自己満足の謝罪なんて彼らは求めてはいない。
『どうかお幸せに』
心の中で呟くと気付かれる前に前を向き目的の武器屋へ向かって足を進めた。
「オヤジ。この間の剣の使い方なんだが、もう一度教えて貰えないだろうか。間合いが取り辛くて困っているんだ」
「あ?あんたか仕方ねぇな。あの武器は特殊だがあんたに向いてっから、変なクセ直しなよ」
厳ついが気の良い武器屋の店主にコツを教わりながら、いつの日か迷惑を掛けた人達に恩返し出来るように鍛練を重ねようと改めて気を引き締めた。
ーーグレーテル・ウォーレの場合ーー
「この疫病神が!!さっさと次の酒買って来い!」
今日も酒に酔った父親に殴られた。格上の男と婚約出来ると喜んでいたあの日を境に、私の生活は更に底辺に変わっていった。王族の婚約者に迷惑を掛けた娘として避けられ、先日は騎士団が家宅捜査に来て私の部屋から男達から手に入れたアクセサリーやドレスを証拠品として持って行かれた。何の証拠品か知らないけど私は何も悪くないわよ。向こうが勝手に相手が買ってくれたんだから。
父親にまた殴られる前に家を出て安い酒を買いに向かった。母親は大昔に家を出て何処にいるか分からないし私も会いたいなんて思わない。どうせ男に寄生しないと生きていけないか弱い女だわ。
「見て!王子さまよ!」
小さな子供の声につられて顔を上げると、私の人生を大きく変えた二人が白い豪華な衣装を着て幸せそうに手を振っていた。
「な……何で……」
「殿下は臣下に下って奥様と領地を治めるそうよ」
「へー、奥様って何処の人?」
「アーデンだって。あそこの野菜は美味しいわよね」
「あのアーデンかぁ。殿下も凄い人と結婚するんだねぇ」
知らない誰かがあの女を褒め称え笑顔で手を振る。その姿に怒りが込み上げてきた私は、近くに落ちていたガラス瓶を手に持ちフラリと人混みに近付いた。通りすがりに建物の角で瓶をぶつけて先を尖らせると、笑顔のあの女に向かって振りかざした。
「死ね!」
そう叫ぶと同時に私の体は地面に叩きつけられた痛みで声が出なかった。誰かが手から瓶を取り上げ拘束の腕輪を嵌め無理やり立たせた。
「痛いわね!触らないでよ」
立ち上がり視界に入ってきたのは真っ白い騎士服の王子様に抱き込まれ護られる憎い女の姿。一瞬だけ王子と目が合ったけど、感情の籠らない目で一瞥しただけでクソ女に話し掛けていた。
「大丈夫だ。警備の者が捕まえてくれた。酒の瓶を持っていたようだから酔っぱらいだろう」
「警備の方はご無事ですか?」
「あぁ……無事な様だ」
騎士の強い力で腕を引かれ、そのまま詰所へ連れて行かれた。薄暗い牢屋に入れられする事もなく座っていると、外からお祭り騒ぎの楽しげな笑い声が響く。
あぁ、何処で間違えたのかしら……同じ男爵家の娘だったクソ女は輝く光の下で手を振っているのに……
私は牢屋の中。
私は悪くない。
借金で自殺した男がいた?
結婚するつもりじゃなかったのか?
どいつもこいつも煩いわね。私は金持ちと結婚して贅沢三昧の生活をしたかっただけなのに……
金もないクセに文句言わないでよ。
「グレーテル・ウォーレ。詐欺と殺人未遂で終身刑を言い渡す。日々の奉仕作業で反省しなさい」
はぁ?反省がみられないって私悪くないのに何を反省するのよ。しかも奉仕作業?この私が?終身刑って……死ぬまでタダ働きしろって事!?冗談じゃないわ!
何処で間違えたの?あぁ、誰か教えてよ!
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