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エピローグ

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「ハウル殿下」

「どうしたルルーシュ」

「降ろして下さいませ」

 困った事に勘違い婚約破棄の一件を境に殿下は何かと私を側に置きたがる様になってまいました。今日も授業の後、仕事の為に殿下の元に向かったのですが、何故か殿下の私室に通された上に彼の膝の上に座らされてしまいましたわ。私が膝から降りようとすると殿下の腕に力が入り阻止してきます無言の攻防に限界を感じて直線、訴える事にしました。
 王族の私室とはいえ、勿論、護衛の騎士も居ますし従者も居ます。必ず人目がある環境に慣れていない上に、こんな恥ずかしい姿で私の顔は熱くて仕方ないですわ!

「君が可愛い顔をしているからいけないんだ。他の男に見せたくないから仕方ないだろう?」

「何ですか、その意味不明な持論は……早く降ろして……」

 恥ずかし過ぎて息絶え絶えになっていると、ノックの音が部屋に響きました。殿下が私を膝に乗せたまま許可するので入室された方は、目を見開いて驚かれております。本当に恥ずかしいから降ろして……

「用件はなんだ?」

「えっと……はい、学園長からのご連絡と影からの調査報告をお持ち致しました」

「あぁ、ありがとう」

 殿下が書類を受け取ると文官は私の事は何も言わずに退出の挨拶をして出ていきます。お願いだから誰か殿下を止めて下さい。そう切に思っていましたが、殿下はそのまま書類に目を通し始めてしまいました。

「彼らの素行調査と処罰だ。君も読むか?」

「よろしいのですか?」

 "あぁ"短い返事の後に渡された書類に目を通しました。

 先ずはハンソン子息。

 ありもしない婚約破棄を公衆の面前で叫んだ事による名誉毀損で、私に損害賠償金を支払う事が決まりました。しかも、そのお金は彼がこれから自分で働いて支払う事も罰の一つのようで、学園は退学し騎士見習いから始めるそうです。一応、貴族籍は残る様ですが、騎士団を辞めても家には帰れないとの事も記載されておりました。

 今後、彼の勤務態度や反省の様子をみてから正式な決定が成されるのだとか。まぁ、彼も騙された被害者でもありますから妥当な判断でしょうね。

 そして、ウォーレ令嬢。

 彼女はハンソン子息以外にも格上の男性に言い寄り肉体関係を持ち婚約を幾つも破断させていた事が発覚しました。現在、騎士団が表側を影が裏側を再調査しているそうです。彼女に惚れ込み婚約破棄した男性達の中には、高額なプレゼントを買い与え自己破産に陥った人もおり詐欺として立件予定だとか。ただ、被害者が多すぎて捜査にはかなりの時間が掛かりそうです。

「まぁ、妥当な判断ではないですか?」

 書類を最後まで読んだ後、顔を上げると殿下は納得出来ないのか不満気な表情をされております。私の一つに纏めただけの長い髪に指を絡ませ何か思案の様子の殿下ですが、今まで"女嫌い"や"堅物"、"クソ真面目"等、女性を膝に乗せたり髪で遊ぶなんて想像出来ない性格でしたので、お付きの方々が魂が抜けた様な表情で部屋の角に立っております。

「本当に恥ずかしいから降ろして下さい」

「……嫌だ」

 子供みたいに不貞腐れた表情そう言った殿下は私を強く抱きしめてきました。

「不安なんだ……他の男に取られてしまわないか」

 珍しくか細い声で言われた言葉に驚いていると、私の肩に頭を乗せた殿下から小さな声が続きます。

「婚約を発表したのに君の元には釣書が届いているじゃないか」

「ご存知だったのですか」

「護衛からの報告が来ている。だが君は私に何も言わない。私はそんなに頼りないか?それとも気にしないとでも?」

 お忙しい殿下の邪魔になりたくなくて黙っていたことが、逆に彼の憂いの原因になっているとは考えていませんでした。それに一応、殿下以外の方ですが報告はしていまして……

「母上とリアム兄さんに報告……?」

「はい、殿下に報告しなくて良いと、私達で処理するからこっちに相手の名前を教えてるようにと言われて黙っておりました」

 殿下にお会いする前に王妃様とお茶会をしている最中、私に直接、釣書をお渡しに来られたツワモノがいましたわ。勿論、お断り致しました所、逆上され王妃様付きの護衛騎士に捕縛され第二王子で騎士団団長のリアム殿下に直接引き渡しとなりましたの。その後、騎士団の方々にしご……ご指導され改心したと聞いております。

 一通り経緯を説明し終わる頃と殿下は私を離し項垂れてしまいました。どうしましょう……ご気分を悪くされたりしていないかしら

「なんだか一人で空回りしてしまったみたいだな……情けない」

「……こんな事言っては不謹慎かもしれませんが、私は殿下の御心が聞けて嬉しいです」

 言ってしまった後で恥ずかしくなった私は逃げる様に殿下から離れ帰ろうとすると、追いかけてきた彼の腕に閉じ込められました。自分の心臓の音と殿下の心臓の音が煩いくらい耳に届きます。

「あー、早く一緒に暮らしたい」

 結婚と同時に臣下に下る事が決定している為、両陛下やご兄弟が結婚式を張り切るあまり婚約期間が長くなってしまいました。まだまだ準備に忙しい日々が続きますが、これからも二人で乗り越えていきたいです。



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