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2件目 放課後、君にキスをした理由
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放課後の教室には、カーテン越しの西陽が静かに差し込んでいた。
「ねえ、悠太。今日さ、ちょっとだけ寄り道しない?」
そう言ったのは、俺の隣の席に座る幼馴染、白石紗良。長い黒髪を結んだ清楚な美少女で、小学校からずっと一緒に育ってきた。
「寄り道って、どこに?」
「……屋上。ちょっとだけ話したいことがあるの」
紗良に誘われると、断る理由なんてない。俺たちは無言のまま階段を登った。夕焼けが差し込む屋上は、いつものように静かで、風だけが通り抜けていく。
「なんかさ、高校生活もあっという間だったね。もうすぐ三年生だし」
「そうだな。入学したばっかりだと思ってたのに」
会話はどこかぎこちなくて、けれど、その沈黙が妙に心地よかった。
俺は彼女の横顔を見た。瞳は夕日に照らされてきらめいていた。ふと、紗良が何かを決心したように口を開いた。
「悠太ってさ、昔から私のこと、どう思ってた?」
「どうって…そりゃ、大事な幼馴染だし」
「……うん、そう思ってるよね」
彼女の笑顔は、どこか寂しげだった。そういえば、最近の紗良はよく目をそらすようになった。俺にだけじゃなく、何かから逃げるように。
「私ね、小学校のとき、悠太と結婚するって本気で思ってたんだよ?」
「は? それは初耳だ」
「言ってないもん、恥ずかしくて。でもずっと好きだったんだよ、悠太のこと」
俺の心臓が跳ねた。
「中学のとき、他の子と付き合ったでしょ? 私、それ知っててすっごく泣いた。でも、ずっと言えなかったの。怖くて、壊れそうで」
風が紗良の髪を揺らす。彼女はまっすぐ俺を見た。
「今なら、言える。悠太、私、ずっと君が好きだった。…今も、好き」
俺は答えを出すのに時間がかからなかった。言葉よりも先に、体が動いた。
そっと手を伸ばして、彼女の頬に触れ、唇を重ねた。柔らかくて、少し震えていて、それでも温かい、初めてのキス。
「……悠太?」
「俺も、紗良のことが好きだ。ずっと“幼馴染だから”って誤魔化してきた。でも、もうごまかせない」
言葉にすると、不思議なくらい自然だった。
紗良は涙を浮かべながら笑った。泣きながら、笑っていた。
「やっと、言えたね」
俺たちは夕焼けの中、もう一度キスをした。
教室ではなく、屋上で。友達でもなく、恋人として。
それは、青春の終わりではなく、確かな始まりだった。
「んっ、ちゅっ……、ふ……、れろっ、はあっ、ちゅっ、んっ……」
——次の日から、彼女の隣に座る理由が一つだけ増えた。
「ねえ、悠太。今日さ、ちょっとだけ寄り道しない?」
そう言ったのは、俺の隣の席に座る幼馴染、白石紗良。長い黒髪を結んだ清楚な美少女で、小学校からずっと一緒に育ってきた。
「寄り道って、どこに?」
「……屋上。ちょっとだけ話したいことがあるの」
紗良に誘われると、断る理由なんてない。俺たちは無言のまま階段を登った。夕焼けが差し込む屋上は、いつものように静かで、風だけが通り抜けていく。
「なんかさ、高校生活もあっという間だったね。もうすぐ三年生だし」
「そうだな。入学したばっかりだと思ってたのに」
会話はどこかぎこちなくて、けれど、その沈黙が妙に心地よかった。
俺は彼女の横顔を見た。瞳は夕日に照らされてきらめいていた。ふと、紗良が何かを決心したように口を開いた。
「悠太ってさ、昔から私のこと、どう思ってた?」
「どうって…そりゃ、大事な幼馴染だし」
「……うん、そう思ってるよね」
彼女の笑顔は、どこか寂しげだった。そういえば、最近の紗良はよく目をそらすようになった。俺にだけじゃなく、何かから逃げるように。
「私ね、小学校のとき、悠太と結婚するって本気で思ってたんだよ?」
「は? それは初耳だ」
「言ってないもん、恥ずかしくて。でもずっと好きだったんだよ、悠太のこと」
俺の心臓が跳ねた。
「中学のとき、他の子と付き合ったでしょ? 私、それ知っててすっごく泣いた。でも、ずっと言えなかったの。怖くて、壊れそうで」
風が紗良の髪を揺らす。彼女はまっすぐ俺を見た。
「今なら、言える。悠太、私、ずっと君が好きだった。…今も、好き」
俺は答えを出すのに時間がかからなかった。言葉よりも先に、体が動いた。
そっと手を伸ばして、彼女の頬に触れ、唇を重ねた。柔らかくて、少し震えていて、それでも温かい、初めてのキス。
「……悠太?」
「俺も、紗良のことが好きだ。ずっと“幼馴染だから”って誤魔化してきた。でも、もうごまかせない」
言葉にすると、不思議なくらい自然だった。
紗良は涙を浮かべながら笑った。泣きながら、笑っていた。
「やっと、言えたね」
俺たちは夕焼けの中、もう一度キスをした。
教室ではなく、屋上で。友達でもなく、恋人として。
それは、青春の終わりではなく、確かな始まりだった。
「んっ、ちゅっ……、ふ……、れろっ、はあっ、ちゅっ、んっ……」
——次の日から、彼女の隣に座る理由が一つだけ増えた。
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