ChatGPTさんの短編小説 2025年5月

草薙銀之介

文字の大きさ
4 / 50

4件目 放課後、花の庭で君を待つ

しおりを挟む
 昼下がりのチャイムが鳴り、教室がざわつく中、俺は鞄を手にしてすぐに席を立とうとした。

「悠真くん。今日も、一緒に帰っていただけますか?」

 振り返ると、そこには整った顔立ちに深い藍色の瞳を湛えた少女が立っていた。名は桐嶋エリス。

 学園の理事長の一人娘で、いわゆる“令嬢”。品のある立ち居振る舞いと完璧な成績で、生徒たちから「桐嶋さま」と呼ばれている存在だ。

 でも、俺にとっては少し違う。

「……いいよ。今日もあの庭?」

「ええ。いつものところで」

 彼女は微笑み、俺の隣に自然と並んで歩き出す。その姿はまるで、物語の中から抜け出してきた姫のようだった。


 エリスと俺は幼馴染だ。彼女の父親と、俺の母親が旧知の仲だったこともあり、俺は普通の家に生まれながら、この名門・聖桜学園に入学できた。

 彼女は小さいころからよく笑い、よく泣く普通の女の子だった。でも学園に入り、周囲の目が変わるにつれて、エリスはいつしか“完璧な令嬢”を演じるようになった。

 ただ、俺の前ではその仮面を外す。

 その秘密の時間が、俺たちの“日課”になっていた。


 学園の裏手、手入れの行き届いた小さなバラ園。エリスの母が生前大切にしていたというその庭には、生徒すら近づかない静かな空間が広がっている。

「ねえ、悠真くん」

「あん?」

「……今日の私、どう? おかしくない?」

 そう言って彼女は俺にそっと振り向いた。制服のリボンは完璧に結ばれていて、髪も美しく巻かれている。どう見ても、いつもの“完璧な桐嶋エリス”だった。

 でも、その瞳だけが不安そうに揺れていた。

「エリスは、どんなときでも綺麗だよ」

「……それ、ずるい。あなた、いつもそう言って逃げるのよね」

「逃げてない。……でも、これだけは言える」

 俺は彼女の手を取り、そのまま顔を近づけた。

「俺は、“桐嶋エリス”じゃなくて、“エリス”をずっと見てる」

 彼女の頬がほんのり赤く染まった。

「私、悠真くんと一緒にいると、自分に戻れる気がするの。強くも、偉くもない、ただの私に……」

「それでいい。俺はその“ただのエリス”が好きなんだよ」

 そして、彼女の唇にそっと触れた。

柔らかくて、震えていて、それでも離したくなかった。キスは短かったけれど、言葉よりも何倍も確かな気持ちを伝えていた。

「んっ……、ペチョっ……ふ……っ、ちゅ……っ、んっ……」

 それからの帰り道、エリスは俺の隣でずっと黙っていた。

 けれど、家の門の前で小さく呟いた。

「……明日も、バラの庭で待っています」

 その声は風に消えそうに小さかったけど、俺の胸には、しっかりと残った。

 令嬢という仮面を脱いだ彼女と、幼馴染としての俺。

 恋が始まる音は、キスの音よりも静かで、けれど心を確かに震わせる。

——明日、また花の庭で会おう。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...