6 / 50
6件目 先輩、今日こそ言わせてください
しおりを挟む
「なあ、陸ってさ、いつまで“子ども”扱いされたいの?」
そう言って笑うのは、俺の幼馴染であり、二つ上の先輩――夏川紗良(なつかわさら)。
俺よりも15センチは背が高くて、脚がめちゃくちゃ長い。いつもスカートの下に黒のハイソックス、髪は金色に染めて、軽く巻いてある。
学校でも有名なギャル系美人だ。
けど俺にとっては、小さい頃からずっと隣にいた、気の強い“お姉ちゃん”みたいな存在だった。
「別にそんなつもりないし」
「ふーん。なら、どうして呼び方ずっと“紗良ちゃん”のままなの?」
「……そ、それは、癖っていうか……」
屋上のフェンスにもたれかかりながら、先輩はあきれたように笑った。制服のシャツの第2ボタンが開いていて、夏の風がふわりと髪をなびかせる。
見惚れてるのがバレないように、俺は視線をずらした。
「私ね、来年卒業だよ。そしたら、もうこうして二人で話す時間もなくなるかもだよ?」
「……それ、やめてよ」
俺は無意識に言葉が出た。
この時間が終わるなんて、考えたくもなかった。
「じゃあさ、陸」
「ん?」
「“好き”って、言ってよ」
「――っ!」
先輩の瞳がまっすぐ俺を見ていた。あの、いつも茶化してくるギャルな雰囲気じゃない。
素の、真剣な紗良ちゃんの目だ。
「昔からずっと知ってるよ?陸が私のこと、ただの“幼馴染”として見てないって。バレバレ」
「……俺、ちっちゃかったし……」
「うん。でももう、違うでしょ?」
俺はゆっくりと歩み寄って、先輩の前に立った。見上げる角度は、昔と変わらない。でも今は――俺の胸の中、全部、ちゃんと伝えられる気がした。
「紗良ちゃん。俺、子どもじゃない。今の俺は、ちゃんと――」
言い終える前に、先輩の顔が近づいた。金色の前髪が俺の頬に触れる。
そして、彼女の唇が、俺の口に、静かに重なった。
「ん……ちゅ……っ……んっ……、れろっちゅ……っ……んっ……、ペチョっ、ピチャっ、ちゅっ、んっ……ちゅこつ、ちゅここっ、ちゅっ、んっ……」
数秒間のキス。
心臓の音がうるさすぎて、彼女に聞こえてしまうんじゃないかと心配になる。
「……ね、これでようやく同じ目線?」
俺が見上げると、紗良先輩は、少し照れたような笑顔を浮かべていた。
「でも、これからはもっとドキドキさせて? 子どもの頃から陸にしか、あたし本気になったことないんだから」
「……うん。俺も、紗良ちゃんがずっと、好きだった」
彼女はちょっとだけ目を細めて、優しく俺の頭を撫でた。
「じゃあ、今日から彼女ってことで。よろしく、年下彼氏くん」
まるで夏の陽射しみたいにまぶしい笑顔に、俺はうなずくしかなかった。
――たぶん俺はこの先も、ずっと紗良ちゃんのことを見上げながら、恋をしていくんだと思う。
そう言って笑うのは、俺の幼馴染であり、二つ上の先輩――夏川紗良(なつかわさら)。
俺よりも15センチは背が高くて、脚がめちゃくちゃ長い。いつもスカートの下に黒のハイソックス、髪は金色に染めて、軽く巻いてある。
学校でも有名なギャル系美人だ。
けど俺にとっては、小さい頃からずっと隣にいた、気の強い“お姉ちゃん”みたいな存在だった。
「別にそんなつもりないし」
「ふーん。なら、どうして呼び方ずっと“紗良ちゃん”のままなの?」
「……そ、それは、癖っていうか……」
屋上のフェンスにもたれかかりながら、先輩はあきれたように笑った。制服のシャツの第2ボタンが開いていて、夏の風がふわりと髪をなびかせる。
見惚れてるのがバレないように、俺は視線をずらした。
「私ね、来年卒業だよ。そしたら、もうこうして二人で話す時間もなくなるかもだよ?」
「……それ、やめてよ」
俺は無意識に言葉が出た。
この時間が終わるなんて、考えたくもなかった。
「じゃあさ、陸」
「ん?」
「“好き”って、言ってよ」
「――っ!」
先輩の瞳がまっすぐ俺を見ていた。あの、いつも茶化してくるギャルな雰囲気じゃない。
素の、真剣な紗良ちゃんの目だ。
「昔からずっと知ってるよ?陸が私のこと、ただの“幼馴染”として見てないって。バレバレ」
「……俺、ちっちゃかったし……」
「うん。でももう、違うでしょ?」
俺はゆっくりと歩み寄って、先輩の前に立った。見上げる角度は、昔と変わらない。でも今は――俺の胸の中、全部、ちゃんと伝えられる気がした。
「紗良ちゃん。俺、子どもじゃない。今の俺は、ちゃんと――」
言い終える前に、先輩の顔が近づいた。金色の前髪が俺の頬に触れる。
そして、彼女の唇が、俺の口に、静かに重なった。
「ん……ちゅ……っ……んっ……、れろっちゅ……っ……んっ……、ペチョっ、ピチャっ、ちゅっ、んっ……ちゅこつ、ちゅここっ、ちゅっ、んっ……」
数秒間のキス。
心臓の音がうるさすぎて、彼女に聞こえてしまうんじゃないかと心配になる。
「……ね、これでようやく同じ目線?」
俺が見上げると、紗良先輩は、少し照れたような笑顔を浮かべていた。
「でも、これからはもっとドキドキさせて? 子どもの頃から陸にしか、あたし本気になったことないんだから」
「……うん。俺も、紗良ちゃんがずっと、好きだった」
彼女はちょっとだけ目を細めて、優しく俺の頭を撫でた。
「じゃあ、今日から彼女ってことで。よろしく、年下彼氏くん」
まるで夏の陽射しみたいにまぶしい笑顔に、俺はうなずくしかなかった。
――たぶん俺はこの先も、ずっと紗良ちゃんのことを見上げながら、恋をしていくんだと思う。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる