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7件目 黒ギャル先輩は、昔から俺のヒーローだった
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「陸、またぼーっとしてんの? ほんと変わんないね、あんた」
校舎裏のベンチで昼飯を食べてると、明るい声が飛んできた。声の主は、俺の幼馴染にして二つ上の先輩――
「詩織先輩……」
「“先輩”とか、やめてって言ってんじゃん。小さい頃は“しーちゃん”って呼んでたくせにさ」
彼女、黒江詩織。長身で褐色肌の黒ギャル。ピアスにネイル、スカート短め。見た目だけなら完全に“陽キャの女王”。
だけど、俺は知っている。小学生の頃、男子にいじめられて泣いていた俺を、真っ先に助けてくれたのがこの人だったこと。
あれから十年経って、俺は高2、詩織は高3。立場も見た目も変わったけど、胸の奥で燻っていた想いだけは、ずっと変わらなかった。
「今日さ、教室でまた告られたんだけど」
「……へぇ」
「それだけ?嫉妬とかしないの?」
詩織はからかうような目で俺を覗き込んできた。少しだけ焦げた肌に、淡いピンクのリップがよく映える。
「……しないって言ったら、嘘になる」
「ふーん、素直になったじゃん。珍し」
「……俺、先輩のことずっと……」
言いかけて、喉が詰まる。詩織は笑いながら俺の隣に腰を下ろした。背が高いせいで、ベンチに並んで座っても目線は少し上にある。
「ね、覚えてる?あんたが泣いてたとき、私が言ったこと」
「え……?」
「“あんたは男でしょ。守られるより、守りなさい”ってさ」
「あぁ……うん。あれ、ずっと心に残ってる」
「実はさ、あのとき自分にも言い聞かせてたの。私、ずっと強がってただけで、あんたと離れるのが怖かったんだよ?」
「……なんでそんな話、今するの」
「だってもう、卒業間近じゃん」
ぽつりと彼女が呟いたその言葉に、胸がギュッと痛んだ。
「だから、陸。言って。子どもみたいに逃げてないでさ」
彼女の目が真剣で、少しだけ不安そうで、でも優しかった。
だから、俺はようやく覚悟を決めた。
「詩織。俺、あんたのこと、ずっと好きだった。ヒーローみたいに見えて、でもすごく綺麗で……。もう、ただの“幼馴染”じゃいられない」
言い切ったあと、彼女の目が少し潤んでいることに気づいた。
「……やっと言ったじゃん、バカ」
彼女がゆっくりと体を寄せてくる。夕焼けに染まった校舎裏、誰もいない場所。
そして、俺たちは静かに唇を重ねた。
「んっ……、ちゅっ、ペチョっビチャ……っ、えろっれろれろっ、チュピっ、んっ、ちゅここっ、ちゅっ、んっ」
初めてのキスは、驚くほどあったかくて、懐かしい匂いがした。
「今度は私が、陸に守られる番だね」
「いや、俺はまだ……」
「いいの。守られてもいいって、やっと思えたから」
彼女の手が、そっと俺の指を握る。指先は少しネイルが剥げてて、でもそれさえも愛しく思えた。
――子どもの頃、背中を追いかけたあの人と、やっと同じ場所に立てた気がした。
この恋は、幼馴染って言葉じゃ、もう収まりきらない。
校舎裏のベンチで昼飯を食べてると、明るい声が飛んできた。声の主は、俺の幼馴染にして二つ上の先輩――
「詩織先輩……」
「“先輩”とか、やめてって言ってんじゃん。小さい頃は“しーちゃん”って呼んでたくせにさ」
彼女、黒江詩織。長身で褐色肌の黒ギャル。ピアスにネイル、スカート短め。見た目だけなら完全に“陽キャの女王”。
だけど、俺は知っている。小学生の頃、男子にいじめられて泣いていた俺を、真っ先に助けてくれたのがこの人だったこと。
あれから十年経って、俺は高2、詩織は高3。立場も見た目も変わったけど、胸の奥で燻っていた想いだけは、ずっと変わらなかった。
「今日さ、教室でまた告られたんだけど」
「……へぇ」
「それだけ?嫉妬とかしないの?」
詩織はからかうような目で俺を覗き込んできた。少しだけ焦げた肌に、淡いピンクのリップがよく映える。
「……しないって言ったら、嘘になる」
「ふーん、素直になったじゃん。珍し」
「……俺、先輩のことずっと……」
言いかけて、喉が詰まる。詩織は笑いながら俺の隣に腰を下ろした。背が高いせいで、ベンチに並んで座っても目線は少し上にある。
「ね、覚えてる?あんたが泣いてたとき、私が言ったこと」
「え……?」
「“あんたは男でしょ。守られるより、守りなさい”ってさ」
「あぁ……うん。あれ、ずっと心に残ってる」
「実はさ、あのとき自分にも言い聞かせてたの。私、ずっと強がってただけで、あんたと離れるのが怖かったんだよ?」
「……なんでそんな話、今するの」
「だってもう、卒業間近じゃん」
ぽつりと彼女が呟いたその言葉に、胸がギュッと痛んだ。
「だから、陸。言って。子どもみたいに逃げてないでさ」
彼女の目が真剣で、少しだけ不安そうで、でも優しかった。
だから、俺はようやく覚悟を決めた。
「詩織。俺、あんたのこと、ずっと好きだった。ヒーローみたいに見えて、でもすごく綺麗で……。もう、ただの“幼馴染”じゃいられない」
言い切ったあと、彼女の目が少し潤んでいることに気づいた。
「……やっと言ったじゃん、バカ」
彼女がゆっくりと体を寄せてくる。夕焼けに染まった校舎裏、誰もいない場所。
そして、俺たちは静かに唇を重ねた。
「んっ……、ちゅっ、ペチョっビチャ……っ、えろっれろれろっ、チュピっ、んっ、ちゅここっ、ちゅっ、んっ」
初めてのキスは、驚くほどあったかくて、懐かしい匂いがした。
「今度は私が、陸に守られる番だね」
「いや、俺はまだ……」
「いいの。守られてもいいって、やっと思えたから」
彼女の手が、そっと俺の指を握る。指先は少しネイルが剥げてて、でもそれさえも愛しく思えた。
――子どもの頃、背中を追いかけたあの人と、やっと同じ場所に立てた気がした。
この恋は、幼馴染って言葉じゃ、もう収まりきらない。
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