ChatGPTさんの短編小説 2025年5月

22件目 キスの背比べ

　俺には幼馴染が二人いる。

　一人は真宮しずく。長い黒髪に、伏し目がちな表情がトレードマークの陰キャ美少女。身長は143cm。授業中も休み時間も、基本的には誰とも関わらず、図書室で本を読んでいる。

　もう一人は朝比奈ひまり。ショートカットに強気な瞳が印象的な逆上美少女。身長は140cm。とにかくよく喋り、よく怒る。そしてなぜか、俺にだけ当たりが強い。

「悠真っ、あんたまたしずくと話してたでしょ！？　何その笑顔！キモい！」

「いや、普通に挨拶しただけだって……」

「嘘つけ！“おはよう”のどこにあんな含み笑いがあるのよ！！」

　朝から怒鳴られた俺は、すでに一日分の体力を失った気分だった。

　それでも俺は気づいている。ひまりの怒りの裏には、焦りや照れが混ざっていることを。

　同じように、しずくの静かな態度の奥には、小さな勇気が隠れていることも。

　そんな三角関係が動き出したのは、放課後の帰り道だった。

「……悠真、ちょっと寄り道してもいい？」

　しずくが珍しく自分から話しかけてきた。手には何か包みを持っている。

「もちろん。ひまりは先に帰ってるし、たまにはいいかもな」

　駅前の公園。人影のないベンチに腰かけると、しずくが小さな紙袋を差し出した。

「これ……今日、悠真の誕生日でしょ？クッキー、焼いたの」

「マジで？ありがとう！すげえ嬉しい」

　そう言って袋を開けようとした瞬間、しずくが俺の袖をそっと掴んだ。

「……ねえ、あのね」

「ん？」

「私、悠真のこと……ずっと前から、好きだったの」

　静かな声だった。でもその言葉は、雷みたいに心に響いた。

　しずくが目を伏せたまま、ほんの少しだけ背伸びする。

「ちょっとだけ……目、つぶってくれる？」

　心臓が跳ねた。けど、俺は言われるままに目を閉じた。

　そして、柔らかい感触が唇に触れた——その瞬間だった。

「なっ……何してんのよあんたらあああああっ！！」

　怒鳴り声とともに、ひまりが現れた。いつからいたのか分からないけど、顔は真っ赤で、今にも爆発しそうだった。

「ちょっ……ひ、ひまりちゃん……」

「しずく！！悠真にそんなことしてズルい！！」

　次の瞬間、ひまりが俺の襟を掴み、ぐいっと引き寄せた。

「悠真はあたしと初キスする予定だったのに！じゃあもうやってやるわよ！！」

「え、いや、ひまり、落ち着けっ……」

　が、すでに遅い。彼女は勢いのまま俺にキスをした。

　……が、届かない。身長差の壁だ。140cmの彼女は背伸びしてもギリギリだった。

「っ……ちょ、しゃがんで！！」

「命令形かよ！？」

「早く！！！」

　その勢いに負けて俺が少しかがむと、ひまりは頬を真っ赤にして、ちゅっとキスをした。

　唇が離れたあとも、彼女は目をそらしたままだった。

「……あたしだって、悠真が好きに決まってんでしょ。昔からずっと……」

　夕焼けの中で、二人の小さな女の子が、それぞれ自分の想いを俺にぶつけた。

　どちらのキスにも、心が揺れた。
　でも俺は、はっきり答えを出すことにした。

　子どもの頃に交わした“将来結婚しようね”って約束も、今やっと意味を持つ気がしたから。