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23件目 届かないキス、届いた気持ち
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放課後の教室には、夕陽が差し込んでいた。机の影が長く伸びて、世界が少しだけ静かになっていく時間。そんな中、俺は二人の幼馴染に挟まれていた。
一人は、椎名あやめ。黒髪で小柄、無口で人見知りの陰キャ美少女。身長は145センチ、俺の肩にも届かない。
クラスではあまり目立たないけれど、俺は昔からあやめのことが気になっていた。
もう一人は、如月いろは。こちらも低身長、なんと140センチ。でも声は大きく、表情豊かで、何かにつけて怒るし、俺にはよく蹴りを入れてくる。まさに逆上美少女。
けれど、その怒りの裏にある気持ちを、俺は何となく知っている。
「なによ悠真、今日もまたあやめと話してたんでしょ!あんた、ほんと調子乗ってるよね!」
「ちょっと喋っただけだよ。筆箱落としたから拾って渡しただけで——」
「その“だけ”がムカつくのよっ!!」
いろはが俺の胸をどん、と押してきた。全然痛くないけど、怒りの圧がすごい。
そんな様子を、あやめは黙って見ている。目を伏せ、でもほんの少しだけ俺の袖を握っていた。声は小さいけれど、その手が何かを言いたがっている気がした。
「……あの、悠真くん。今日、屋上に来てくれない?」
思いもよらぬあやめの一言に、いろはがぴくっと反応する。
「ちょ、ちょっとあんた、悠真を呼び出すなんてどういうつもり!?え、まさか、告白とか……!?」
「…………うん」
「うん、て言ったあああああっ!!」
いろはの叫びが廊下に響いた。でも俺の心は、それ以上にドクドクと音を立てていた。
放課後、屋上には春の風が吹いていた。フェンスの前にあやめが立っていた。いつものようにうつむき加減で、けれどその瞳はまっすぐだった。
「悠真くん、ずっと……好きでした。子どものころから。……いろはちゃんにばかり怒ってるのを見るたび、ちょっとだけ……嫉妬してました」
あやめの顔がほんのり赤く染まっていく。俺が何かを言おうとしたその瞬間——
「おーーーーーーーい!!悠真ああああああああああっっ!!!」
いろはが全速力で屋上に駆け上がってきた。
「わ、待てっていろは、話の途中……」
「関係ない!あたしだって言うことあるもん!悠真、あんた、こっち向きなさいよ!!」
怒鳴るいろはに振り返ると、彼女はプルプルと震えながら叫んだ。
「悠真のこと、好きに決まってるじゃない!!子どもの頃からずっとずっとずっと、好きだったの!!」
そして、いきなり背伸びして、俺の頬にキスをした——が。
「……っ、く、くそっ、あと5センチ足りないっ!!」
失敗。額にかすっただけだった。
「……ふふっ」
それまで無表情だったあやめが、くすっと笑った。いろはがキッと睨む。
「なによ!笑ってんじゃないわよ!!」
「ご、ごめんなさい。……でも、いろはちゃんって、正直で、すごいなって」
二人とも顔を真っ赤にして、でも俺をまっすぐ見つめている。俺は、心のどこかで分かっていた答えを、やっと口に出した。
「……俺は、どっちも大好きだ。けど……俺がちゃんと向き合いたいのは——」
言葉を飲み込んで、俺はゆっくりと手を伸ばした。
その手が触れた先の、彼女の手が、小さく震えていた。
一人は、椎名あやめ。黒髪で小柄、無口で人見知りの陰キャ美少女。身長は145センチ、俺の肩にも届かない。
クラスではあまり目立たないけれど、俺は昔からあやめのことが気になっていた。
もう一人は、如月いろは。こちらも低身長、なんと140センチ。でも声は大きく、表情豊かで、何かにつけて怒るし、俺にはよく蹴りを入れてくる。まさに逆上美少女。
けれど、その怒りの裏にある気持ちを、俺は何となく知っている。
「なによ悠真、今日もまたあやめと話してたんでしょ!あんた、ほんと調子乗ってるよね!」
「ちょっと喋っただけだよ。筆箱落としたから拾って渡しただけで——」
「その“だけ”がムカつくのよっ!!」
いろはが俺の胸をどん、と押してきた。全然痛くないけど、怒りの圧がすごい。
そんな様子を、あやめは黙って見ている。目を伏せ、でもほんの少しだけ俺の袖を握っていた。声は小さいけれど、その手が何かを言いたがっている気がした。
「……あの、悠真くん。今日、屋上に来てくれない?」
思いもよらぬあやめの一言に、いろはがぴくっと反応する。
「ちょ、ちょっとあんた、悠真を呼び出すなんてどういうつもり!?え、まさか、告白とか……!?」
「…………うん」
「うん、て言ったあああああっ!!」
いろはの叫びが廊下に響いた。でも俺の心は、それ以上にドクドクと音を立てていた。
放課後、屋上には春の風が吹いていた。フェンスの前にあやめが立っていた。いつものようにうつむき加減で、けれどその瞳はまっすぐだった。
「悠真くん、ずっと……好きでした。子どものころから。……いろはちゃんにばかり怒ってるのを見るたび、ちょっとだけ……嫉妬してました」
あやめの顔がほんのり赤く染まっていく。俺が何かを言おうとしたその瞬間——
「おーーーーーーーい!!悠真ああああああああああっっ!!!」
いろはが全速力で屋上に駆け上がってきた。
「わ、待てっていろは、話の途中……」
「関係ない!あたしだって言うことあるもん!悠真、あんた、こっち向きなさいよ!!」
怒鳴るいろはに振り返ると、彼女はプルプルと震えながら叫んだ。
「悠真のこと、好きに決まってるじゃない!!子どもの頃からずっとずっとずっと、好きだったの!!」
そして、いきなり背伸びして、俺の頬にキスをした——が。
「……っ、く、くそっ、あと5センチ足りないっ!!」
失敗。額にかすっただけだった。
「……ふふっ」
それまで無表情だったあやめが、くすっと笑った。いろはがキッと睨む。
「なによ!笑ってんじゃないわよ!!」
「ご、ごめんなさい。……でも、いろはちゃんって、正直で、すごいなって」
二人とも顔を真っ赤にして、でも俺をまっすぐ見つめている。俺は、心のどこかで分かっていた答えを、やっと口に出した。
「……俺は、どっちも大好きだ。けど……俺がちゃんと向き合いたいのは——」
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その手が触れた先の、彼女の手が、小さく震えていた。
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